これから中小企業の雇用のねじれはさらに加速するのではないか

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2020.10.03 経営者の方々へ

コロナ禍で中小企業の経営が限界に近いという記事が掲載されていました。

回復ペースにばらつき コロナ長期化に中小「限界」 9月短観〔深層探訪〕

記事のなかでは,大企業と比較した中小企業の回復ペースの相違が指摘されています。中小企業の場合には,どうしても大企業の下請けというケースが多いです。そのため大企業の回復と中小企業の回復には時間的な齟齬が生じてしまいます。この齟齬が一致するまでの期間が中小企業にとってもっとも資金繰りなどがきつい時期と言えます。ときにコロナ禍の場合には,消費者のライフスタイル自体が変化したための売上の見通しが従前のように立ちにくいと言われています。周囲の経営者なかには「この秋から年末にかけてがもっとも過酷な時期になるかもしれない」という声もあります。雇用調整助成金にしても永久的に支給されるものではないです。「ここまでです」と行政判断がされたときが中小企業にとって大きな分岐点になるかもしれません。それはたんに金銭的なものというよりも精神的なものも含めてです。

もっとも現状でもコロナの影響なく売上をあげている中小企業も現実にあります。報道では失業率が話題に上がっていますが「まだまだ人手が足りない。どうしたらいいか」と強気な経営を展開している方もいます。「景気が不安定なときこそいい人材を確保できる」と確信している方もいます。その一報では「このまま雇用を維持するのは難しい」という声もやはりあります。こういった企業の雇用に対するニーズは,コロナ禍で二極化していったような印象を受けます。

「こういう状況であれば,採用しやすいのではないか」と思われるかもしれません。採用に積極的な会社も「そうだ」とイメージしていました。ですが現実はやはり応募がないなどいまだに採用に困っているケースが多いです。経営者としては,「こういう状況でも売上をだす盤石な企業。それでも人が集まらない理由がわからない」と嘆いています。不景気で求職者は増えそう。それなのに採用できない。こういった採用のねじれが生じています。

こういった採用のねじれが生じる理由はよくわかりません。ですが個人的なイメージからすれば,やはり都市部への労働者の集中という課題があります。企業としては,やはり「若い人」を採用したいと考えます。ですが現実に応募があるのは中途採用者でかつ相当の年齢を取った人です。都市部には地方にはない刺激があるのでどうしても「行ってみたい」という気持ちになるのでしょう。いったん都市部で暮らしてやはり帰ってきた人に聞いてみると「大変だったけどやはり都市部には興奮がある。それに限界を感じると戻ることを考えるようになった」という声が多いです。都市部のすごいところは,「よくわからないけど魅力的」という印象を提示することができることです。それが若手労働者の集客マシーンとして機能してしまっています。

地方の企業も若手を確保するためにさまざまな工夫を凝らしています。広報に力を入れたりデザインを加えたり。でもやはり「都市部で働きたい」という欲求をくつがえるのは難しいです。これは弁護士にしても同じです。日本の弁護士の圧倒的多数は東京の法律事務所に所属されています。どうしても都市部の方が大型の会社の案件などを取り扱う機会が多いからでしょう。(実際に取り扱えるかは別にしても可能性があるというだけで魅力的に感じるのかもしれません。

雇用したい地方の企業はある。(都市部で)働きたい人はいる。つまるところこういった場所的な縛りが採用のねじれを生みだしているのでしょう。コロナによりテレワークなど場所にこだわらない仕事のスタイルが広がりましたが採用のねじれが解消されるとは思えません。地方の企業を見ていれば,現場のある業務が中心になるためテレワークができないケースが多いです。入社すればやはり本社のある地方に来てもらうほかないでしょう。そもそもテレワークができるような会社であれば東京など都市部に本社を置くはずです。あえて都市部に会社を置いているのは,現場から離れた仕事ができからでしょう。

こういった雇用のねじれをどうやって解消するか。これは相当に難しい問題です。やはり都市機能を政策的に分散させるしかないような気がします。