初回無料相談はこちら

なぜ、あの経営者は労働問題で悩まないのか?

弁護士 島田直行 のブログ

-弁護士に相談するべき経営者の労働問題とは-

経営者のための労働問題ブログ

過重労働における自殺の認定はどのようにされるのか?

公開日
2017.05.16
投稿者
島田 直行(島田法律事務所 所長弁護士)

長時間労働をはじめとした過重労働による自殺が社会問題としてとりあげられるようになって久しいです。「仕事」は,あくまで自分の暮らしを豊かにするためのひとつの手段でしかありません。経営者も社員の方も「働きすぎることによるリスク」というものをきちんと意識することが大事です。

さてこの過重労働による自殺といったものが裁判で争われるのはどのようなケースでしょうか。一般の方としてはご遺族が企業を訴えるというケースをイメージしやすいでしょう。ですが実務では企業ではなくご遺族が「国」を訴えるケースが多々あります。

ここで「なぜ国を?」と疑問に感じられるかもしれません。これを理解するためには,労災認定のプロセスの理解が必要です。

そもそも自殺が過重労働によるものだとしても当然に労災保険における遺族補償給付がなされるわけではありません。前提として労働基準監督署長から労災事故だと認定される必要があります。そのため労働基準監督署長が「この自殺は労災事故には該当しない」と判断する場合があります。この場合には遺族補償給付は支給されないことになります。

そこでご遺族としては,このような労働基準監督署長の判断はおかしいとして国を訴えるわけです。この訴訟のなかで自殺が労災事故に該当するかが判断されることになります。

労働基準監督署長において自殺が労働災害に該当するか判断するさいは,厚生労働省の発表している「心理的負荷による精神障害の認定基準について」という認定基準を利用します。厚生労働省のホームページにもあるのでいちどご覧ください。

この基準では,うつ病などを発症した時期前半年間の状況を調査することになります。その当時の労働時間あるいはノルマといった内容を精査したうえでさきの基準によって判断することになります。この判断スキームは,労働基準監督署長の判断を争って国を相手に訴訟をするさいにも参考にされます。

事案によっては,うつ病として精神科への通院歴がなくても自殺が労災事故として認定されるケースもあります。(東京高判平成28年9月11日参照)