【セミナー報告】中小企業でクラウド勤怠管理を導入するための勘所はここだ

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2021.05.19 (更新日:2021.08.26) セミナー

令和3年5月19日に社会保険労務士法人桑原事務所の代表桑原亨先生をお招きして中小企業がクラウド勤怠管理を導入するためのコツについて伺いました。「バックオフィス業務を効率化したい」というニーズは耳にするもののどこからはじめるべきか迷うものです。なかには社員の反発を受けることもあります。そこで実際に関与先にクラウド勤怠管理を導入されている桑原先生に導入のメリットや問題となりがちなポイントについて教えていただきました。参考になる内容でしたのでこちらに備忘のために残しておきます。

クラウド化する最大のメリットは,作業にともなう人件費の圧倒的な削減

勤怠管理は,いまだ担当スタッフがエクセルなどで計算しているケースが大半でしょう。「クラウド化したら便利なのに」とわかっていても「そうはいってもうちの計算方法は特殊だから」などと導入を見送ってしまいがちです。むしろゼロベースで走りだすスタートアップの場合には,システムに合わせて自社の勤怠管理を設計できるのでクラウド化への移行が難しくありません。これは他のクラウドサービスにおいても共通しています。

勤怠管理をクラウド化による最大のメリットは,担当者の作業の時間を圧縮することができることです。これはひるがえって人件費の削減にもつながります。あまった時間は,他の作業を担ってもらえるわけです。人手不足で悩む企業にとっては,こういった「他の作業に人員を割り付けることができる」というのが強みになります。まさに競争力を高めることになるでしょう。例えばある企業では,担当者3名で毎月660分を要していた勤怠管理について,クラウド化によりタイムカード・FAXを廃止し担当者1名のみでわずか90分でできるようになりました。類似した実績は他にもあります。

作業効率の向上は,テスト的に導入して実際にやってみないとわからないものです。「社長、辞めた社員から内容証明が届いています」のなかでも触れていますが「その仕事は本当にひとの手によるべきものなのか」については熟慮するべきことです。「なんとなく」ということで続けているケースがあまりにも多いわけです。「とりあえず導入してみてだめだったら撤退する」という軽い気持ちでなければ,クラウド化を企業で進めることができません。

クラウド化に失敗するのは,「今の管理方法」にあわせるようにしてしまうから

IT化を進めるなかでぶつかる壁のひとつに「自社オリジナルの仕組みあわない」というものがあります。経営者としては,とかく既存のシステムを前提にIT化による省力化を考えてしまいがちです。ですがこれではなかなかうまくいきません。導入するサービスにあわせて自社の仕組みを変更させるのがIT化の利便性を最大限享受するのに必要なわけです。この部分をはき違えてしまいがちなわけです。

とくに中小企業においては労務管理においては違法ともいえる運用がなされていることがあります。例えば残業についても15分以下切り捨てなどが典型的でしょう。自社の状況を前提にクラウド化しようとするからこそ導入できないというケースが多いわけです。そのため最初にするべきことは,実際の運用を労基法に抵触しないように「きっちり」作り直すことです。ここができていないからクラウド化がしにくいということになります。経営者からは,「これではうちの運用を反映することができない」という声がでることになります。違法な状況を維持するためにいつまでも手作業をベースにするのはあまりにも無駄です。むしろ人件費こそかかってしまうかもしれません。ですからクラウド化に挑戦する場合には,事前に社労士の先生に現況を確認してもらったうえで適切なサービスを検討してもらうのが現実的です。

強調しておきますがクラウド化を実現するためには,導入前の地ならしが何より大事です。「なんとなく」で実施されてきた労務管理に対してルールを設定するということです。いくら便利なサービスであってもルールが決まっていなければ導入などできるはずがないです。ここが抜けて落ちているからこそ導入に失敗してしまうわけです。地ならしのなかには,もちろん社員に対する説明もあります。労働時間は社員の賃金にもダイレクトに影響するものです。だからこそ経営者の一存だけで導入するとたいてい反発を受けることになります。

それぞれのサービスを比較して社労士の方に設定してもらう

クラウドにおける勤怠管理のサービスはすでに複数でています。基本的に提供するサービス内容は同じですが各社において微妙な相違があるのが現状です。「どこのサービスがもっともよいか」というのを断言することはできません。自社の規模などによって最適解は異なってくるからです。ケースによっては「あえてクラウド化しないほうがいい」という場合もあるかもしれません。クラウド化ありきではなく「なにが自社の効率性をもっとも高くするか」という観点から事業構想を練るべきでしょう。

クラウドサービスは,たんに勤怠管理だけをクラウド化してもあまり面白みがないです。最終的には経理関係も含めたバックオフィス業務全般をクラウド化してこそ本当の意味での効率化が実現できるものです。グランドデザインを描いたうえでサービスを選択するという視点も必要です。いったんサービスを導入して走りだすと事後的にサービスを変更するのには手間がかかるものです。できないわけではないですが。。

自社の勤怠管理のクラウド化においては,必ず社労士の先生にアドバイスを受けるべきです。労務管理におけるポイントを把握されているので導入において変更するべき点を指摘してくれるでしょう。とくにサービス開始時における初期設定は,変形時間労働制を含めて社労士の先生に任せた方が確実です。安易に自分で設定して「計算方法を間違っていた」となると社員からの不信を買うことになりかねません。逆に言えば初期導入のプロセスさえ費用をかけてしっかり組み立てれば,あとは自動化することができます。

クラウド化はこれからの時代の多き流れでだれもあがなうことができません。乗り遅れる前にとりあえずはじめてしまいましょう。