気を遣う人ほどビクビクする職場にならないために

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2019.09.08 労働問題

いろんな職場の労働案件を目にしてきた。そのなかで感じるのは,周囲に気を遣う優しい人ほど職場で辛い思いをしていることだ。みなさんも人間関係に配慮しすぎて「なんで仕事の内容でなくて人間関係でこんなに気を遣わないといけないの」と悩んだこともあるだろう。飲み屋の会話の7割は職場の人間関係についての悩みではないかとすら感じるところだ。

こんなことを言ったらおしまいからもしれないがトラブルを起こす人は自分がトラブルメーカーとはまったく感じていない。むしろ周囲の起こしたトラブルで被害にあっていると感じている。なかには「仕方ない。みんなの起こしたトラブルを解決してあげよう」と他人事のように現れて問題をさらにぐちゃぐちゃにしてしまう。最後には「身勝手だ」と言い放つ始末だ。

優しい人は,「なんとか職場の人間関係を波風立てないようにしよう」と努力する。努力がうまく結果につながればいいが人間関係のトラブルはそれほど単純なものではない。いろんなノウハウもあるだろうがいったん崩れた人間関係を事後的に回復させることは至難の業だ。僕としても「人間関係を修復させたい」という御依頼はお受けしていない。これほど難しいことはないことを自覚しているからだ。

なかなか結果がでないために対応としては相手の逆鱗に触れないように配慮することになる。配慮すると言えば簡単だけど実際には相当のストレスがかかるものだ。そもそも他人の考えていることなんて誰もわかるはずがない。よかれたと思って口にしたことが相手の感情を逆なでして修復不可能な関係に至ったケースなど数限りなくあるものだ。「とりあえず相手の機嫌を」と考えはじまると相手の一挙手一投足が気になってしまう。気が付けば相手が何を言いだすかとびくびくしながら通勤せざるを得ない状況になってしまう。こういう状況は本当につらいが珍しくない。いつか耐えられなくなって辞表を出すことになる。まさか人間関係が辛くてと会社に言うこともできないため「キャリアアップのため」など抽象的な理由でお茶を濁して終わりとなる。こういった職場の雰囲気が悪いことを理由として退職するケースは少なくない。

変な話だがトラブルを起こす人よりも周囲から退職していくことになる。

こういうことにならないためには,あたりまえのことだが問題行為を上司が明確に指摘することが大事だ。最近では「パワハラになるのではないか」と危惧するあまりに指摘するべきことが指摘されていない傾向がある。これでは問題行為が問題として認識されないままになる。組織としての一体感がうまれてこない。上司からの指導というのは,本人の育成のみならず良好な職場を形成するうえでも必要である。「この職場は問題点が是正される。自分の判断は間違っていない」というのが社員にとっての安心感になる。

上司が指導をきちんとするには,①問題行為を上司が認識することと②問題行為に対応した指導ができることにある。とかく最近は「どうやって指導をするか」ばかりが注目されるが前提として問題行為を上司が認識しているかも重要である。目の前の仕事が忙しいばかりに部下の状況を把握していないケースも少なくない。他の社員からの泣きの相談で初めて認識することもある。ここまで社員にさせるようなことがあってはならない。

問題行為を認識したら明確に指導するべきだ。ここでお茶を濁したり目をつぶったりすれば問題はさらに複雑になる。明確な上司の指導こそが安定した職場づくりに必要である。