【セミナー報告】デザイン。この形なきものをいかに経営で活用するか

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2021.06.10 (更新日:2021.08.26) セミナー

本日は,はぎビズの獅子野美沙子センター長をお招きして事務所のオンラインセミナーを開催しました。今回のテーマはマーケティングにおけるデザインの意味。経営者であれば「デザインがこれからの時代において重要。自社もとりいれたい」と誰しも考えているはずです。でもデザイン≒見た目がいいものと誤解して「デザイナーに費用かけて依頼したけどうまく売れない」という声が少なくありません。この理由は,「デザインとはなにか」について定義をすることなくプロジェクトにとりかかってしまうからです。デザインと投資は比例するものではありません。費用をかけずとも成功するときもあれば,費用をかけても失敗することがあります。こういった成否を分ける分岐点はどこにあるのか。もともとマーケティングに取り組んでこられていた獅子野さんに島田がいつものように好き勝手に質問しました。

なぜ経営者はデザインへの投資によって失敗してしまうのか

経営者がデザインで失敗する最大の理由は,デザインをいかに活用するかという視点が定まっていない段階でいきなり投資をしてしまうことにあります。こういった勇み足で行動してしまうのは,デザインを「おしゃれなもの」「見た目がきれいなもの」と誤解してしまっているからです。たしかに洗練された見た目のプロダクトを手にすると「これはすごい」「かっこいい」といったように所有欲に駆られます。そこで「自社でも同じようにしたい。デザイナーに依頼してみよう」ということになるわけです。ですがデザインというのは,そのプロダクトなりサービスが活用される環境のなかではじめて意味をもってくるものです。例えば普段使いを目的としているプロダクトに対してあまりにも洗練されたデザインのものがあると「なんだか違う」という印象を与えてしまうことがあります。他にも「多額のコストをかけて洗練されたホームページを作成したのに売上につながらない」ということもあります。デザインとは,対象となるプロダクトやデザインで完結するものではなくユーザー体験を含めた環境との調和のなかではじめて成立するものといえます。

経営者からはデザイナーに対する不満を聞くこともあります。内容としては,せっかく費用をかけたのに数字につながらないというものです。デザイナーとしては,「経営者からのオーダーに応じて作成しただけなのに」という反論があるでしょう。こういったトラブルが生じるひとつの原因は,経営者としてのオーダー内容が明確にされていないことにあります。「○○社みたいな感じのもの」「落ち着いたもの」などがオーダー内容であるためにデザイナーとして意見を反映したものをイメージしていくことになります。でも経営者の本音は違うわけです。経営者としては,デザインをマーケティングにつなげて売上を導きたいわけです。あくまで数字があって,その手段としてデザインを位置付けているわけでしょう。ですから経営者としては,カスタマージャーニーを確定したうえでターゲットに刺さるデザインを模索する必要があります。いわば経営者の経営戦略を伝える必要があります。それがあって本来のデザインができあがるわけです。もっとも経営者の戦略をくみ取り具体的なデザインに落とし込むことができるようなデザイナーが少ないのも事実です。なんちゃってデザイナーだと費用ばかり請求されるだけになりがちです。

マーケティングから逆算的にデザインをとらえていく

つまるところ刺さるデザインとは,その商品の強みを簡単に経験できるものといえます。「御社の強みはなんですか」と質問すれば経営者として回答することはできます。ですが経営者の考える強みと顧客の考える強みは一致していないことがむしろ一般的です。だからせっかくのマーケティングも結果につながっていないケースが散見されます。自社の強みを把握するというプロセスは口で言うほど簡単なことではありません。「自社の強みはこの新鮮さだ」と考えていたら「経営者が楽しい人」というのが真実ということだってあるはずです。そうなるとファンとのつながりをより強化するようなデザインを検討するべきかもしれません。ですからデザインを考えるうえでは,マーケティングという全体の戦略をイメージしたうえでデザインの位置づけを把握するべきです。その意味ではマーケティングから逆算的にデザインを考えるという姿勢が求められます。

購入に至るプロセスを分析的に捉えると①認知②購入③体験ということになります。デザイナーは,そのすべての過程を統合するひとつの概念です。認知においては,広告と広報がメインとなってきます。これほど情報がありふれたなかでは多額の投資で広告をすることにはもはや限界があります。そこでメディア活用を含めた広報の利用が重要になってきます。「うちには紹介できるニュースがない」というのは本当でしょうか。たんにニュースとしての切り取り方を把握されていないだけかもしれません。それぞれの企業には語るべき「なにか」があるわけです。メディアにでるのが難しいようであればSNSの活用もひとつです。「情報を整理して伝える」というのこそがこれからのマーケティングでは特に重要になるのでしょう。購入においては,売り方と値付けがポイントになります。売り方はネットをはじめとして多様化しています。そのとき「この商品を買おう」と無意識に背中を押すのがデザインの力だといえます。本当に優れたデザインは,それをデザインとして意識させます。まるでそこにあるのが当然のようにすら感じさせるものです。最後の体験というのは買った人がどう感じるかです。ここは買った後のフォローといえるでしょう。商売とは「売ってからがはじまり」といえます。販売後のつながりも維持できる仕組みをデザインとして組み込むと継続的な売上につながりやすいです。

デザインとは感覚ではなく論理です。そこには「なぜこのデザインなのか」と言葉で説明できる理由が求められます。今回のセミナーを通じて自社のデザインを見直していただければ幸いです。関係者の皆様には御礼申し上げるしだいです。獅子野さんありがとー。