退職勧奨とは?言葉の意味や疑問を解決

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2020.07.21 (更新日:2020.07.24) 労働問題

勤労態度の良くない従業員や、仕事に対する能力の低い従業員がいることで悩んでいる経営者の方は多いのではないでしょうか。

会社を辞めて欲しいけど、こちらから強引に解雇することは避けたい。そんな経営者が知っておきたいのが「退職勧奨」です。

この記事では退職勧奨とはどのようなものかについて詳しく解説します。

言葉の意味はもちろん、解雇との違いや退職勧奨に関する疑問についても回答しますので、是非最後まで記事を読み進めて下さい。

退職勧奨とは?

退職勧奨とは従業員が自ら退職するように会社が促す行為のことです。

会社が従業員に対して退職勧奨をするのは自由です。

しかし、退職勧奨には法的な拘束力はなく、強制的に従業員を辞めさせることはできません。

そのため、従業員は会社からの申し出を断ることもできます。

退職勧奨はあくまでも従業員との話し合いをして、相手との合意の元で退職するものということを理解しておくようにしましょう。

また、退職勧奨にも様々な種類があり、従業員に懲戒解雇事由がある場合に会社の温情采配で任意退職の形にするためのものや、会社の人員整理の一環として行うもの等があります。

退職勧奨・退職強要・解雇の違い

退職勧奨は会社が従業員に対して退職をお願いする行為ですが、プレッシャーを与えすぎると退職強要と見なされ、場合によっては違法となることもあります。

また、最終的に退職するかどうかの決定権が従業員にある退職勧奨とは異なり、会社が強制的に従業員を退職させる解雇の条件を把握することも重要です。

それぞれについて解説していきます。

退職勧奨と退職強要の違い

退職強要とは会社が従業員に対して任意での退職を強要することです。

退職勧奨に対して応じない従業員に対して、執拗に会社を辞めるように迫り、ハラスメント的な対応が行われると退職強要と見なされます。

ここで理解しておきたいのが、退職勧奨と退職強要の線引きについて。

退職勧奨と退職強要の間に明確な線引きはありませんが、退職強要と見なされるケースとしては退職届の提出を執拗に迫ったり、退職のための面談を高頻度または、長時間に渡って実施するなどが挙げられます。

その他、退職させるために従業員に対して嫌がらせを行うなども退職強要となります。

経営者の方は従業員が退職の依頼を断ったからと言って、上記のような行為を実行するのは避けるようにしましょう。

また、退職勧奨が退職強要と見なされないようにするには従業員に対する言葉遣いも重要です。

過去の裁判では退職勧奨の際に従業員に対して「寄生虫」などの暴言をはき、何度も面談をしたことから退職強要に該当すると判断された裁判があります。

その一方で、従業員に対して丁寧な言葉で説得を続け、退職後の支援まで提案した会社は、裁判で退職強要とはみなされませんでした。

従業員に対して敬意をもって接し、相手の立場に立って物事を考えることができるかという点が退職勧奨と退職強要の大きな違いかもしれませんね。

退職勧奨と解雇の違い

退職勧奨は退職するか決断をするのは従業員ですが、解雇については会社が一方的に従業員を退職させることになります。

解雇に関しては、従業員が辞めたくないという意思を持っていたとしても、その意思に関係なく退職をさせる権限がありますが、その分法律などの規制は厳しくなっています。

労働契約法16条には、「解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする」とあり、現実的には解雇は簡単に認められません。

解雇は従業員にとって仕事を失うのは大きな問題となるため、労働法が厳しくなっているのは当然です。

そんな中解雇が認められるケースとしては、横領など会社に直接的に損害を及ぼした場合や無断欠勤が長期間続いた場合などが挙げられます。

一方で、従業員の能力が低いという理由では解雇が認められる可能性は低いです。

解雇は現実的に難しく、中々認められないという点は理解しておきましょう。

退職勧奨に関する疑問を解決

ここでは退職勧奨に関する疑問について解説していきます。

退職勧奨の違法性や応じない従業員がいる場合の対応、退職勧奨の具体的な方法、退職勧奨の際の退職金についての順番で紹介します。

退職勧奨は違法になることはある?

退職勧奨は違法になる可能性は低いですが、前述した退職強要と見なされると違法となる可能性が高まります。

退職強要が認められた判例では日本航空事件と下関商業高校事件の2つが有名です。

日本航空事件では、会社からの退職勧奨を断った従業員に対して、上司が長時間の面談を実施。

さらに、上司から記憶障害や若年性認知症といった言葉を浴びせられたとして退職強要が認められ、会社側が慰謝料を支払うことになりました。

下関商業高校事件に関しても、退職勧奨を断った従業員に対して、合計10回以上、職務命令として市教委への出頭を命じたり、20~90分にわたり、退職を迫ったことで、退職強要と見なされました。

退職勧奨をすること自体は会社の自由ですし、その行為自体が違法と見なされることはありません。

しかし、行き過ぎた勧奨で従業員に過度のストレスやプレッシャーを与えてしまうとそれは違法と見なされてしまう可能性もあるため十分に注意しましょう。

退職勧奨に従わない従業員がいる場合はどうする?

退職勧奨は従業員が自ら会社を退職する選択を促す行為ですが、従業員はそれを拒否する権利があります。

従業員が退職勧奨に応じなければ、それ以上話を進めることはできません。

そのため、会社側がどうしても退職勧奨に応じない従業員を辞めさせたいと考えれば、解雇できるかを模索することになります。

しかし、前述の通り、日本では解雇に対して厳しい制限が設けられており、安易な解雇は不当解雇として無効になる恐れがあります。

そこで重要になるのが、就業規則の設定です。

就業規則を設定し、それを違反していれば、客観的な証拠として従業員に非があることを立証することができます。

解雇を実施する場合には守るべき規則の設定と客観的な事実が必要となる点は理解しておきましょう。

退職勧奨の具体的な方法は?

退職勧奨の具体的な方法に関しては、従業員と面談を行うことで、会社としての意思を伝えることになります。

面談の際に重要なことは、事前に従業員が納得するための理由を整理しておくことや一方的に会社としての意見を伝えるだけでなく、相手の意見にも耳を傾けることです。

なんとなく辞めて欲しいからという理由では、従業員は納得してくれませんし、相手との間にわだかまりを残してしまうことになります。

退職勧奨の面談をするには、なぜ退職して欲しいのか具体的な理由を用意するようにしましょう。

また、退職勧奨の面談中には言葉遣いや相手の意見を聞くことも重要となります。

退職勧奨は従業員自らが会社を辞めるという選択をしてもらう必要があるということ忘れないようにしましょう。

退職勧奨のまとめ

この記事では退職勧奨について解説してきました。退職勧奨とは会社が従業員自ら退職するように促す行為のことで、法的な強制力はありません。

また、実際に退職勧奨を行う際には従業員との間に遺恨を残さないためにも、十分な話し合いを行い、相手に納得してもらうことを心掛けましょう。

この記事が退職勧奨とはどのようなものか気になっている方の参考になれば幸いです。