社員によるネットへの記載を防止するためになにをするべきか

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2017.05.21 労働事件

 ネットの発達によって誰もが情報の発信者になることができるようになりました。企業としてもネットにおける評価などには繊細になっています。これは労働事件も同じです。一部の社員が不適切な発言をネットに記載することでトラブルになることもあります。企業としてネットでの社員による不適切な発言を防止するためのポイントについて整理しておきましょう。

ネットの記載で採用に支障をきたす

 労働事件においては,一部の社員が自分の意見や認識をネットで赤裸々に記載することがあります。例えば残業代請求などの労働事件の訴訟の経緯をブログなどで詳細に開示していたケースもありました。

 こういった表現は,あくまで個人の意見などをベースにしたものです。必ずしも事実を事実として記載しているとは限りません。ときには明らかに事実に反した記載もあるかもしれません。ですがネットの記載を目にした人からすれば,「なんてひどい会社なんだ」ということになります。ここにネットの表現の怖さがあります。一方の意見でしかないのに真実のようにとらえられてしまうということです。

 ある事実をありのまま把握するというのは,それほど単純なものではありません。自分では真実だと考えているだけということもよくあります。ネットの記載を批判的にとらえることができない人にとっては,読んで共感できるものが真実ととらえてしまいがちです。

 こういった記載がなされると「ここの会社はトラブルを抱えているのだろう」という印象を目にした人に与えることになります。それではただでさえ人手不足の現状においていっそう採用活動が難しくなってきます。誰しもトラブルのあるような会社には勤務したくないからです。

共感という言葉の魔力

 SNSの発達によって「共感」という言葉がこれまでにないくらい重要な意味を持つようになりました。マーケティングにおいても共感をベースに語られることが多くなりました。

 人は,誰かとの接触を求める存在です。ネットの発達によってリアルな付き合いが減少してきたがゆえにネットでのつながりをいっそう求めるようになったのかもしれません。

 そこで私たちは,意図的に共感を作りだすことに思案するようになりました。「自分のこれを表現したい」というよりも「この表現なら共感してもらえる」という判断が先行するようになりました。しだいに何かを表現するという意味が「自分のため」ではなく「誰かのため」ということになっていきます。いかに第三者の興味をひくことができるかが表現活動の目的になります。

 さりとて普通の人が芸術活動などによって第三者の興味をひくのは容易なことではないでしょう。センスや努力が必要だからです。ですが奇抜なことをするというのであれば,センスも努力も不要です。ですからバイトテロという言葉に表現されるような常識からして許されない行動にでてネットにあげる人がでてくるのでしょう。共感という言葉には,正常な判断を鈍らせる効用があるものといえます。

教育に勝る予防策はない

 こういったネットにおける不適切な投稿などを防止するためには,就業規則などで禁止することを明示しておくべきです。ネットでの記載などについてまったくコメントしていない時代遅れの就業規則も少なくありません。労働環境は日々変化しているのですから就業規則も毎年修正していくというくらいの心持であるべきです。

 ですがこういった規制は,あくまで次善の策でしかありません。いくら規制を設定したとしても本人らが理解していなければ規制の効果はありません。そのため社員に対する事前の教育こそ最大の予防策です。

 社員の研修においては,SNS投稿のあり方だけを説明しても問題の解決にはなりません。「それがなぜだめなのか。ルールに違反したらどのようなペナルティがあるのか」まで説明しなければなりません。企業研修を目にしているととかく表面的な説明だけで終わってしまいます。

 また研修においては,「共感」という言葉の持つ意味についても説明をするべきです。私たちは,ある意味で共感という言葉に囚われています。「共感しなければならない」というストレスすら感じている人もいます。それはもはや共感ではなく強迫でしょう。共感を求めすぎることは,誰かに迷惑をかけることになりかねるということを理解したうえで仕事に取り組むべきです。

 事務所では,その他の労働事件についても相談をお受けしております。ご興味があれば,こちらのページで労働事件の実態をご覧ください。