社員が新型コロナウィルスに。そのとき会社はどのように対応すればいい

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2020.02.16 (更新日:2020.03.17) 労働問題

連日報道されている新型コロナウィルス。早期の収束を願うばかりですが目途はたっていません。もしも社員が新型コロナウィルスに感染したら企業としてはどのように対応するべきでしょうか。想定できる事項について整理してみたので参考にしてください。

企業には社員に対する安全配慮義務があります。ではコロナウィルス対策ではどうなるのでしょう

ご存じのように企業は,労働者が安全に労働することができるような環境整備をする義務があります。(労働契約法5条)これはコロナウィルス感染においても同様です。何も対策を取らずに労働者に感染を広げてしまったら企業として責任を追及される可能性があります。こういったリスクは,中小企業のほうがインパクとして大きいかもしれません。企業として「できることをきちんとする」といった姿勢を明確にしておくべきです。具体的な対策としては次のようなものでしょう。

①社員に検温を促すなど健康状態への配慮するように指示する
②体調不良のものには休暇の取得を促す

報道にあるように最近ではマスクなどを手に入れることが難しくなっています。マスクなどの備品を労働者に用意できなかったことがただちに企業としての安全配慮義務違反になるとは考えにくいです。企業としてもどうしようもないわけですから。難しいことをいえば安全配慮義務とは,「配慮をする」義務なわけです。労働者の健康を確保するという結果まで求められる義務ではないのです。とりあえずできることをやりましょう。

社員の感染が発覚した場合に就業はどうなるのか

まず社員が新型コロナウィルスに感染した場合に就業がどうなるかについてから検討していきます。新型コロナウィルス感染症は,2月1日付で指定感染症として定められました。指定感染症とは,感染症法(正式名称:感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)で「まん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるもの」として政令で指定されたものです。

これにより都道府県知事は,就業制限や入院の勧告などのまん延の防止に向けた措置を取ることができるようになります。社員に対しても都道府県知事から就業制限がなされることになります。企業としては,自社の判断で就業を禁止するというよりも感染法による就業制限に基づき休業という扱いになるでしょう。なお休業と休職は似たような言葉ですが意味が違います。休業というのは,会社と社員の労働契約が継続している状態で休暇を連続してとることです。会社側の都合によって休業することもあれば社員側の都合で休業することもあります。休職とは,会社として特定の社員を業務にあたらせることが不適切あるいは困難と判断した場合に業務を一定期間停止させることです。休暇の連続というものではありません。

社員が私生活のなかで感染したとしましょう。この場合には会社の責任によって感染したわけではありません。そのため会社としては,あくまで私病として扱うことになるため就業規則などに特別の定めがない限り休業手当を支払う必要はありません。社員としては,傷病手当金を一般的にはもらうことになります。社員が有給の利用を求めてきた場合には,これを認めてしかるべき金額を支払うことになります。もっとも会社が社員の意向に関係なく一方的に有給扱いにすることはできません。

仮に社員が業務において新型コロナウィルスに感染した蓋然性があるとしましょう。この場合には労災認定がされる可能性があります。もっとも感染ルートは目に見えるものではありません。実際に業務によって感染したということを明らかにすることは容易ではないです。労災申請をしたものの労災認定されないことも多いのではないかと個人的に考えています。

社員に感染者がでた場合には,対象者のプライバシーの保護にも企業として配慮する必要がある。プライバシーの保護が疎かにすると,その点で企業としての責任を追及される可能性があります。

感染とは断定できない。その場合に企業はどのように対応するべきか

現実的な問題として「感染した」と断定されれば,あとはルールに基づき対応していくしかありません。むしろ現場サイドで難しいのは「感染の可能性はあるが断定はできない」という状況でしょう。

感染とは断定できないものの体調不良を訴える場合には,有給などの利用を促してとりあえず休んでもらうべきでしょう。有給はあくまで労働者の権利ですから会社が一方的に「これは有給にするから」と明示することができないことはご留意ください。

問題は社員が有給などを休暇制度を利用せずに「出社します」とこだわった場合です。この場合には,会社としては他の社員への安全配慮のためにも休業を命じることになります。これはある意味仕方のない判断です。この場合には,会社の判断で休業させたことになるため休業手当を支払う必要がでてきます。法的には,「使用者の責めに帰すべき事由による休業」ということになります。休業手当は,賃金の約6割です。実際の企業運営では「可能性がある」と企業が判断すれば休業手当を支払ってでも社員に検査をしてもらい確定的な判断をもらっておくべきでしょう。

濃厚接触者に対しても同じです。休暇を利用しない場合には会社として休業を命じることになります。このときもあくまで会社の判断で休業を命じたわけで「使用者の責めに帰すべき事由による休業」にあたり休業手当を支払うことになります。

もっともケースによっては,すでに37.5度以上の熱が4日以上続いているなど感染が具体的に疑われる場合もあるでしょう。このときに会社が休業を命じるのはもはや会社の判断というレベルではなく休業手当を支払う必要はないのではないかと個人的には考えています。ここは意見の分かれる部分です。

家族が新型コロナウィルスに感染したとして社員から仕事を休みたいという相談も当然想定されます。この場合にはあくまで社員の自発的な判断で休むわけなので会社として休業手当を支払う必要はありません。社員としては有給休暇の活用などを検討していくことになります。

これに対して会社から「しばらく自宅で待機してください」ということであれば,会社の判断で社員に休んでもらうことになるため休業手当を支払う必要があります。

こういった家族が罹患したことによる社員の休業はインフルエンザなどの場合にもあてはまります。

雇用維持のために助成金などを活用しよう

多くの企業がコロナウィルスショックで経済的な影響を受けています。むしろ「社員が感染した」というよりも「売上が激減して事業維持が厳しい」というのが大半のの経営者の悩みかもしれません。

すでに事業を維持するために助成金などがでているので積極的に活用しましょう。助成金関係については,「助成金の申請に関してわかりやすく解説:コロナウィルスに関する助成金の種類も紹介」にまとめているので参考にしてください。こういった助成金などは使い倒すくらいの意識が必要です。

その他にコロナウィルス関連については,「コロナウィルスショック 企業からの問い合わせまとめ」に整理したのでご覧ください。