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ハラスメント

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クレーム対応:クレーム対応は,相手の立場を「観察」することからはじめるといい

島田 直行 弁護士:島田 直行 投稿日:2019.12.09

よく「相手の立場に立って」と言われるが、相手の立場に立つことは容易なことではない。「きっとこうだろう」と想像していてもたいていは自分の立場からしか物事を見ていないことが大半だ。弁護士として交渉を生業にするからこそいっそう感じるところでもある。本当に相手の視点から物事を見ることができれば交渉力は神がかったものになるはずだ。

相手の立場に立つことと相手を動かすことは違う

僕は、「これをしたら相手はどのように動きだすか」についてはいろいろイメージしてみる。想像できることについては自分なりの対応策を事前に用意しておくことができるからだ。自分の想像通りに展開していくと妙な安堵感にもひたる。実際に想定していたように動いてくれることはほんとんどないわけだが。。

いろんな経験を踏めば相手がどのように動くかについて少しは予見することができる。予見の精度が高まることを経験を積むというのであろう。自分の感覚からしても10年前の自分と今の自分では「人の見方」という点からしてもまったく違う。例えば10年前であれば「論破すれば相手は動く」と自信を持っていた。あまたの失敗を経た現状においては「論破すれば相手の顔に泥を塗って最悪な結果になる」と自信を持っていえる。

このように経験によって相手の動きについて読むことはできるものの、これは相手の立場に立って物事を考えるということではない。むしろ相手の視点関係なく相手をたんなる対象としてしかとらえていないのかもしれない。それが誤解の火種にもなる。

これはクレーム対応においても言えることだ。クレームは、聞く側にとっては負担でしかない。いかに生産的な意見であっても一方的に批判を受けるというのは耐えがたいもの。でも実際には、コミュニケーションの仕方がうまくいっていないことがストレスの原因になっていることも少なくない。クレームを口にする側の背景事情に思いをはせると意外と話がクローズしてしまうことも少なくない。クレームには、コミュニケーションの失敗という側面もある。

まずは相手とわかりあえていない現実を認める

こういったクレームについて参考になる一冊に出会った。

宇田川元一氏の「他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論」だ。

本書は他人とのコミュニケーションのあり方に悩んでいる方(おそらく大半の人ではあるが)には参考になる。

そもそも話の前提が「わかりあえない」という点からスタートするのがわかりやすい。僕らは、簡単に「わかりあえる」と口にするが現実にわかりあえると実感できるケースなどほとんどない。「わかってもらえたかな」という一抹の不満しか残らないことが圧倒的に多い。「わかりあえることは簡単ではない。クレームならなおさら」と覚悟決めることがクレーム対応においてもあるべきスタンスだろう。

ちょっと何かを学んだからといってクレーム対応が収まることは通常ない。それほど人の心情というものは複雑でよくわからないものなのだ。

そのうえで著者は、なによりも「観察すること」を重視する。相手そのものだけだけではなく相手の関係者や背景事情も含めた広い支店で眺めるというものだ。ここでのポイントは、相手そのものだけを見ていたら不十分ということだ。

ある人というのは、その人と周囲の関係性のなかで形成される。例えば「島田直行」というひとりの人間も多数の方との紐付けのなかで「島田とは」と定義されていく。だからこそ周囲の事情も含めた俯瞰する姿勢がコミュニケーションの組立で必要となる。僕らは、無意識のうちに相手をつながりをもった人ではなく対象としてのみ認識してしまいコミュニケーションに失敗している。

つながりを持つことはきっと技術だ

僕の愛読書にこちらがエーリッヒ・フロムの「愛するということ」がある。

この本では「愛は技術だ」と指摘された。同じくコミュニケーションも技術だといえるかもしれない。さりとていずれも簡単に身につくような技術でもない。

本来的な技術とは、手にするまでに手間暇のかかるものだ。読んですぐにできるようなものはおそらく技術とはいわないだろう。いろんな失敗と痛みを知ることで初めて自分のなかで技術として成熟していくものといえる。

クレーム対応についてもしかり。短絡的になにか解決できるような方法はおそらくない。時間をかけて「相手とコミュニケーションを取るとためになにをするべきか」を自問しつづけてこそクレーム対応に終わらないすぐれたコミュニケーション能力につながっていくのであろう。

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