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ブログ 浜辺の事務所から

日々の出来事を徒然に綴っています。

ブログ 浜辺の事務所から 第194話

【書評】試験に出る哲学―「センター試験」で西洋思想に入門する

公開日
2018.11.02
投稿者
島田 直行( 所長弁護士)

誰しも「やったほうがいいとは感じるのだけどなかなか手をだせない」というものがある。やらないといけない具体的な根拠が明確でないためついつい後手になってしまう。そして気がつけば時間ばかりが過ぎ去ってしまったというなんとも切ない後悔だけが残ってしまう。

僕にとっては「哲学」がまさにそれ。僕は,自分なりの豊かな時間を過ごすためには哲学が必要だと5年くらい前からぼんやりと感じている。なぜ必要なのかは言葉にならないけどぼんやりとした意識は確信になっている。そもそもギリシア時代においてはすべての学問は哲学に集約されていたわけだから学ぶ意義は高いだろう。

僕にとっての哲学とは,”考えることを学ぶこと”につきるといってもいい。日本では,思考力が大事といわれつつもなぜか思考力よりも暗記力が試されることが多い。試験にしても暗記力の評価で終わってしまう。思考力を求めるとされる試験でさえ暗記力のノウハウが確立されてしまっている。

これって思考力というものを鍛えることがいかに難しいものであるかを如実に表しているのだろう。現実社会では暗記力で対応できるような問題は普通ない。むしろ矛盾ばかりの魑魅魍魎とした世界でしかない。そういった世界で軸足になるのは「自分で考えて結論をだす」という習慣につきる。だからこそ考え方を学ぶ学問としての哲学はこれからの時代にさらに求められるはずだ。

さりとて考え方を鍛えるにしても材料が必要だ。さすがにまったくの一般人がゼロからイチを発想しろというのも酷な話だ。心折れる。そういうわけでいわゆる哲学書に手をだしてきたのだがこれが正直なところ辛かった。寝る前に読んで来たのだが睡眠導入剤としての効果しか得ることができなかった。つまり読んでもさっぱりわからないのだ。おそらく哲学書を読むには技量と根性が必要。読んで感情がこみあがるということはないのでどこまでも続く平地をひたすら歩くイメージに近いかもしれない。

そんなときになんとなく買った一冊。諦めてはいない。

この本ははじめて哲学に関する本で最後まで読み通したものかもしれない。なにより読んで理解できるからすごい。専門家からすればざっくりしたものかもしれないが基礎知識ゼロの者にとってはざっくりしたものこそ必要だ。哲学で生活していこうというわけではないのだから。

個人的に感動したのがキルケゴールに関する実存主義の意味。なんだか”実存主義”って言葉の響きがいい。哲学の専門用語ってなんとなくかっこいい。批判的とか実存とか。「なんだか都会的」みたいな。

でもこういうかっこいい言葉ってたいていの場合に意味を知らない。わからないまま響きだけで暮らすのが極めて人間的。「僕わかっているから」というオーラーを醸しだす人に「教えてください」といってはならない。

この本のいいのはなによりもわかりやすさ。なんとなく聞いた言葉がぐっと実感をもてるのは著者の深い理解力と表現力があるから。秋の夜におすすめ。