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弁護士 島田直行 のブログ

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経営者のための労働問題ブログ 第109話

スルガ銀行の不正に関与した行員の方の責任について

公開日
2018.05.16
投稿者
島田 直行( 島田法律事務所 所長弁護士)

シェアハウス向けの融資の審査についてのスルガ銀行が揺れています。金融庁が2017年に発表した資料によれば地銀のなかでスルガ銀行の利益率の高さが顕著です。新聞記事では,こういった高収益は砂上の楼閣だったのではないかと指摘されています。

銀行のビジネスモデルの転換期

地方銀行は,ゼロ金利政策もあり「貸して収益をあげる」という旧来のビジネスモデルからの脱却を目指しています。それでもなかなか脱却できないのが現状でしょう。利益率の高かったスルガ銀行は,他の地方銀行からすればひとつのモデルケースとして捉えられていたかもしれません。今回の事案によってモデルケースとして目指していたものが幻想だったということになりかねません。

今回の事件では,すでにシェアハウスへの投資についての是非について問題になっています。投資は,いつもリスクをともなうものです。どこまでのリスクを投資家が負担するべきものであるかは一概に判断できるものではありません。今回の事件で銀行が責任を負担するのか,負担するとしていくらの負担になるのか。これらは最終的には司法的判断に委ねられることになります。

組織の論理は法廷ではなりたたない

個人的に考えるのは不正融資に関与した行員の立場です。記者会見によれば,「相当数の行員が不正を認識していた可能性がある」ということです。その前提として営業のプレッシャーからやむをえず加担したとされています。この場合に行員としてはどのような処分になるのでしょう。

ひとつのベクトルとして不正に関与したのであるからしかるべきペナルティを受けるべきということになるでしょう。ペネルティのなかには,人事的な処分も含まれることになります。

問題は,「それが会社からの無言の圧力によるものだった」ということが行員にとって抗弁になるかということです。

事実関係が不明ですからなんともいえないですがなかなか抗弁として主張することは難しいといえます。責任を軽減する方向での判断要素にはなるでしょうが責任を回避するということにはならないでしょう。内部通報制度などがあるのですからむしろ不正が疑われるのであれば情報を開示するなどすべきだったといえるでしょう。

「そんなことしたら組織にいられなくなる」こういう反論も当然に予想されますが組織内の論理と法律における論理はレベルの違う話です。同じフィールドで展開することはできません。

集団心理は自分の思考を奪ってしまう

行員の責任としては,①人事上の責任の他に②刑事上の責任あるいは③民事上の責任といったものも検討されることになります。誰がどのような責任を負担するかについては個別の事実を確定して判断していくことになります。

これはあくまで一般論ですが「集団の判断」というのは判断をあやまられます。「他の人もやっているから」という法的にはまったく成り立たない論理が組織の論理のなかではまかりとおってしまうときがあります。こういう状況では,「この状況は間違っているのではないか」と声をあげなくなりしだいに自分で考えることを放棄するようになります。「とりあえずやっておこう。自分ではない誰かの責任だから」という気持ちになります。このような自分の責任に盲目になるのが集団心理の怖いところです。