クレーマーはいつまでも納得するはずがない

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2019.01.23 クレーム対策

 「なんど説明してみてもわかってもらえない」と心折れる担当者を見かけるときがあります。一生懸命に対応しているのに結果につながらないのはなんともつらいもの。それがクレーマー対応となるとなおさらでしょう。こういった方は根本的に説明と納得の違いを理解していないから泥沼に陥ります。クレーマーに納得を求めても無駄です。

説明と納得はまったく違うものです

 まじめな人ほど「丁寧に説明すればわかってくれる」と考えています。学校教育においても「話せばわかる」ということをなんども耳にしてきたでしょう。話し合って問題を解決できればこれに勝るものはありません。ですからきちんと説明をするというのは問題解決の第一歩であることに間違いないです。まぁいきなり「あんたに話すことはない」と切りだすような場面もないでしょう。

 でもクレーマー対応においては必ずしも「話せばわかる」とは限りません。あたりまえのことですが私たちは,相手に納得してもらうためにいろいろ説明を試みます。納得をしてもらうためには,相手としても「話を聞いてみよう」というスタンスが必要です。そもそも話を聞く姿勢がない人にいくら丁寧に説明をしても納得にはつながりません。そしてストーカーは,自分の意見を実現することが目的であって相手の意見を傾聴する気などありません。ですからいくら丁寧に説明をしたとしても納得するわけありません。なんど説明してもわかってもらえないとしだいに心も折れてきます。説明と納得はまったく違うものです。これを同じものだととらえてしまうから無限地獄になります。

説明責任にまどわされてはなりません

 説明責任という言葉を日常でも耳にすることがあります。企業としての説明責任や医師の説明責任というようにある立場において説明をしなければならないということはあるでしょう。クレーマーは,この説明責任という言葉が大好きです。自分を満足させる発言がなければいつまでも「説明責任を尽くせ」とごねてきます。私たちは,とかく「責任」という言葉に弱い。きちんと説明をしていても説明責任と言われると思考停止になって「どのように説明をすればいいのか」と不安になります。いつまでも説明責任のシャワーを浴びて気がついたら相手の求めるままの発言をしていたということになってしまいます。言葉って怖いですよね。

 説明責任って「適切な説明をする責任」であって相手を満足することまで求められているわけではありません。そもそも相手が満足するレベルまで求められたらもはや説明責任ではなくて隷従するだけになってしまいます。クレーマーに引っ張られる人は,ここがわかっていない。僕は,「こちらとしては説明責任を果たしています。それに承服できないあんら司法的判断を仰いでください」と書面で通知することもしばしばです。どこかではっきりさせないとキリないですから。

説明をした証拠を残しておくことが大事です

 仮に裁判などで問題となるとすれば,「どのような説明をしたか」ということです。クレーマーに説明をしたときには,説明をしたという証拠をきちんと残しておくことがポイントになります。ですが慣れていない人は,この証拠の確保がまったくもってスカスカ。電話や面談だけでは,「そんな話を聞いていない」とクレーマーにあげ足をとられてしまうだけで終わってしまいます。その時点で交渉において不利になっていますね。ですから説明をするときには,きちんと証拠を確保するようにしましょう。例えば書面での説明や録音といったものです。

 僕は,確実に説明をしたことを記録として残すように内容証明郵便の活用を関与先にアドバイスすることもあります。これだといかなる説明をいつしたのかが記録になるので便利なわけです。

 さらに僕の場合には,こちらから調停をだすこともあります。裁判所の調停手続のなかで相手の求める説明について回答するということです。こうしないと説明を求める範囲が無限に拡大して「いったどこまで回答すればいいの」ということになりかねないからです。

 「説明と納得は違う。自分の役割はきちんとした説明をすることまで」という認識がクレーマー対応においては大事になってきます。言われればあたりまえのことだと感じるかもしれません。ですがあたりまえのことがクレーマーを前にするとすっ飛んでしまうのが現実です。あわてるときほど冷静になって対策を整理しましょう。