【読書感想】組織も人も変わることができる! なぜ部下とうまくいかないのか 「自他変革」の発達心理学

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2021.07.04 (更新日:2021.08.26) 読書感想

マネージャークラスの方からは,「部下との距離感がわからない」という相談を受けることが少なくありません。あまりにも関与するとパワハラと言われ関与しすぎないと指導不足と言われる。その塩梅がわからずになんとなくお茶を濁すような姿勢で部下の育成に臨んでしまうことになります。部下の育成というのは,その内容は多様であっても「成長を促す」という一点において共通しています。問題は,この「成長」についてじっくりかんがえることがないまま部下の育成がはじまってしまうことでしょう。成長については,組織も人も変わることができる! なぜ部下とうまくいかないのか 「自他変革」の発達心理学という本がわかりやすくまとめてあります。

私たちは,成長というと個人のスキルの拡張ということばかりにフォーカスしがちです。新しい技術を習得するあるいは資格を取るというのもいずれも個人のスキルアップということになります。一般的な部下の育成というのもこういったスキルアップがメインになってくるのでしょう。ですが実際にしてみるとわかりますがいくらスキルアップしても「成長した」という実感を味わうことができないケースは少なくありません。ある瞬間は実感できたとしても継続性がないということです。このようになってしまうのは,成長の定義を間違っているからです。本書で指摘される成長は,①意識レベルの拡張②スキルの拡張というふたつの側面から検討されています。イメージとしては意識レベルの拡張が垂直的な成長であれば,スキルの拡張は水平的な成長というようにイメージすることができます。そして意識レベルの拡張がない限りは,個人のスキルを広げたところで継続的な成長には至らないということになります。実際のビジネスでは,こういった意識レベルの拡張についてのフォローが皆無といえるでしょう。

意識レベルの拡張にはざっくりいって自己中心⇒他者依存⇒自己確立⇒自己離脱というようなプロセスを経るということです。ここでひとつの理想となるのが自己確立というものであって他者の価値観などに理解を示しつつ独立した自分の価値観や世界観を形成しているというものです。このレベルになればマネージャーとしても部下の育成に悩むことが少なくなるでしょう。ただし本書では,それでもさらに上のレベルを目指すべきということになります。それが自己離脱というか,現在の自分の価値観なりをいったん壊して再構築し続けるということが必要と言うことです。人は,自ずと自分の価値観などを固く形成してしまいいつのまにか「それがすべて」ということになります。それはいわば執着と言えるものになります。そうすると世界をありのままに見ることができなくなります。だからこそあえて自分の価値観などを破壊して再構築し続けるという姿勢が求められます。これはいわばスクラップ&ビルドを繰り返しながら固定的な価値観に依存しないということです。これはなかなか難しいことですが流動性の高い時代においてはことさら重要な視点でしょう。

自分を破壊しながら成長していく。成長とはまさに終わりのない旅のようなものなのでしょう。