newspaper_texture2847 エッセイ連載

【経営者のスクリーン】第3回:「市民ケーン」1941年

鴻池 和彦 ( 株式会社cinepos 代表 )

(監督/オーソン・ウェルズ 出演/オーソン・ウェルズ ジョセフ・コットン ドロシー・カミンゴア)

「市民ケーン」と聞いて、よく歴史的映画作品として、古今東西の名作第1位等の評価でそのタイトルを目にされた方もおられると思います。プロデューサー、監督、脚本、主演の4役をオーソン・ウェルズが務めたその作品を解説いたしますと――

新聞社「インクワイラー」を経営、新聞王のチャールズ・ケーンが“バラのつぼみ”という謎の言葉を残して死ぬ場面から物語は始まります。その言葉の意味を探すべく、編集者のトムスンがケーンに近かった人物に取材していきます。その中でケーンの生い立ちと成功への軌跡が明らかになってきます。

幼少の頃、宿泊費のかたにとった金鉱の権利書から母親は大金持ちになり。財産の管理と教育のためケーンは田舎の両親から離され、ニューヨークで育ちます。

青年になったケーンは、友人のバーンステインとリーランドの協力を得て、新聞社経営に乗り出します。ゴシップや扇動的な文句によってケーンの新聞は売上を伸ばしていきます。ケーンは友人たちの批判にも耳を貸さず、勢いそのままに大統領の姪と結婚し権力を求めていくのです。州知事選挙に立候補したケーンは圧勝を予想されていたにも関わらず、歌手である愛人の存在を投票日前日にライバル候補者に露見され落選。ケーンの妻も彼のもとを去っていきます。

ケーンは愛人スーザンのためにオペラ公演をプロデュース、彼の新聞で大々的に宣伝しますが、不評の嵐と化します。その頃ケーンは、かのフビライハンが築いたとされる歓楽の都を意味する“ザナドウ”という名の大邸宅を建設しました。自殺未遂を引き起こしたスーザンは大邸宅に幽閉され、やがてケーンの元を去り、それから間もなく孤独に打ちひしがれたケーンは死を迎えます。

そして結局、トムスンは“バラのつぼみ”の意味を解明できなかったのです。

整理されて燃やされるケーンの遺品の中に彼が幼い頃遊んだソリが見えます――そして燃え盛るソリの背もたれに“バラのつぼみ”その言葉は記されていました。

 

後世の映画作家、または撮影技術者たちにも多大な影響を与えた本作ですが、やはり構成力の秀逸さを抜きにしては語れません。本作品は人間物語かつサスペンス、エンターテイメント、さらに社会派テイストといった様々な要素が合さり、登場人物たちによるインタビュー形式から主人公を浮き彫りにしていくという、斬新かつ練り上げられたドラマ構築といえます。

故に主人公ケーンの人間性が客観的に、そしてそれを裏付けるように当事者間のドラマが彼の心の陰陽をさらけ出すことに成功しているのです

そこから解るのは、全てを手に入れた実業家チャールズ・ケーンが最後まで手に入れられなかったのは「」であるという点。“バラのつぼみ”が意味したものは幼い頃、母と遊んだソリに刻まれていたものだったという、愛される温もりがどれだけ彼にはかけがえのない思い出だったのか、彼は人から愛されることを欲して事業を立ち上げ、そして成功し、権威やモノを手に入れることはできても、結局人の心までは支配できませんでした。

経営者としての成功の在り方、または動機が非常に重要なものであるかを本作品は物語っています

よく世の為、人の為と云われますが、会社は公器であると云われる所以がその意味だと考えます。例えばケーンの場合、人々の「知る」欲望を充たすという、ある意味の需要を掴めたのかもしれませんが、それはあくまでも己の自己顕示欲を増幅させる為のものに過ぎなく、本来のジャーナリズムであるところの不正を質し社会正義に寄与する意味からはかけ離れた単なる商業主義でしかなかったのです。

幼年期をどのように過ごすかは人間の情操教育にとって重要なファクターですが、こうした点を含めて事業を始める動機は個々人によって異なることも事実です。仏教では善因善果、悪因悪果の教えがあります。善い種を蒔けば善い実が実り、悪い種を蒔けば悪い実になる、つまり最初の動機であるところの種がどういう思いから成るかが大事だとされています。

成功のイメージはその動機から始まる――チャールズ・ケーンの生き方は示唆に富んでいるとも言えるのです。

寄稿者の写真 鴻池 和彦 氏のプロフィール

1971年下関市生まれ。1993年円谷プロダクション入社。
その後、東北新社、ギャガ・コミュニケーションズ等で企画・制作・プロデュースに従事。
2005年下関帰郷後、下関大和町郵便局長を務める傍ら、
これまで培った映画製作方法論を活かし映画制作cinepos(シネポス)を設立。
映画・CM・PVと映像制作は多岐にわたる。2016年6月に株式会社cineposを下関にて起業。
主なプロデュース・脚本・監督作品
「MAIL」(出演 須賀貴匡、栗山千明 ※プロデュースのみ)
「雨の町」(出演 和田聰宏 真木よう子 成海璃子 ※プロデュースのみ)
「センシティブ」(出演 小山田サユリ 春永由香 仲慎太郎)
「ソロウ・オア・スマイル」(出演 角島美緒 ロバートニシムラ MARIA)
「ここに、いる」(出演 伴大介 高樹澪)

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