コロナウィルスショック 企業からの問い合わせまとめ

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2020.03.08 (更新日:2020.03.17) 経営者の方々へ

ご存知のように新型コロナウィルスにより企業経営にも現実的な影響がでています。事務所にも福岡県・山口県中心に経営者からの相談が来ています。すべての経営者がこの受難を超えていくためにとりあえず現在の問題点などを整理してみましょう。なにごとも現状把握が先決です。

コロナウィルス最大の脅威は「いつ終わるか」がわからないこと

あくまで事業経営という観点からすれば,今回の事態の最大の課題は「いつ終わるのかわからない」ということにつきます。政府の要請もあってすべての物事が自粛ムードのなかにあります。「自粛」という言葉の難しさは,「何が許され何が禁止されているか」が曖昧で結局あらゆることを自発的に停止してしまうことです。これによって経済への影響が拡大してしまいます。

「いつ終わるのかわからない」という課題は,分析すると3つの内容を含んでいます。
①「終わり」とは客観的にどのような状態であるのか
②「終わり」という判断を誰がするのか
③「終わり」の時期はいつなのか

これらについてぼんやりとした不安を誰しも抱くことになっています。

感染症は,局地的なものではなく「見えないまま拡散」するところが他の災害との違いでしょう。時間の経過とともに拡大していくリスクがあるため特定の地域あるいは業種に限らずすべての企業に影響を及ぼしています。

経営資源と被害

コロナウィルスにより経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)のすべてに対して影響がではじめています。事務所に寄せられる相談も多様です。そのなかでも相談として多いのが売上の目途が立たないというものです。建築関係では「資材がない」ということで事実上の工程がストップしていることもあります。上記の図は,各経営資源に与える影響のうち代表的なものを指摘しました。

こういった事業に対しては行政をはじめとしてサービスの提供が始まっています。情報は自ら積極的に探していかなければ取得できません。企業向けとしては,経営法友会のサイトが情報が整理されてあり参考になります。およそのことは,こちらのリンク先から見つけることができるでしょう。

最新の情報はやはり厚生労働省など行政のサイトが充実しています。

コロナウィルスに関する問い合わせ①:社員がウィルスに感染

現実的な課題としては,社員が感染した場合にはどうするかということです。労務関係については,「社員が新型コロナウィルスに。そのとき会社はどのように対応すればいい」にざっくり書いているので参考にしてください。企業としては次の点を確認して方針を固めてください。

①社員が感染の可能性があるとき受診をいかなる段階で命じるか
②社員が感染した場合の傷病手当金の手続きを誰が担当するか
③社員の家族に感染者がでたときに休職を命ずるか

その他のこまごまとしたことは都度弁護士か社労士に相談するべきでしょう。

コロナウィルスについては,すでに助成金が組み立てられてています。

新型コロナウイルス感染症にかかる雇用調整助成金の特例措置の拡大
新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金

このふたつの助成金は,直接社員が感染しようが関係ないものです。「うちも利用できないか」とまじめに考えてみてください。わらなければ社労士の方に相談してください。他にも助成金があるかもしれませんのでよく調べましょう。

助成金は,申請しないとでてきません。「誰かがやってくれる」というのは甘い考えです。申請は,社労士の方に費用をかけて依頼したほうがいいです。急にできた制度ですから誰しもよくわかりません。いきなり自分でやろうとしても手間暇ばかりかかることになりかねません。僕にしてもよくわかりません。餅は餅屋。「こういうときこそ士業を活用しなくてどうするの」と言いたいわけです。

こういった助成金については,「助成金がもらえますよ」といって詐欺的な方法を提案してくる者もでてくるかもしれません。信用できる専門家に依頼するようにしましょう。

助成金の詳細は,「助成金の申請に関してわかりやすく解説:コロナウィルスに関する助成金の種類も紹介」をご覧ください。

コロナウィルスに関する問い合わせ②: 売上の目途が立たない

「まったく売上の目途がたたない。資金繰りが不安だ」という相談もあります。中小企業は,ぎりぎりの資力で回しているので予定していた売上がないとなるとダイレクトにキャッシュフローを悪化させます。

あくまで個人的な推測ですが早くとも6月ごろまでは流動的な状況が続くのではないでしょうか。企業であれば,2~3カ月くらいのストックであればなんとか確保できているかもしれません。現在は国内の在庫を利用して展開できていてもストックがなくなる5月以降にはさらに景気に影響がでるのではないかと考えています。初夏以降が中小企業にとって本当にきつくなるのではないかと。僕の推測の失敗で終わればいいのですが誰にもわからないところです。

現実的には少なくともこれから3カ月間の資金繰りが特に重要です。資金繰表を持っていない人は至急作成してください。自力で作成が難しいなら税理士の方の協力を得ながら作成してください。資金繰りさえなんとかなれば倒産はしません。仮に3カ月間内に資金ショートの可能性があれば,早急に銀行と協議するなりしてください。必要があればリスケも検討するべきです。対応が遅くなるほどまずい状況になります。

すでに経産省は,セーフティーネット4号の発動を発表しています。これはコロナウィルスの影響を受けた事業者に対する信用保証協会付きの融資枠の拡大と理解してください。また経産省は,セーフティネット保証5号の対象業種の追加指定も実施しています。

「4号と5号の違いは」とかいいのでまず金融機関あるいは信用保証協会に相談してください。資金繰りは時間が勝負です。自分で数字算段するのが難しければ,税理士あるいは中小企業診断士の方に依頼して対応してもらうのもひとつです。利用できるものはすべて利用するという精神です。

さらに政府は,無担保の融資についても実行するということです。具体的な内容はまだ不明ですが経営者としては利用できないか注意してください。

資金繰り関係については,「まずは現金。現金さえ確保できればなんとかなる」をご覧ください。

コロナウィルスに関する問い合わせ③:納期に間に合わない

今回は物流自体が停止しています。そのため建築資材をはじめとした物流が止まっています。会社の責任ではないので納期に遅れたからといって損害賠償の責任を負担することは通常ありません。業者間にて協議して日程の変更などをしていくことになります。

もっとも相手の資本力が大きく無理をこちらに求めてくるときもあるかもしれません。その場合には不正競争防止法や下請法などを根拠に争うことができる場合もあるので弁護士に相談してください。

サービスなどの料金返還については,基本的に会社と消費者のいずれがキャンセルを決めたかによって違ってくると考えます。①会社がリスク回避のためにイベントなどのキャンセルを決定すれば,約款などで事前にルールを決めていない限り返金をすることになります。②消費者が自分の判断でキャンセルをした場合に会社としてキャンセル料を請求できるかは規定によります。事前にキャンセル料を取り決めておりかつ周知をしているのであればキャンセル料を請求することはできるでしょう。

会社として消費者からの返金に応じるかどうかは,経営的な判断も含まれます。法的には応じる義務がなくてもあえて経営判断として応じることもあるでしょう。どのような判断をするにしても顧客として同じであるため同じ対応をするようにしなければなりません。特定の人からの要求が過激だからといって不公正な対応をするとかえって混乱を誘発させることになります。

コロナウィルスに関する問い合わせ④:イベントが実行できない

現時点では政府からイベントについて自主を促されています。個人的にはやはり人が集まるようなイベントの開催は当面避けるべきと考えています。

イベントを開催して感染者がでたとします。このときに当然に開催した企業が何らかの賠償責任を負うのかといえば正直分かりません。ここはケースバイケースとしかいいようがないところです。

ただ会社としては,「こういう時勢にもかかわらずイベントを強行した。どういう了見だ」という風評を受けるリスクは当然あります。経営者の多くは,風評をさけるために苦渋の選択をしているのが実情でしょう。こういった選択をした場合のコストは企業が負担することになります。

いったんついた風評を事後的に修正するのは相当難しいのが現状です。これは法律でどうにかできるものではないです。

社員にコロナウィル感染者がでたさいに工場・店舗などは閉鎖するべきかという相談も複数ありました。これについては僕もよくわかりません。基本的には保健所をはじめとした行政からの指示があるので従うほかありません。仮に行政からの指示がなくても個人的にはいったん閉鎖して消毒などをするべきと考えます。僕は,専門家でもないので消毒の効果がどうなんかについて意見を言える立場にありません。ですが日本人は,禊という文化を持っています。何か問題があったときに立ち止まって浄化するというひとつの儀式を重んじる傾向があります。ですから「きちんとした対応をした」という姿勢を対外的に示すためにもなんらかの閉鎖と対応は必要だと考えています。たぶんそうしないと「しかるべき対応をしていない」という風評ばかりが広がる危険があります。これはあくまで個人的な見解です。

経営者ならこういう時期だからこそ自ら旗を掲げよう

こういう事態になるなんておそらく誰も想像していませんでした。ある経営者が電話で「まさに八方塞がり。兆しが見えない」と落ち込んだ声で話されていた。気持ちもわかったうえで「そんなことをあなたが言ってどうする。兆しが見えないなら自分で旗を掲げればいい」と答えた。失礼な話ではあるが本気だ。

僕は,経営者の最大の役割は目指すべきゴールを提示することだ考える。経営者が社員といっしょになって右往左往していたら本当に社員も不安になってしまう。「この会社はどこに向かうのだろうか」と。おそらくこういった不安こそコロナウィルスに対する不安よりも重い。

はっきり言おう。今こそ経営者としての真価が問われている瞬間だ。これは事業の規模の大小の問題ではない。年齢やキャリアの問題でもない。経営者には,しょせんふたつの選択肢しかない。やるかやらないかだ。光が見えないなら経営者が光になればいい,旗が見えないなら経営者が旗を掲げればいい。それが経営者という立場を選んだものの責任でもあり運命でしょう。逃げてはいけない。

困ったことがあればいつでも相談して欲しい。別に僕でなくてもいろんな相談窓口があるはずだ。

大変な時期だからこそ経営者よ蒼天にはためく旗を掲げよう!