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なぜ、あの経営者は労働問題で悩まないのか?

弁護士 島田直行 のブログ

-弁護士に相談するべき経営者の労働問題とは-

経営者のための労働問題ブログ 第14話

感情労働とはなにか。

公開日
2017.05.12
投稿者
島田 直行( 島田法律事務所 所長弁護士)

誰しも感情のままに行動をしていては安定した社会にはなりません。大人になるとは,自分の感情を抑制して環境とすりあわせていくことでしょう。ですが自分の感情とは別の感情を無理にでも演出しないといけないとなるとストレスは尋常ではありません。

「おもてなし」という残酷社会: 過剰・感情労働とどう向き合うか (平凡社新書) 新書 –
榎本 博明 (著)

この本ではいわゆる感情労働が社員に与える心理的負担について述べられています。感情労働とは,職務にふさわしい感情の演出や管理が求められる労働をいいます。つらい状況であっても「笑顔で,やさしく」といった感情の演出を余儀なくされる労働といったらイメージしやすいでしょう。

私たちが仕事から感じる疲労は,フィジカルなものではなくむしろメンタルなものが主になってきています。職場の人間関係,消費者からのクレームあるいは取引先からの至急の対応など。社員のメンタルヘルスがとわれるようなったのも感情労働にともなう疲弊の蓄積が背景にあります。

感情労働にともなうストレスの特徴は,その蓄積が可視化しにくいところにあります。燃え尽きた症状をバーンアウトといいますがバーンアウトに至るまでのプロセスがなかなかみえないのです。ですから経営者としては社員のメンタルヘルスの管理に頭を悩ますことになります。

人間の感情とは,静的なものではなく動的なものです。ある瞬間に喜びを感じていても次の瞬間にはぼんやりとした不安に頭をもたげることがあります。動きつつあるものをコントロールするのは簡単なことではありません。目の前を泳ぐ魚のように手を伸ばせばするりと逃げだすのが自分の感情でしょう。私たちは,働くためにずぶ濡れになりつつ必死で湖畔の魚を追い求めているのかもしれません。

「笑顔は大事」というのは誰でも知っています。実際のところ会社を訪問してスタッフの人が笑顔で迎えるとなんだか心地よいものです。ですから私も事務所のスタッフにはできるだけ笑顔に気をつけるように指導しています。ですがこれもある意味では感情労働を強いているのかもしれません。

私たちは,いつも笑顔でいることができるほどに単純な暮らしに身を置いているわけではありません。裏切られることもあれば失敗することもあります。それでも「仕事のためだから」とわりきっていつも笑顔をふりまくことはとても残酷なことです。

かといって経営者の立場から社員に対して「どうぞ自分の感情のまま」になんていえるわけがありません。そんなことをしたらあっというまに倒産します。

できることは社員の感情労働におけるストレスが過大になることを防止することでしょう。著者は,感情労働のストレスとつきあう方法のひとつとして「共感」をあげます。共感してもらえる人を持っておくということです。人間は,「自分ひとりではない」という共同体への帰属意識があれば強くなれるのかもしれません。

いずれにしてもまずは社員のストレスの内容を理解すること。それからメンタルヘルス対策は始まるのでしょう。