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インタビューcase1

GUEST

井上 岳久 氏

井上戦略PRコンサルティング事務所代表井上 岳久

井上戦略PRコンサルティング事務所代表。
PR戦略コンサルタント、マーケティングPRプランナー。最先端のマーケティング戦略「マーケティングPR」研究及び実践の第一人者。
1968年生まれ。慶應義塾大学経済学部、法政大学法学部卒業。商社などに勤務後、横濱カレーミュージアム・プロデューサーを経て現職に至る。現在はマーケティングPRに特化した日本で数少ないコンサルタント及びマーケティングプランナーとして活躍。 PRを核にプロモーション戦略を遂行する次世代にふさわしい最新のマーケティングを構築し実践している。

PRのプロに聞く「お金を使わずに、情報発信だけで信頼を得る広報」とは?

島田
井上先生には、昨日、下関で広報に関するセミナーを開いていただきました。今日は引き続き、広報の重要性についてお話を伺いたいと思っています。まずは広告と広報の違いについて、詳しくお教えいただきたいと思います。
井上氏
まず、両者はメディアの媒体に載せるという点では共通しています。しかし、広告は自分でお金を使って出すもの。これに対して広報はマスコミに情報提供することによって、お金を使うことなく、メディアに載せてもらえるものです。
島田
広告では間にマスコミが入らないので企業が好きなように書くことができる。一方で広報の場合はマスコミという第三者が記事を書くため、信頼の裏付けが得られるということですね。
井上氏
広告は、主観でアピールできるということです。広報の場合はメディアが第三者の目で記事を書くため客観的。広告では「主張」が、広報では「事実」が書かれているということです。例えばある商品を、メディアがおいしいと言ったのと、それを作った企業がおいしいと言ったものと、どちらが信用されるかということです。
島田
やはり広報の方が効果が高いですよね。広報というと「謝罪会見」といったイメージが強いかもしれません。あるいはIRといった、投資家向けの報道がよく知られているかもしれません。先生の考えていらっしゃる「戦略的な広報」と、いわゆる「一般的な広報」との違いとは何なのでしょうか?

会社名を知ってもらうだけではだめなんです

井上氏
PRという言葉がありますが、正式には「パブリック・リレーションズ」と言います。パブリックは公衆とか、社会という意味。社会に対して関係「リレーション」を持つというのが語源です。自社が世の中に対してどのように関係性を持つかというのは、具体的に、会社名を知ってもらうだけではだめなんです。この会社は何ができ、どんな活動をしていて、どんな歴史があるのか。これらを報道してもらうことによって信頼を得ていく。また、一方通行ではなく、双方向で関係性を築くのが広報の基本的概念。その一部として「謝罪会見」といったものも含まれます。そこがきちんと理解されておらず、謝罪会見だけが目立ってしまうために、世の中に悪いイメージを抱かせているのかもしれませんね。
島田
そういうことなのですね。
井上氏
実際には良いこともあるし悪いこともあります。悪いことが起きてしまった場合には謝罪して情報を発信する。そうすることによって「信用」が生まれるのです。良いことだけ言っていても、信頼を得ることはできません。
島田
弁護士も同じです。メリットだけを言っていてはいけません。裁判をするにはコストが掛かることや、負けるかもしれないことまで依頼人には伝えなければなりません。
井上氏
マイナスになることもきちんとやっていこうというのが広報です。そこが目立ってしまうのですが、広報活動全体からするとごく一部のことです。自分たちの会社が何をやっていて、なぜこういう社名なのか。まずはそこから発信していくのが広報です。
島田
まず、広報というものの全体イメージを持つことが大事なのでしょう。ですが、まだ何も知らない方にとっては、トライするには難しく感じられるのでしょうね。
井上氏
日本における広報は、実は歴史がすごく浅いのです。アメリカには200~300年の歴史があるのですが、日本に入ってきたのは戦後だと言われています。GHQのマッカーサーが、広報を取り入れるように全国の行政に号令をかけたという話が残っています。ですから、本当に十数年くらいの話です。ほとんど人に知られていなかった。
島田
だから、今から先陣を切って早めに手を付けることが大事なのですね。
井上氏
ですが、広報を学ぶ所がないんですよ。法律を学ぼうと思ったら大学がありますが、広報を学ぼうと思っても学校が見当たりませんし、広報学科というのもほとんどありません。
島田
デザイン学科を卒業すればいいというものでもありませんよね。
井上氏
プレスリリースを書いた経験がなければ、なかなか教えられません。教えることができるのは、僕くらいしかいないらしいのです。周囲の方からは「病気になったら困ります」といったことをよく言われるんですよ(笑)
島田
そうですか(笑) 中小企業の広報は、技術論に走り過ぎる傾向がありますよね。例えば「Facebook始めました」とか「twitter、ブログやります」とか。その結果、迷走してしまう企業が多いようです。従業員が10人くらいの中小企業だと、運用に疲弊してしまうのです。
井上氏
毎日何回も更新しなくちゃならない。そのために社員が2・3人必要だとか。大企業でも大変なのです。それをやって何百万人、何千万人というお客に伝わればいいのですが、せいぜい1万人とか2万人。多くても10万人がいいところではないでしょうか。
島田
中小企業は、何の戦略も地図もなく始めてしまいます。気が付いたら迷走していた、ということがよくありますよね。

きちんとやれば、絶対に効果が出るのが広報です

井上氏
SNSにはまだそれほどの歴史がありませんが、広報には200~300年の歴史があり、確立されたノウハウなのです。
島田
SNSはまだ10年くらいのものですね。
井上氏
まだ不安定ですよね。その点、広報は格が違いますので、これを導入しない手はありません。リスクはほとんどありませんから。
島田
それは、会社の規模にも関係はないということですか?
井上氏
きちんとやれば、絶対に効果が出るのが広報です。ただ知っていればできるというものではありませんが、3年~5年といったスパンで戦略を練って実力を養っていくことで結果が出ます。
島田
はっきりとした効果が出るには、時間がかかるものですよね。だからこそ戦略が必要。ですが中小企業の社長だと、すぐ効果が出ないと焦って途中でやめてしまう。それに、広報を体系的に自力で学ぶことは中小企業にはなかなか難しいのですね。
井上氏
広報のためのノウハウはみんな隠しますよね。だから、広報を学ぼうと思ってもなかなか学ぶことができない。また広報とは、企業によって考え方や利用するメディアが違いますので、企業によってノウハウが異なるものなのです。実は、統一されたノウハウはありません。
島田
ノウハウだけを持ってきても、だめなのですね。そもそも地方では広報のノウハウをなかなか手にすることができないといった問題があります。これに対して何か解決策はありませんか?
井上氏
まず人材ですね。広報で成功している企業は、どこでもきちんと人を育てています。相当大きな会社でも、広報担当者は1人というのが多いですよ。やる気さえあれば1人でも可能です。
島田
中小企業であっても、広報の専任を1人置けば大丈夫ということでしょうか。
井上氏
その通りです。個人のやる気と勉強によって、中小企業でも十分可能な世界なのです。
島田
中小企業の場合よくあるのが「うちには自慢できるものがない。新規イベントも広報するようなこともない」と。
井上氏
僕に言わせると、PRすることがない会社の方が少ないと思うのですが。

新商品もメディアに採用されるように開発するのです

島田
皆さん、自社のことを客観的に見ることができないようですね。
井上氏
そういった目を養っていくしかありません。身近な勉強法としては、「なぜこの会社はテレビや新聞に出ることができたのか」という疑問を持つことです。それをひもとくと、広報の切り口を学べます。
島田
良い物を作っていれば、メディアがいつか取り上げてくれるという意識の方がいらっしゃいますが、黙っていてはメディアには載りません。良いサービスや企画があったとしても、やはり積極的にPRしなくてはだめなのだと思います。
井上氏
戦略上、年間の広報計画を作るといいですよ。経営計画を立てるのと同じように。そして、経営計画に広報計画がプロットできると思うのです。
島田
メディアに採用されるかどうかは別にして、計画的にPRし続けるのが大事なのですね。
井上氏
そうです。新商品も、メディアに採用されるように開発するのです。
島田
なるほど、メディアに受けやすいように。試作品みたいなものでもいいですよね。
井上氏
計画的に広報を行うことで、経営がすごく良くなった会社があるんです。期限を設けずに漫然と商品開発やPRするようなゆるい経営計画ではうまくいきません。
島田
なるほど。広報と経営計画がリンクしているのでしょうね。
井上氏
その通りです。リンクしています。「戦略広報」とか「戦略PR」ということで、経営戦略とリンクさせることをずっと推奨してきました。
島田
とても分かりやすいですね。例えば、われわれのような士業についても、ブランディングをする中で、広報というものに価値を見いだすことができるのでしょうね。
井上氏
その通りですが、個人の場合にはどういったブランドやイメージでいくのか、どのように見られたいのかという、別の視点が必要になってきます。
島田
僕達の場合、ゴールがクリアではないというのは確かにあります。その状態でとりあえず一生懸命やっていると、最終的にどこを着地点にするべきか分からなくなってしまう人が多いような気がします。
井上氏
個人と企業とでは、メディアの取り上げ方が違いますよね。例えば士業の方は、基本的に目に見えるサービスではありません。無形のサービスですよね。
島田
特に弁護士の仕事はそうです。
井上氏
だから、それを目に見える形にしていくというのがポイントです。それが書籍であったりウェブサイトであったりします。言葉で言い表すなら「ナンバーワン」とかですね。「ナンバーワン」「日本初」であれば、それは自ずと広まっていきます。だから、まずはポジションを取るというのも一つだと思います。頭一つ抜きん出ないとメディアには載りません。
島田
そこをどう作るのかが、知恵の出しどころなのですね。例えば、弁護士の広報活動にはどんなイメージをお持ちですか?

広報戦略を描ける人がいると、下関も
ガラッと面白くなるんじゃないかなと思います

井上氏
先ほど言ったような、謝罪会見とかでしょうか。
島田
謝罪会見ですね(笑)。だからこそ、弁護士は企業の広報活動に使っていただける場面があるのかもしれません。
井上氏
弁護士のパーソナルブランディングとして、上手だと思ったのは橋下徹さんですね。
島田
上手ですよね。
井上氏
あの方は、メディアを使いこなすのがうまいですよね。いつも意識しています。タレント性もありますが、やっぱりメディアをどう味方に付けるかというのも大事です。
島田
上手にメディアを利用するということですね。最後に、井上先生は地域活性化の活動もされていますので、下関の持つポテンシャルについてお聞きしたいと思います。この2日間、下関でいろんな会に参加されてみて、どのように感じられましたか?
井上氏
下関は、日本中の人から知られていますよね。そういった意味ではポテンシャルはすごいと思います。さらに歴史や食材など、他の都市からすればうらやましいくらいに観光資源があるわけです。ですが、それらが生かし切れていないという気はします。
島田
下関を活性化するための一番のポイントは何でしょうか?
井上氏
行政は最終的に何をしたいのか、ということです。例えば、下関市は行政として何を求めているのかを明確にしなければなりません。ロードマップをきちんとつくる必要があるわけです。その上で、下関の位置付けというのは、いろいろ考えられると思います。
島田
確かにそうですね。「よりよい下関」とか「魅力ある下関」といったぼんやりとしたイメージだけが決められていても、「よりよい」とか「魅力」とは何なのか明確にされていません。
井上氏
答は決まっているわけではありませんが、そこはやっぱりクリアにしなければなりません。地理的なものとか、歴史とかいろいろなものがありますが、下関はやりやすいですよね。下関はある意味、観光都市です。フグの絶対的なブランドもあるし観光客は800万人くらい訪れる。このことをうまく産業として落とし込む。観光客は日帰りではなく、宿泊させる。文化施設もありますから、これらを全国区にするといったことです。
島田
そうなると、広報戦略を描けるような人が一人必要ですね。
井上氏
地域が活性化している所には、そういう人がいるのです。地域活性プロデューサーのような人が、どんどん情報を発信しているのです。
島田
なるほど。
井上氏
広報戦略を描ける人がいると、下関もガラッと面白くなるんじゃないかなと思います。
島田
まだまだ、下関にも頑張る余地があるということですね。
井上氏
お土産なんかももっと。僕はいろんな都市に行くので、すごく高いレベルで競っている所を知っています。
島田
下関には、まだまだ伸びしろがあるのですね。
井上氏
良い物を作って情報を発信すれば、それを目当てに来るお客もいると思いますよ。
島田
今日は、どうもありがとうございました。
井上氏
こちらこそ、ありがとうございました。