【読書感想】THE CATALYST 一瞬で人の心が変わる伝え方の技術

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2021.07.10 (更新日:2021.08.26) 読書感想

「よく本を読む時間がありますね」と質問を受けることがあります。誰しも仕事をもっているとなかなか読書をする時間を確保するのが難しくなるものです。読みたい本はたくさんあれども目の前の業務に忙殺されて積んでおくということも珍しいことはでありません。僕の場合には,毎日15分は読書の時間を確保しています。「スキマ時間に読書をしよう」と決意してもたいていは失敗するものです。ですから午後10時から15分は読もうと事前に時間を確保しておけば,それなりに読むことができるものです。もちろん「読む」ということが義務みたいになると面白さも半減するのであまり「読まなければならない」というのもよくないわけですが。こうやって本を読んでいるとために「これはみんなに読んでもらいたい」という一冊に出会うものです。「THE CATALYST 一瞬で人の心が変わる伝え方の技術」もまさに「とにかく読んでみてよ」とついつい勧めたくなる面白い一冊です。経営者の方はぜひ手に取ってみたほうがいいです。

本書の目標は,どうやって他人に動いてもらうかということにつきます。コミュニケーションの目的は,行き着く先は誰かに何かをしてもらうことになります。つまり他人の行動を変えるということです。マーケティングにしても「他人に買ってもらう」という行動を促すことになります。そういうときにいかに丁寧にかつ詳細に説明をしても相手が行動を変えるとは限りません。むしろ本書のなかでも触れてありますが理路整然と説明することでかえって反発を受けて相手自身の思考を強めてしまうことすらあります。それは「何もしない方がまだよかった」ということになるわけです。僕らは,コミュニケーションは大事だといつも主張するわけですがいかにして人を動かしていくかについて学ぶ機会があまりにも少ないわけです。ひたすら丁寧に詳細にというのでは何もしていないことと同じです。

本書では人を動かすときのポイントとして自発性を重視しています。人は,いくら外部から何か言われても内発的な動機がない限り変化しません。むしろ外部からの強制力が強いほどに反発を強めることになります。こういった行動は日常生活でもよく目にします。ボランティア活動としていたものに報酬が付与されると一気にモチベーションが下がったというのも,本来の純粋なモチベーションが労働に転化してしまったことに原因があったりします。ではどうやって自発的に動かすか。それが本書で指摘する「妨害要因を除去する」という発想です。人が変わろうとすることを妨害するものを外部が除去してしまおうというものです。本書のタイトルであるCATALYSTとは触媒という意味です。つまり人の変化の妨害を排除して加速させるものという趣旨でしょう。

本書では変化を妨害する要素として①心理的リアクタンス②保有効果③心理的距離④不確実性⑤補強証拠の不足をあげています。こういうった要素をうまくフォローすればコストをかけずに人の行動を変えることができるというものです。もっとも同時に人は「すぐには変わらない」ということも押さえておく必要があります。とかく僕らは,短期間に結果を求めがちであるため人の変化にも即効性を求めがちです。それこそ他人の反発を引き起こす大きな要因にもなっています。

僕らは,いついかなるときも他人とうまくやっていかないといけないです。「いかにして他人に動いてもらうか」によって企業の生産性も大きく違ってきます。そのためにこそコミュニケーションのレベルは磨かないとなりません。その磨き方を教えてくれる名著です。