団体交渉への対応:団体交渉で経営者がやってはいけない3つのポイント

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2019.12.22 (更新日:2019.12.24) 経営者の方々へ

団体交渉の申し入れは,ある日いきなりやってくるものだ。はじめてのことで困惑する経営者の方も少なくない。本来であれば経験のある弁護士にまず今後の対応について相談する方がいい。専門家でもない人の意見を鵜呑みにしてかえってトラブルを拡大してしまうこともある。団体交渉において経営者として「これだけはやってはいけない」というポイントを紹介しておこう。

団体交渉で経営者がやってはいけないポイント①:
専門家でもない人の意見を鵜呑みにする

ある飲食店ではユニオンからパワハラを理由に団体交渉を求められた。はじめてのことであわてた経営者は知り合いのつてで労働問題に詳しいと自称する方に相談をした。その方は「そんないきなりの団体交渉の申し入れに応じる必要はない。拒否して差し支えない」というアドバイスをしたみたいだ。経営者は,「本当に大丈夫なのか」という一抹の不安を抱きながら団体交渉拒否をユニオン側に通知した。でもやはり不安になって事務所への相談ということになった。

はっきりいって無茶苦茶だ。基本的に団体交渉については,これに応じる義務が会社にはある。日程の都合がつかない場合に調整することができるが団体交渉に応じないというのは違法行為となりかねない。仮に要求内容が明らかに会社側の認識と違う場合であっても団体交渉のなかで協議するべきことであって団体交渉そのものを拒否する理由にはならない。

受任したうえで会社としての対応に問題があったことをユニオンに謝罪した。これで理解していただいたからいいようなものの話がつかなっかたら大変なことになっていたかもしれない。団体交渉に限るわけではないが専門家でもない人の安易な意見ほど怖いものはない。責任もないから適当なアドバイスでもできる。

ときに専門家でない人の意見の方が明確で魅力的なもののように響くときがある。それは意見がすぐれているからではなく現場の経験がないからだ。あたりまえだが現実は教科書のように理路整然としているわけではなくさまざまな事象が複雑に混ざり合っている。なんでもかんでも明確に対応できるものではなく様子を見ながら微調整してくのが本来のあるべき対応だ。団体交渉で失敗したくなかったら早めに費用をかけても弁護士に相談するべきだ。顧問の社労士の方などに紹介してもらえればいいだろう。


団体交渉で経営者がやってはいけないポイント②:
組合の意見をなんでも拒否する

僕は,できるだけ早めに団体交渉を終わらせるためにいろいろ工夫を重ねている。早ければ1か月以内で終了ということもある。結局のところ「どこまで準備できるか」によるところが大きい。準備もせずにただ団体交渉を重ねるだけでは組合に対しても失礼なうえ時間も浪費することにる。「今回はなにを決めたのか。そして次回までになにを検討するべきなのか」を明確にして積み重ねていくことが団体交渉の早期解決においても大事だ。

そのなかでとくに大事になるのが経営者の方針だ。経営者のなかには「なんでも拒否する」というスタンスの人もいる。これでは円滑な団体交渉にはなりませんしかえってトラブルを拡大させることになる。

団体交渉というのは,あくまで交渉。組合からの要求についてすべて言われるがまま応じる必要はない。会社として主張するべきところは主張するべきだ。

ただ会社側にも何らかの問題点があることが通常だ。問題がありつつなんら譲歩しないというのであればいつまでも団体交渉の終了にならない。譲歩するべきところは譲歩するという覚悟の有無が経営者に問われていると言える。「どこまで譲歩するべきか」については弁護士の腕の見せ所だ。

ありがちな失敗はあらゆることを拒否してしまっていつまでも合意できずかえって会社が著しい譲歩を余儀なくされることだ。これでは会社にとってなんら意味がない。


団体交渉で経営者がやってはいけないポイント③:
協定書の内容に注意を払わない

団体交渉で着地点が見つかれば,組合と協定書なりの書面を取り交わすのが通例である。いったん書面を作成すると法的効力をうみだすので内容には徹底的に注意するべきだ。できるだけ協定書は会社側で下書きを作成して確認をしてもらうべきだ。自分で作成してみないと見落としがでてしまいがちだからだ。

会社側が金銭的給付をする場合には,金額のみならず支払期日や振込先も記載する。振込先は,組合の口座を指定されることが多い。

その他には退職時において返品の必要な物(健康保険証や貸与物など)についての処理方法も記載することがある。

いずれにしても組合側の要望のみならず会社側も要望も明確にしておかなければならない。記載漏れがあれば「そんな取り決めはない」と言われても仕方ない。できれば調印する前に弁護士に内容を確認してもらうべきだ。

団体交渉は経験する機会も少ないので経営者が後手に回ってしまうことがとかく多い。「なんとなくの対応」というのは絶対にするべきではない。それは団体交渉を求めてきた組合に対しても失礼だ。団体交渉は,社員が会社に対して要求できる重要な権利である。だからこそ経営者としても襟を正して対応しなければならない。