強い会社は採用にとことんこだわっています

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2017.09.29 労働事件

地方では労働人口の減少から圧倒的な人手不足の状況にあります。人手が足りないから廃業を考えているという声すら聞こえる危機的な状況です。さりとて安易に採用すると労働事件にもなりやすいです。強い組織を持っている会社は,こういう状況でもしっかりした方針をもって採用に取り組んでいます。こういった会社の特徴を整理してみましょう。

労働事件の99%は,採用のミスです

労働事件を会社側の代理人として担当していくなかでつくづく感じることがあります。それは労働事件が発生する原因の99%は,採用のミスマッチということです。

人手不足のなかでは,「来てくれるだけでもありがたい」と安易に採用する傾向があります。ですが中小企業は,規模が限られているためどうしても人と人のつながりが密接です。たったひとりの問題社員の態度によって職場全体のモチベーションが下がってしまうということもよくあります。会社の基本的な価値観や理念を共有できない人がいるというのは,会社にとっても本人にとってもいいことではありません。

いったん採用すれば,その後に解雇することは容易ではありません。たんに会社の方針に合わないというだけでは解雇の理由にはなりません。だからこそ採用には細心の注意を支払う必要があります。これまでも少なくない経営者が安易な採用をしたことによって胃の痛い思いをしてきました。

社員の本音は,「人が増えて人間関係でギクシャクするくらいなら今のままでいい」というものです。それほど人間関係のトラブルは社員のモチベーションを一気に下げることになります。そして優秀な人から「この会社に未来はない」と退職していくことになります。

採用方法よりも採用基準を明確にしましょう

採用に強い会社は,採用方法よりもまず採用基準をしっかり社内で整理しています。とかく採用で苦労している会社は,「どうやったら申し込みがあるのか」という視点のみで採用を考えています。ですが採用とは,申込と選考というふたつのプロセスから成り立っています。いくら申込だけにこだわりをもっても選考の基準が明確でなければ自社の求める人員の採用にはなりません。

採用においてもゴールからの発想というものが必要です。つまり会社としてどのような人材を採用したいのかを社内で明確にしておくことからスタートするべきでしょう。そうしないと採用基準のないまま面接をすることになり採用のミスマッチになりかねません。

こういった採用基準は,個人の評価をともなうようなものでは役に立ちません。よくあるのが「素直な人」「コミュニケーション能力の高い人」といった抽象的な基準です。こういう人は誰でも欲しいですが個人の評価をともなうため基準にはなりません。たぶんに「いい人が欲しい」と言うのとなんら変わらないでしょう。

社員の定着率が採用を決めていきます

採用に強い会社は,たいてい社員の定着率が高いです。逆を言えば社員の定着率を高めることが採用を強化することにつながると考えています。

セミナーでも言うのですが,社員の定着率が低いのであればいくら採用しても意味がありません。穴の開いたバケツにひたすら水を入れるようなものでしょう。これではいくらコストをかけたとしても望むような結果にはなりません。まず重要なことは社員の定着率をあげていくことです。

どのような業種でも社員の定着率の高いところと低いところがあります。これはひとえに社長の社員に対する姿勢ひとつの差です。社長が社員のことを見て気にかけているところでは社員の定着率がしだいに上がっていきます。もちろん社長が方針を変えることで短期的に社員の退職が続くこともありますが長期的に見れば定着していく人が増えていきます。

社長が社員の定着率を上げようとすれば,社員の声を聞くほかありません。いくら自分で想像しても社員の声を聞かなければうまくいきません。しかも一度や二度聞いただけで解決の指針が決まるわけではありません。繰り返し繰り返し聞くことで少しずつ改善の方針が見えてきます。実際には社員の定着率が上がるのは,新たなアイデアが採用されたということよりも社長が声を聞いてくれたという事実によるところが多いように感じます。

強い会社を作るためにもぜひ自社オリジナルの採用指針を定めてください。なお採用をはじめとした労働事件については,こちらのページで詳細を書いていますので参考になさってください。