201308251520000 エッセイ連載

【経営者のスクリーン】第1回:「東京物語」1953年

鴻池 和彦 ( 株式会社cinepos 代表 )

(監督/小津安二郎、出演/笠智衆 東山千栄子 原節子)

 

はじめまして、株式会社cineposの鴻池和彦と申します。映像制作を生業としております。
「経営者のスクリーン」と題しまして、名作映画を通して人間観について、そして経営者のみなさまに少しでも鋭気に繋がるお話しができればと思います。宜しくお願いいたします。

 

2012年の英国映画協会(BFI)が発行しているSight&Sound誌の発表した「映画監督が選ぶベスト映画」の第1位に小津安二郎監督の映画『東京物語』が選出された事は多くのメディアに取り上げられたので、記憶にある方もおられると思います。

そこまで人を惹きつけて止まないこの映画のストーリーとは――

広島は尾道に住む年老いた両親が、東京で所帯を営む子供たちに会いに上京するものの、長男はやんちゃな子供たちに囲まれ、家庭サービスもままならない開業医。長女は理容店を営み、町の寄合いも熱心な慌ただしさという有様です。

ちなみに次男は戦死。その未亡人となった紀子は勤めながら未だ独身のまま。三男は大阪の国鉄に勤務、末娘だけは尾道で両親の世話をしながら小学校の教員となっています。
折角、成長した子供たちに会いに来たにも関わらず、両親を温かく迎え入れる余裕がない長男と長女。さらに熱海の大衆温泉宿に案内されてしまう老夫婦。一泊しかせずに再び東京に戻るも、子供たちの家に居づらく、父親の方は旧友を頼り、彼らとの再会を果たしますが、お互い子供への愚痴に終始し泥酔する始末。母親の方は未亡人となった次男の嫁である紀子のもとに身を寄せます。
それから夫婦は程なく東京を離れ、大阪に立ち寄った後、尾道への帰路に着きます。
後日、東京に母親が危篤との一報が入ります。
喪服の用意に余念のない長女、冷静な長男。結局、母親は子供たちに看取られ息を引き取ります。
そんな中、紀子だけは葬儀後も父親に尽くし時間を捧げるのです。その様子に末娘が思わず憤りをこぼします。
「お母さんが亡くなるとすぐ お形見ほしいなんて あたしお母さんの 気持ち考えたら とても悲しうなったわ 他人同士でももっとあたたかいわ 親子ってそんなもんじゃないと思う」
紀子は末娘を優しく諭し、彼女は将来に不安を感じながらも現実を受け止めざるを得ない事を理解します。別れ際、父親は母親の形見を紀子に託します。紀子は感謝の思いを胸に東京へ旅立ち、誰もいなくなった尾道の家では父親が独り時の流れに身を任せるように居るという結末となります。

この映画には半世紀以上多くの人の心を掴んで離さない普遍性が内在されています。
1. 子は育ち、やがて独立し、新たな家を創るという親子に課せられた摂理。
2. 愛情や信頼関係とは血脈に依存するものではない。
3. 都会と地方の温度差――ドライとウェットの違い。

1については子供の成長を認めながらも、一抹の寂しさを隠せない親の立場をどのように見るかだと思います。劇中の独立した子供たちも、いつしか老いた親の立場を痛感する時が訪れるという摂理に今は気が付くことはありません。

さらに2については、血族であることの絶対性はあり得ない事を意味しています。とかく現代でもトラブルの最たる問題に血族間の紛争があります。古今東西、血族間の争いの連続性が様々な歴史の潮流を形成してきたことは否めない事実です。

3については、人にとって都会は成長や独立を促してくれるものであり、これは競争や論理性を経て個人主義が確立される事を意味します。地方はその点で土着性のウェット感、情の文化とも言えます。比較的、競争や議論を避け、できるだけの共存を図ろうとする意志が働きます。

以上の要素に充ちた映画「東京物語」が戦後間もない1953年に作られた事が驚きでもあります。十分、現代に通じる未来予知的な家族の在り方が示されているのです。1から3の解説ポイントは事業経営に置き換えても、転ばぬ先の杖の役割を果たすものと考えることもできます。

予め普遍的真理を理解しているとしていないとでは対処の仕方が変わるからです。
映画での親子の関係を、社長と社員の関係に置き換えてみたり、同族企業の方であれば尚更かもしれないと思います。

映画「東京物語」はある家族のタイプかもしれませんが、状況に対してどうあるべきかは自身の判断によるものとの認識と合わせてバランスを欠いたものになっていないかを検証するゆとりを、自分自身もてる人間でありたいと気付かせてくれる作品と言えるでしょう。

寄稿者の写真 鴻池 和彦 氏のプロフィール

1971年下関市生まれ。1993年円谷プロダクション入社。
その後、東北新社、ギャガ・コミュニケーションズ等で企画・制作・プロデュースに従事。
2005年下関帰郷後、下関大和町郵便局長を務める傍ら、
これまで培った映画製作方法論を活かし映画制作cinepos(シネポス)を設立。
映画・CM・PVと映像制作は多岐にわたる。2016年6月に株式会社cineposを下関にて起業。
主なプロデュース・脚本・監督作品
「MAIL」(出演 須賀貴匡、栗山千明 ※プロデュースのみ)
「雨の町」(出演 和田聰宏 真木よう子 成海璃子 ※プロデュースのみ)
「センシティブ」(出演 小山田サユリ 春永由香 仲慎太郎)
「ソロウ・オア・スマイル」(出演 角島美緒 ロバートニシムラ MARIA)
「ここに、いる」(出演 伴大介 高樹澪)

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