マイカー通勤を社員に認める場合、絶対に任意保険証まで提出させるべき。

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2019.06.16 (更新日:2020.01.08) 労働問題

地方では公共交通機関が不十分であるためマイカー通勤のニーズが高いです。もっともマイカー通勤中に社員が交通事故を引き起こしたときには,会社が第三者に対して賠償責任を負担せざるを得ないときもあります。そこでマイカー通勤を認めるときのポイントについて整理しておきます。

マイカー通勤する社員が任意保険に加入していないために会社が巻き込まれてしまう

そもそも交通事故の賠償席には,事故を引き起こした者が負担します。ですから通勤途中で社員が誰かをケガさせれば社員が賠償をすることになります。具体的には社員が加入していた保険会社を通じて被害者と示談交渉が実施されます。通常はこれで社員の保険にて対応されるため会社が巻き込まれることはありません。

ですがすべての社員が任意保険に加入しているとは限りません。約3割が任意保険に加入していないともいわれています。仮に自賠責に加入していたとしても保険金額には上限がありますしなにより修理費などは対象になりません。被害者としては,保険でカバーできない部分について加害者たる社員に請求することになりますが支払は期待できないでしょう。そもそも資力がないから任意保険に加入していないことが一般的です。加害者が任意保険に加入していなかった場合は、被害者としては,社員のみならず会社を被告に加えて訴訟をすることになってしまいます。

マイカー通勤を会社が認めていると会社の責任が肯定される

実際にいかなる場合に会社の責任が認められるかについては裁判例がわかれています。基本的には会社がマイカー通勤を認めているような場合には責任も肯定される傾向になります。

まずマイカーを通勤のみならず業務でも利用しているような場合には,会社の責任は肯定される方向にあります。

マイカーを通勤のみ利用して業務で利用していないような場合には,会社としてマイカー通勤を認めていたか否かによって判断が分かれてきます。会社としてマイカー通勤を認めていた場合には責任が肯定されると考えておいた方がいいでしょう。例えば会社が駐車場を用意したりあるいはマイカー通勤を前提にした交通費などを支給していた場合には会社の責任が認められやすいです。

これからの関係をざっくり整理すると次のようになります。実際の責任の有無はケースによって異なりますので一概には言えませんがイメージとして持ってください。

  通勤と業務 通勤のみ
会社認容 肯定 肯定
会社禁止 肯定 否定

「事故を起こしたケースは通勤だったのか」が問題になる場合もある

みなさんは,「通勤といえば通勤」と考えるかもしれませんが実務では「そもそもそれは通勤途中の事故なのか」が問題になることもあります。

例えば帰宅途中に買い物するためにいつもと違うルートを利用していたときに事故を起こしたとしましょう。いつもと違うルートだった場合にも当然と通勤といえるのでしょうか。言われてみると「たしかに」と感じるでしょう。実務ではこういった「言われてみれば」という部分が争いになるものです。

この問題は通勤災害認定においてよくとりあげられます。通勤中の事故であれば通勤災害認定され労災と基本的に同様の保険が給付されます。社員にとっては通勤に該当するかによってまったく結論が違ってきます。

こういったケースでは個別に判断することになりますが外食などであきらかに他のルートを利用している場合には「通勤」に該当しないと判断されることもあるでしょう。

【トラブル防止のポイント①】マイカー通勤を認める場合は、社員には任意保険証の写しを提出してもらう

マイカー通勤でのトラブルを回避するためには,社員に自動車保険への加入を義務付けるほかありません。しかもいくら指示をしても実際には加入していると言いつつも加入していない人もいます。事故があってはじめて加入していないことが発覚するのが一般的です。

ですから会社としては定期的に自動車保険証の写しを提出してもらうようにしてください。実際に提出されたものを確認しなければ本当に加入しているのか誰にもわかりません。自動車保険は定期的に更新をようするものです。いちど確認しただけでは不十分で毎年定期的に確認する必要があります。

【トラブル防止のポイント②】任意保険の内容が「業務中の事故までカバーしているか」を確認する。

また業務でマイカーの利用を認めている場合には,加入している自動車保険が業務中の事故であってもカバーしているのかについても確認しておく必要があります。通勤中の事故はカバーしていても業務中の事故はカバーしていないとなれば不十分です。

自動車事故では賠償額が数千万円になることもあります。これを会社が自己資金で負担するとなればかなりの影響になります。しかも社員に求償しようとしても資力として不可能な場合が多いでしょう。このようなことにならないためにも自動車保険の確認は徹底しましょう。

企業が抱えるリアルな労働問題については,こちらの本でも整理しておりますのでご覧ください。

またこちらにも過去の事例もあげていますのでご覧ください。