アフターコロナで地方での仕事はどうなるのか考察

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2020.05.09 (更新日:2020.05.21) 労働問題

休業要請について一部解除されるようになってきた。まだまだ予断を許すような状況ではないが「これからの経済をどうしていくか」ということもやはり考えていかなければならない。いつまでも行政サイドからの支援ばかりを期待していても生活を維持していくことはできない。新型コロナウィルスは,前回に同時にインパクト与えたところが特徴的だ。たいていの災害は,被害のエリアというものがある。だが新型コロナには,そういった制限がない。どこにいても感染する可能性はある。だからこそ誰しもがアフターコロナにおける仕事についてなんらかの考えて持っておくべきであろう。そこで地方の企業の視点からアフターコロナにおける仕事のあり方について想像してみよう。

①都市部からの営業活動増加

ネットワークの発達により都市と地方という物理的な距離はしだいに狭まっていた。それでもやはり地域経済というものがあった。「消費をするならできれば地元の企業で」ということでまわしていたところもあるだろう。こういった地域経済の根底にあるのは,対面の商売だ。やはり「会う」というのは与える印象が強い。相手のニュアンスも会うことでわかることもある。だからこそ地元の企業には,強みがあったといえる。

新型コロナのもとでは「会う」ということが控えられた。これは地元をベースにしていた企業にとっては強みを失ったようなものだ。オンラインでの営業となれば,どうしても資本力などでまさる都市部の企業が強いだろう。つまり物理的な距離で保護されていた部分を地方企業はいっきに失うことになる。「オンラインでもビジネスができる」と実感すれば,なおさら都市と地方の相違というものはなくなってくる。オンラインで都市と地方の垣根がなくなるというのは一見すれば響きがよいが実際には競争がさらに加速化することになる。都市と地方では情報量に圧倒的な相違がある。とくにカタチなきものを扱うサービス業の場合には,そういった傾向が顕著だろう。簡単にいえば都市部の企業による地方への営業活動がさらにいっそう増えてくるのではないだろう。地元企業としては,自社オリジナルの強みを整理しておかないと立ちゆかなくなるだろう。

②職場と自宅という区別が曖昧に

これまでは職場,自宅そしてサードプレイスという区別が生活圏のわけかたとして指摘されることが多かった。新型コロナのせいでいきなりテレワークが広く認知されてきた。「仕事は職場でやるもの。テレワークは従業員のままではできないだろう」という固定概念がいっきに変化した。1年前にここまでテレワークが広がるなどだれでも想像してみなかったであろう。ちなみに山口県は,テレワークの実施率が国内最低ということだ。

テレワークが広まったと言ってもまだまだ黎明期という印象をぬぐえされない。実施している人に感想を聞くと「電話対応しなくていいから集中できていいです」と言う声が多い。たしかにそうではあるがちょっと違う気がする。これは物理的に職場から離れて自宅で仕事をしているものでしかない。これはテレワークの第一歩であってゴールではないはずだ。

テレワークの流れは,おそらく止まらない。これからの時代においてもひとつの働き方として定着していくことだろう。そのとき企業として「テレワークに即した仕事の仕方」というものを提示できるかがポイントになってくる。今の作業を単に自宅にしてくださいというのであれば働く場所を変えただけであって効率も悪くなるだけだろう。個人的に見ていてもテレワークがうまく機能している会社は,仕事の仕方から見直している。たんにビデオ会議できるようになりましたというレベルの問題ではない。

テレワークが広がると勤務時間の管理と経費の負担についても企業として考えないといけない。他のスタッフがいない状況で「勤務している」という時間を管理するのはなかなか難しい。自己申告などによらざるを得ないところがあるため個人の信用といったものがさらに価値をもってくるはずだ。経費の負担については,自宅で仕事をする上での光熱費やPCの購入費用なども検討しないといけない。

③資産を持たない経営へ

新型コロナの影響は,相当期間にわたって残存するだろう。今回の営業自粛のなかで改めて固定費の多さを感じた企業は少なくないはずだ。「売ることがすべて」の経営スタイルでは,売上を確保するために資産も同時に増殖させる傾向がある。B/Sの拡大には目もくれずとりあえずP/Lのヘッドばかり目がいってします。結果として「営業ができない」という事態に陥るといきなり膨張した資産の管理費用と固定費に悩まされることになる。

今回のできごとで「小さな資産で大きな利益」を目指す経営が広がっていくのではないかと考える。闇雲に売上数字を追うのではなく資産を押さえながら確実な利益を目指していくような経営スタイルだ。その意味では後継者の方にはこれを機会に財務の勉強をさらに深めていただきたい。別に「自分で仕訳をしよう」と勧めるものではない。「効率的に資産を利用するためにいかにするべきか」を考えるための財務力だ。薄い本でいいので財務についてぜひ学んでいただきたい。そうしないと危機的状況で間違った判断をしてしまう。数字は嘘をつかない。

④人材教育の重要性が上がる

日本の労働人口が減少しているのだから中小企業にとっても「人手が足りない」という状況はアフターコロナでもおそらく変わらない。さりとてコロナショックによりこれまでのように採用について積極的に取り組むことも容易ではなくなるかもしれない。企業は,人手が足りないのに採用を控えざるを得ないという板挟みの状況になるだろう。若手としても安全指向からさらに大企業メインへの要望が強くなるかもしれない。地方の企業としては,新規採用に取り組みつつ「人に頼らない経営」というものをさらに模索せざるを得ないだろう。それができるかどうかがひとつの分岐点。「うちの業種ではできない」と最初から思考停止になることだけは避けていただきたい。

その意味では既存社員の教育の有無が時間をかけて企業の体力の違いになってくるはずだ。人材教育には,相当の時間がかかる。即効性がないからこそ企業は「そんな余裕はない」「退職したら無駄になる」といって教育にコストをかけることを避ける傾向がある。見方を変えれば時間がかかるからこそ競合他社に真似されにくいブランドになる。カネで変えるものであればライバルに簡単に真似されてしまうだろう。人材教育は,場当たり的に「よしやってみよう」というのでは経営者の気分だけのもので終わってしまう。目的,教える内容,教える順番そして教え方を経営者がきちんと確定させなければならない。

アフターコロナの時代に生存できるかはダーウィン然りに環境適合能力しだいだ。5年後どのような企業にしたいのかを想像しつつ今できることからはじめていただきたい。