これからの時代で地元企業の働き方はどうなるのだろう

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2020.04.29 経営者の方々へ

新型コロナウィルスの感染が止まらないまま大型連休を迎えるようになってしまった。まさかこういう事態で5月の空を眺めることになんて誰も想像していなかっただろう。人は,環境の変化があまりにも急だと変化を認識することができない。なんとなく環境に合わせながら日々暮らしていくのが精一杯になっている。今回のコロナウィルスショックでは「はたらく」と言うこと自体が大きく変わってきた。アフターコロナについて考えるにはまだ早いだろうが想像をしておくことには意味がある。関門エリアの企業においても事業の在り方がおそらく変わってくる。というか変わらざるを得ない。なんとかなく感じていることを整理してみよう。

場所にこだわらない売り方が広がる

今回のコロナウィルショックは,あらゆる事業に影響を与えている。飲食店をはじめとした場所を前提にしたビジネスモデルのところは受ける影響が強い。飲食店というのは,食べ物を提供しているわけでだが正確には「飲食店で食べる」という経験に価値を提供している。カウンター越しに対象と話すこと,職場の同僚と愚痴を吐くことあるいは片づけをせずに気分よく家路につくことなど。とくに地方としては,こういった場所をベースにした収益をあげるビジネスが多い。

これまで日本は災害を幾度となく受けてきた。ただ災害の被害はたいてい被災地という言葉のように特定の場所に限られていた。直接的に被災していない場所では飲食店なども早期に事業を再開することができたはずだ。それが新型コロナの場合にはまったく違う。影響は全国に及び外出自粛の状況だ。そもそも客がいない。そのため多くの飲食店がテイクアウトなど場所から離れたモデルへと移行している。こういった傾向はさらに加速するだろう。売り方ひとつによってまったく受ける影響が違う。地元企業としても売り方の多面化を進めていくべきだ。

経営者の財務力の違いが企業の存続に影響する

この状況下で「物を売る」というのは簡単なことではない。(それでも新規に顧客開拓しましたとメッセージをしてこられる若手経営者もいるので心強いが)物が売れないときに安易に値引きしてキャッシュを用意するのは相当のリスクを背負うことになる。いったん値引きしてしまうと事態が収束したときにもとの価格に戻すことが容易ではない。「その値段でできたのだから,やれよ」ということになる。

今回の一連の経済報道を見ていて感じるのは,企業の性質と財務の在り方だ。例えば企業が短期間で成長するには,負債でレバレッジをかけることがある。つまり将来の収益性を担保にして融資を受けるイメージだ。実際の返済能力とは乖離したものであるため突発的な事故などに弱い。いきなり資金ショートということになってしまう。

これは中小企業にとっても同じ。いくら新しいタイプの資金調達といってもたいていは銀行からの借り入れだ。運転資金にしても借り入れがなければ回らないというところもあるだろう。今回の非常事態では融資が相当に緩和されているので貸しはがしなどによる事業停止というのはなかなか想定しにくいかもしれない。だが問題の本質的な解決にはなっていない。

これを機会に後継者の方には財務についての知識と経験を増やして欲しい。営業力はあっても財務は苦手という人は少ない。でも危機的な状況でものをいうのはやはり財務。もっといえば用意できる現金しかない。それを実現するにはB/Sをいかに組み立てるかという財務力だ。税理士の方や経理担当者に丸投げしているような企業はいざというときにどうすればいいのかわからない。「民事再生してください」と相談にいきなり来所される人もいらっしゃる。個人的には自社の財務も理解していない段階でいきなり民事再生を求められても「はい。わかりました」と安請け合いできる類のものではない。

僕は,若手経営者を対象にした勉強会でなんども「B/Sは自分で作るものだから」と説明している。これは経営者の財務力を伸ばして欲しいということだ。これを機会にぜひ実務で使える能力を鍛えて欲しい。必要であれば相談に応じる。

社員個人の担当領域が明確になる

日本的企業は,いい意味でも悪い意味でも個人の担当領域が曖昧なところがある。「これは誰かがやってくれるだろう」という部分があってしかも誰かが気を遣って対応してくれたからなんとかやってこれた。でも逆にいえば気を遣ってくれる人がいるからこそ成り立つようなものであっていわば誰かの犠牲があってのことだ。

今回のことではからずとも言葉として広がったテレワーク。製造業などでは「なかなか実現するのは難しい」という声も多い。そもそもこれまでなんら練習していないのに「明日からテレワークで」と言われても対応に苦慮する。実際のところテレワークをしている人も最初は「通勤が不要になって楽」という声もあるがしばらくすると「電話がなりやまない」「意思疎通が難しい」「ずっと画面はつらい」などの声も聞こえる。

こういったテレワークは,少子高齢化の日本ではいったんはじまるとさらに拡大するだろう。この流れを止めることはおそらくできないと考える。あれほど強固だったハンコ文化もいきなり見直しの風潮だ。

こういったテレワークが広がるとおそらく個人の担当領域が厳格になってくる。「誰が何をするか」が今以上に明確になるということだ。テレワークがうまくいかない大きな理由は,技術的なところよりも仕事のスタイルに問題があることの方が多い印象だ。個人の担当領域を明確にするというのは言葉で表現するのは簡単だが実際にやってみるとかなり難しい。業務を個人に割り当てているので「何をしてもらっているのか」を経営者としても正確に把握していないからだ。各自が担当している業務を棚卸してみるといい。

個人の担当領域が明確になると個人の生産性もおのずとはっきりしてくる。これはときに社員にとっても負担になる。そこをうまく経営者としてもフォローしないと労働問題の原因にもなってくるだろう。人事評価にしても工夫を要する。「日頃から会っているから評価が高くなっている」というような批判を受けることがないようにしないといけない。

アフターコロナの世界がどうなるのか。まだまだ考えないと。