テレワーク導入の際の注意点を解説

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2020.02.23 (更新日:2020.02.25) 労働問題

新型コロナウィルスの広がりもあってにわかにテレワークという言葉を耳にするようになりました。テレワークとは,ざっくりいえばネットを活用して自宅で仕事をすることです。新型コロナウィルスのこともあり大企業を中心に導入をしているところがあります。

テレワークは,通勤の時間を省くことや育児との両立などが可能とされています。ネットも普及したことにより新しい働き方のひとつとして注目されています。中小企業でも人手不足の解決のために導入してみたいというニーズはあるでしょう。でも実際に挑戦してみた方からは「やってみると意外と大変」という声もあります。ここでは導入するさいの注意点をいくつか指摘しておきます。

現在の業務をテレワークで処理できる内容に変えていく

テレワークは,自宅で勤務するものです。あたりまえですがここにテレワークの限界があります。

中小企業では,必要最小限の人員で事業を展開しています。そのため大企業と違って各自のカバーする業務領域が広く重複しているところがあります。経理の人が営業のサポートを兼務していることも一般的です。バックエンドの仕事は,在庫管理も含めて「事務」というようにひとくくりになっています。

そのため業務のなかには,どうしても現場にいないと処理できないものがあります。事務にしてもペーパーレス化ができていないと「資料は自宅にもちだせない。そのため自宅で仕事ができない」ということなります。このように中小企業では,各業務が複雑に入り組んでいるため特定の部門を明確に切り分けて自宅での仕事にすることが容易ではないです。

そのため最初にするべきことは,機材の導入ではなくて業務範囲の明確化とテレワーク対応化です。いかにすぐれた機材を入れても業務内容が整理できていないと宝の持ち腐れになります。

「今の企業をテレワークで」という発想は,たいてい失敗します。「今の業務を変えてテレワーク対応なものにする」というのが発想のベクトルとして正しいでしょう。

テレワークの導入に関する法律を理解する

テレワークというと機材やノウハウが注目されがちですが労務管理の観点からも注意を要します。

例えばいきなり「明日から君もテレワークやってみて」と当然に会社がいえるわけではないです。会社と労働者の関係は,労働契約により決まります。そして労働契約は就業規則の影響を受けます。テレワークを導入するためには,まずもって就業規則でテレワークを実施する旨の定めをいれないといけません。つまり経営者の思いつきではじめることはできないわけです。

社員が10名未満で就業規則の作成義務がない場合でも社員の同意が必要になってきます。

テレワークといってもいろいろ決めないといけないことがあります。「労働時間の管理はどうするのか」「自宅で利用するPCの電気代などは誰が負担するのか」「途中育児で仕事から離れるときには労働時間はろうなるのか」など。たんにシステムを入れたら可能というわけではありません。

とくに問題になるのが労働時間の管理でしょう。技術的にずっとPCにて管理することもできるでしょうがやはり「管理されている」と意識しながら自宅で仕事をするのは精神的な負担も大きいものです。特に自宅の場合には,他に同僚もいないため雑談をすることもありません。ケースによっては,ずっと画面に向かっているだけということもあるかもしれません。

ですからテレワークを導入する場合には,勤怠管理の方法をどのようにするのかをしっかり決めておかなければなりません。自宅で仕事をしているとどうしてもプライベートと仕事の切り替えがあいまいになってきます。あいまいな場合だと「すべての時間勤務していた」という認定になることもありえます。あいまいになりそうな部分だからこそ明確な基準と方法で労働時間を管理するべきです。

テレワークを導入しても、アナログなコミュニケーションを忘れない

テレワークは,新しい働き方としてこれから利用する人も増えてくるでしょう。こういったテレワークが定着していくためには,逆説的ですがアナログなコミュニケーションが大事なってくると考えます。

本来であればテレワークというのは,効率性を高めるために提案されたものです。効率性を高めるのであれば,アナログな部位を減らしデジタルな部位を増していくべきでしょう。

ですが人間の関係というのは,むしろ非効率的な部分で成熟されるところがあります。どれほどビデオ会議の技術が発達してもやはり実際に会って話すのとはまったく印象が違います。これはおそらく技術の問題ではないです。「会う」という経験を通じて相手から無意識にいろんな情報を手に入れているのかもしれません。

テレワークにおいても「会う」という経験を定期的に設定することで人間相互の関係が成熟していくものと考えます。たんにビデオ会議で会うだけの人では,雑談もなく相手の人となりを知ることもできないでしょう。こういう状況ではなかなか信用というものも生まれにくいでしょう。