_201612 エッセイ連載

【経営者のスクリーン】第4回:「パリ、テキサス」1984年

鴻池 和彦 ( 株式会社cinepos 代表 )

(監督/ヴィム・ヴェンダース 出演/ハリー・ディーン・スタントン ナスターシャ・キンスキー ハンター・カーソン)

ドイツ映画の範疇を超えた、世界の巨匠・監督ヴィム・ヴェンダース。そのヴェンダースが渾身の思いで作り上げたロードムービー(旅物語)の金字塔として名高い作品が「パリ、テキサス」です。第37回カンヌ国際映画祭で最高映画に与えられるパルム・ドールを受賞したその作品を解説いたしますと――

4年前に妻子を捨てて失踪した兄のトラヴィスがテキサスの砂漠で行き倒れていたという連絡を受けたウォルトは、目を離すと逃げ出そうとするトラヴィスに手を焼きながら、レンタカーで妻とトラヴィスの息子が待つカリフォルニア州ロサンゼルスへと向かいます。当初,全く喋らなかったトラヴィスですが、自分がテキサス州のパリスへ行こうとしていたことを明かします。パリスは自分たちの両親が愛し合った土地であり、そのことを大事に思うトラヴィスはパリスに土地を買ってあるのだと告げるのです。

そして、ロサンゼルスで息子のハンターと再会したトラヴィスは、空白期間を埋めるように次第に親子の情を通わせることになります。

ある日、ウォルトの妻アンから、ヒューストンにいる妻のジェーンからハンター宛にしばしば送金があることを教えられたトラヴィスは、ハンターとともにヒューストンへ向かう事を決意します。ヒューストンでジェーンは覗き部屋の女としてある種の性的コミュニケートを目的とした仕事に従事していました。トラヴィスは客になりすまし、ジェーンとの再会に成功します。これまで何故行方をくらましていたのか、放浪の旅に出た理由をジェーンに告白するのです。ジェーンもまた大人に成り切れていなかった当時の自分を省みることで、再び二人の心は通じ合います。トラヴィスは事前にハンターに録音テープでジェーンと会うようにとメッセージを残し、ジェーンとハンターの再会を窓の外から見届けた後、再び独り、旅に出ていくところで物語は終わります。
名作と云われる映画の特徴は得てして子役の力によるところが大きいとされます。

勿論、本作品における脚本、撮影、音楽、配役と完璧なコラボレーションに感動は既に出来上がっている訳ですが、私が惹かれて止まないのは、ハンター・カーソン演じる失踪した両親に代わり、叔父夫妻に育てられながらも賢く健気に生きていく8歳の子役の存在なのです。

この子役の演技、佇まいが作品を大きな愛の形、愛が作りだした物語であることを印象付けます。

この作品のテーマは再生です。人生にけじめをつけて、新しい日を迎えていく、そして反省から学ぶ赦しという部分でもあります。

誰でも人は過ちを繰り返し、時に取返しのつかない事に発展してしまうケースもあります。
その時、誰かが自分の為に犠牲になり、そして誰かが自分の為に骨を折ってしまう事になるのです。
申し訳なさと自責の念に苛まれた時、どうすればいいのかと呆然と立ち尽くす事もあるはずです。
経営者はいつもその瀬戸際で、または時に際からはみ出したりしながら、行ったり来たりするものだと思うことがあります。

再生という本作品から表現された事象は切なく、そしてこれで良かったのだと思えることで、心に曇った閉塞感から抜け出す事に、かつて失踪した両親は今を生きるという肯定の側に立つことができました。
それはお互いの思いをストレートに吐露し、反省し、次の道を提示し合えたことによるものだと考えます。
そこで二人の愛の形である子供の存在、この子にとっての最善の選択はと――お互いの我が無くなっていく瞬間でもあります。子への無償の愛の名のもとにはお互いのエゴは搔き消されていったのです。
本作品でトラヴィスが妻ジェーンに述懐するシーンで、妻を愛しすぎて自分が壊れていった旨のくだりがありますが、ある意味、女性には羨むエピソードに聞こえなくもないですが、やはり何事もバランスが必要ではと、一歩作品を引いてみると、ふと持続的な愛が丁度関係的にはベストなのだと、すべては程よく相手を思いやる気配りこそが、不幸的な愛に陥らないポイントだと実感できます。

結果、映画「パリ、テキサス」は先に触れた再生のポイントを教示しています。

・反省から現状を甘受する姿勢。
・過去に捉われない前向きな気持ちをもつ。
・自己保身から他者のために生きる選択をする。

やはり素晴らしい映画としか言いようがないのが私の見解です。

寄稿者の写真 鴻池 和彦 氏のプロフィール

1971年下関市生まれ。1993年円谷プロダクション入社。
その後、東北新社、ギャガ・コミュニケーションズ等で企画・制作・プロデュースに従事。
2005年下関帰郷後、下関大和町郵便局長を務める傍ら、
これまで培った映画製作方法論を活かし映画制作cinepos(シネポス)を設立。
映画・CM・PVと映像制作は多岐にわたる。2016年6月に株式会社cineposを下関にて起業。
主なプロデュース・脚本・監督作品
「MAIL」(出演 須賀貴匡、栗山千明 ※プロデュースのみ)
「雨の町」(出演 和田聰宏 真木よう子 成海璃子 ※プロデュースのみ)
「センシティブ」(出演 小山田サユリ 春永由香 仲慎太郎)
「ソロウ・オア・スマイル」(出演 角島美緒 ロバートニシムラ MARIA)
「ここに、いる」(出演 伴大介 高樹澪)

関連記事

Contact Us

当事務所へのご相談は予約制となっております。お電話もしくは下記のフォームよりご予約のお申込みをお願い致します。
フォームよりお申込み頂いた方には、事務所スタッフより折り返しのご連絡をさせて頂きます。

相談予約はこちら

About Shimada-Law

山口県下関市の法律事務所、島田法律事務所のホームページへお越し頂き、ありがとうございます。当事務所では、同族中小企業の経営者、医療機関を中心にしたサービスを提供しております。

島田法律事務所

〒750-0012
山口県下関市観音崎町12番10号
太陽生命下関ビル5階
Tel 083(250)7881 Fax 083(250)7882受付時間:[平日]9時 〜 17時30分

アクセス情報はこちら >

相談予約はこちら >

News

平成29年の展望

年末年始のお休みなど

ニュース一覧を見る

Seminar

これでわかった!我が家のお墓の管理【無料】
(小倉会場:先着40名様、下関会場:先着70名様)開催日:平成29年3月11日(土)13:30~16:30

ビジネス及び料理に役立つカレーの7不思議【先着100名様、無料】開催日:平成28年12月3日(土) 12:30〜15:30

セミナー情報一覧へ

Recruit

弁護士・司法書士・一般事務職員の募集を行っております。詳しい募集内容はエントリーフォームのページをご覧下さい。

エントリーフォームへ

Mail Magazine

毎月1回、メールマガジンを配信中です。ご興味のある方は是非お申し込み下さい。

ご登録はコチラ

各職種別対象メールマガジン

職種別対象のメールマガジンを開始しました。ご興味のある方は是非お申し込み下さい。

ご登録はコチラ

Facebook

facebook