読書感想:エンゲージメント カンパニー

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2021.08.28 (更新日:2021.08.30) 読書感想

圧倒的な人手不足を背景に社員のモチベーションをいかに高めていくかということについての研修などが流行っている。自分の本のなかでも触れているが,いくら採用にこだわったところで退職されたら意味がない。 むしろ退職者が続いてしまうと経営者自身のモチベーションまで下がってしまって「採用できればいい」という雑なことになってしまいがち。そういった経営者の引っ張る企業で働く人は本当につらい。でもって辞める。。

そういうわけで経営者としては,「いかに社員のモチベーションを高めていくか」について頭を悩ましている。少なくとも僕のもとには寄せられている。 モチベーションというものは何となく分かるけれども具体的にどうすれば維持できるかについて普遍的な回答はない。ゴールは分かるけれど道順が分からないというようなものだ。モチベーションを高める単純な方法としては,賃金を調整することがある。多くの経営者も「仕方なく」賃金から触れていく。 でも最近の研究では賃金によるモチベーションアップは,基本的に長続きしない。難しいこと言わなくても「それはそうだ」と思うだろう。少しぐらい基本給があがったところで喜ぶのは一瞬のこと。生活レベルが変わるわけでもない。しかもモチベーションを維持するためには,さらに賃金を上げなければならない。モチベーションを高めるということと維持するということは別次元の話だ。短期的なモチベーションを高めたところで組織の一体化につながることはない。むしろ社内の競争心だけを一時的におあるだけになる。

社員のモチベーションを高める方法として耳にすることが多いのがエンゲージメントという概念だ。簡単に言えば社員がいかに会社に対してコミットできるか。そのために会社としてどのような制度を用意しているかということだ。今回ご紹介する「エンゲージメント カンパニー」もまさにエンゲージメントについて特化した一冊だ。 本書のいいところは大企業じゃなく中小企業でも十分対応可能なレベルに落とし込んでいるところ。 「社員に優しくあろうとするというのは一体どういうことなのか」について真摯にまとめられている。例えば成功と幸福 。 経営者であれば,この違いについて明確に答えるべきだ。なんとなく二つは違っていることはわかる。でも関係性について問われると声に詰まる。社員のモチベーションをあげるというのは本書にもあるように福利厚生を十分にするとかそういうレベルのものではない。お金をかけて実現できるのであれば誰も苦労しない。人は心で動く動物。人間心理にいかにアプローチできるかが成否を決めている。経験からしても社員のモチベーションが高いところと低いところの根本の相違は経営者の姿勢そのものにある。本書においては社員の心理にどのようにアプローチするべきかについてコンパクトにまとめてあるので経営者なら必読だ。

特に個人的に参考になったのが採用した若手社員へのアプローチ。とかく入社日は放置されているというケースは少なくない。それでせっかくのモチベーションを崩してしまう。入社した人をいかにフォローしていくかというのは,離職を防止するためにも必要なことだ。やる気をもって入社して何もないテーブルと花一輪が飾ってあるテーブルでは,圧倒的な印象の相違になる。雑然とした机に「今日からここが職場です」と言われてもなかなかやる気を維持するというのは難しい。「いきなりこういう扱いか」ということになる。僕自身も入社日の対応については変えていこうと考えた。花一輪でも飾ってあげたほうがやはり本人にとって幸せを感じてもらえるだろう。何より今いる社員にとっても経営者として人を大事にしようという姿勢が見せられるかもしれない。