【読書感想】部下の強みを引き出す経験学習リーダーシップ

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2021.07.03 (更新日:2021.08.26) 読書感想

コロナによって自由な活動が制限されています。これは我が法律事務所でも同じです。こういうときこそ普段は手を伸ばしにくい内部体制の構築に取りかかろうと人生育成の本を読み返しています。これまであまたの本を手にしてきましたが実際に「役に立つ」と実感できるようなものに出会う確率は低いものです。この数年においてはビジネス書の大量出版もありさらに巡り会いの確率が低下している印象を受けます。本日セレクトしたのは,「部下の強みを引き出す 経験学習リーダーシップ」です。先日紹介した「職場が生きる 人が育つ 「経験学習」入門」の続編に位置付けられるものです。

前書は個人がいかにして成長していくかという一人称の物語であることに対して本書は他者が個人をいかにして成長させていくべきかという二人称の物語となっています。企業が成長していくためには,社員相互における「教える」というプロセスが不可欠です。「教える」「成長する」という一連のフローが確立している企業は,経営者が現場から離れても自ずと発展していきます。教えるということが業務内容として定着しているということです。そういう文化が成熟していないと「教える」ことがいつまでも業務命令のひとつということになります。これでは社員のモチベーションを高めることになりません。人は,命令を受けるということを基本的に嫌悪するからです。やはり内発的動機づけを実現させなければ組織としての成長にはつながりにくいです。

もっとも人材育成という言葉も多面的な要素を含んでいます。定義も曖昧なまま利用されているという印象を払拭できません。本書では,”人材育成とは、部下や後輩が「自らの経験から学べるように支援する」こと”と定義したうえで議論が展開されています。ここで大事なのは上司の役割は,部下が部下自身の経験を通じて学ぶことを支援するということです。まず座学というのは一見効率的なように見えますが業務としての定着率は低いです。というのは実際の業務と関連付けてとらえることができないからです。どうしても「学ぶ」ということが目的化してしまうのために社員にとってつまらない勉強ということになってしまいます。たいていは「勉強会をした」という経営者の自己満足だけで終わってしまうリスクがあります。仕事のスキルを上げるうえには,やはり経験があってこそです。

本書において指導する者の要諦としては,”① 部下の中に眠っている潜在的な強みやポテンシャルを探り, ② 期待を込めて,部下のキャリアや特性に合った「成長ゴール(伸ばすべきスキル目標)」を設定して仕事を意味づけ,③「この先、何が起こるのか」「どのような方法で仕事を進めるか」についてアドバイスをする”ことだされます。その関係で重要なのは失敗ばかりではなく成功体験についてもフィードバックをくりかえすということです。「それがなぜうまくいったのか」ということを内省させ再現可能性を高めることが目的です。実際に経営に関与するなかで難しいのは,個人にあった成長ゴールの設定です。難しすぎず簡単すぎずというのが理想ではありますが日々の業務が多いとなかなかじっくり考えることができないのが実際のところです。結果として現状の能力よりもずいぶんと高いゴールを想定してしまいがちです。

いかにして部下を育てるべきかを体系的に整理したい方には参考になるはずです。