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あえて「なぜ」を封じる

島田 直行 弁護士:島田 直行 投稿日:2025.06.01

土日に、一冊の本を一気に読み終えました。タイトルは『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた 「なぜ」と聞かない質問術』。端的に言って、とても素晴らしい内容の本だと思います。

読んでいて、自然と自分の仕事――弁護士の尋問技術にも通じるものがあるように感じました。テレビなどで、弁護士業務の「花形」として尋問を取り上げていただくことがありますが、実際の現場でも、尋問が上手な人とそうでない人がいるのは事実です。これは、職業として日々向き合っているからこそ、より敏感に感じる部分かもしれません。

私自身、常に「もっと磨かなくては」と感じているところです。尋問の現場で、ついやってしまいがちな失敗の一つに、「事実を確認するべき場面で、相手の判断や意見を聞いてしまう」ということがあります。

でも、これはあまり意味がないんですよね。判断や意見というのは、言いようによってどうにでもなってしまう。だからこそ、本当に聞くべきなのは、「何が起きたか」という事実です。それに尽きると思っています。

ところが、話をうまく引き出そうとか、流れをコントロールしようとすると、つい判断や意見に踏み込んでしまって、逆に話の核心がぼやけてしまう。そうなると、尋問全体が崩れてしまうこともあるんです。

これは、法廷だけでなく、日常のコミュニケーションや交渉、部下の指導といった場面でもよく見られることではないでしょうか。

この本の中でも、著者は繰り返し「なぜ?」という質問の危うさを指摘しています。

私たちはつい「なぜこうしたの?」と聞きがちですが、これには落とし穴があります。というのも、「なぜ?」と聞かれると、人は無意識に理由を「作ろう」としてしまうんですよね。そして、その理由が事実に基づいているとは限らない。とくに、何か失敗があったときには、自分を守るための理由づけになってしまい、本来知るべき実体が見えなくなるリスクがあります。

本書を通じて著者が強調しているのは、「事実に基づいた質問」をすることの大切さです。読んでしまえば当たり前のようにも感じますが、実践となるとこれが案外難しい。私たちはどうしても前のめりになって、結論や評価に急いでしまいがちなんです。

ただ、事実と感情、事実と判断をきちんと切り分けることは、専門職としてはもちろん、ビジネスや日常のコミュニケーションにおいても、とても重要な視点だと思います。

「なぜ?」と問うかわりに、「何があったのか?」「そのとき何を見て、何を聞いたのか?」といった、事実ベースの質問を重ねていくことで、相手との対話はより建設的なものになります。

この本は、専門職の方だけでなく、誰にとっても日々のコミュニケーションを見直すヒントになるはずです。ぜひ多くの方に読んでいただきたい一冊です。

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