「はんこがない。契約は無効」とは限らない。そもそもはんこっているの?

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2020.09.23 経営者の方々へ

DXのなかで「はんこは,なくてもいいのでは」という声が広がりました。これまでなんどとなく浮いては消えていく話題ですね。デジタル庁が成立されるなかで本当にはんこが不要になるのか気になるところです。個人的には「もう,なくてもいいのでは」と考えています。そもそもはんこなんて今の時代だったら簡単に同じ物を制作できるわけで誰かを特定するための道具としての意味は失いつつあるでしょう。

河野行革相「はんこ、すぐになくしたい」 デジタル閣僚会議で発言

たぶん「なぜはんこが必要なの」と質問されて理路整然と回答できる人っていないでしょうね。「それは文化だから」「見た目が」といったものが列挙されるのでしょうが具体的な根拠になるのかといえばNOでしょう。それでもなぜ僕らは使い続けているのか。それはきっと使い続けてきたから。誰しも理由もはっきりしないまま続けている行動ってあります。気がついたら身体に染みついたものです。こういう行動ってなかなかやめられないのです。それはもはや身体の領域の問題だから。いくら頭でわかっていてもやめられない。結果的に「みんなしているから」という同調圧力のなかで疑問を抱きつつも続けるわけです。これがまさにはんこなのかと。

僕らは,もう少しリアリストとして物事を考えるべきでしょう。いちおう法律家の端くれとして席をいただいている者として判子の意味を考えてみましょう。ときどき「この契約書には判子はない。無効だ」みたいなことを鬼の首を取ったように言う人がいます。たいていの人は「たしかに印鑑がないとな」と思うかもしれません。でも,それってあたりまえのことではないです。ちょっと混乱する話をしてみましょう。

署名,記名,押印,捺印って聞いたことあるでしょ。でも「それぞれの意味をどうぞ」と言われたらググるしかないかもしれませんね。あたりまえですが意味がそれぞれ違います。

署名とは,自分で自分の名前を手書きすることです。記名は,それ以外の方法で自分の名前を書くことです。例えば会社とかで社名のゴム印使いますよね。こういったゴム印を利用すれば,記名になります。

押印と捺印は,「印鑑を押す」という意味では同じです。もともとは「記名押印」というセットで利用されています。つまりゴム印などで押された名前の横に印鑑を押すことを押印といいます。これに対して捺印は,署名,つまり手書きの名前の横に印鑑を押す場合に利用します。ざっくりわけると「署名捺印」「記名押印」ということになります。

問題はここからです。一般的に法律の分野では「署名若しくは記名捺印」が基本になります。ゴム印を利用した場合には,印鑑が別途必要です。ですが自筆の場合には特段求められないのです。ですから極端なことをいえば,契約書のサインが自筆であればあえて印鑑がなくても効力を有することになります。示談の場合などで「印鑑忘れた」という場合には,自筆で対応してもらう場合もあります。まぁ重要な契約書で自筆だけだと「なぜ印鑑をあえて押していないのか」と怪しまれる場合もありますが。。

このように法律的に見た場合には印鑑は想定するほど絶対的な効力を持つわけではありません。そもそも最近では契約書も紙ではクラウドベースで締結することもあります。僕自身もクラウドで管理しています。時代は変わりつつありますね。