どこまで許されるの。私的な使用って

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2021.06.18 (更新日:2021.06.21) 経営者の方々へ

気ままに書いている著作権ですがとりあえずイメージ作りが目的です。本当であれば「こういう権利があります」「こういうように争われます」など個別に説明をするべきでしょうが最初からいっきに学んでも意味がわからなくなるはずです。こういうときにはできるだけ普段の暮らしのなかで気になるところにひきつけて考えた方がいいです。そこで今回は私的な利用ということについて考えてみましょう。

スマホに取り込んだテレビを観るのは大丈夫なの

著作者の権利を守るという意味では,私的な使用も含めて「承諾がないと利用してはいけない」とするのがシンプルな規制方法といえるでしょう。でもなんでもかんでも禁止にするとなんとも不自由な社会になります。ある作品を作ったひとにとっても「それはちょっと」という予想外の展開になることもあります。

例えばスマホで見逃したテレビ番組を取り込んで観るというプロセスを考えましょう。この場合には自分のスマホにデータを取り込むので形式的には「複製」ということになります。でも著作権侵害だといわれたことはおそらくないでしょう。そんなことまで言われたら自由にテレビを楽しむこともできなくなります。そこで著作権侵害にならず許される根拠とされるのが私的な使用という概念です。

第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

著作権法

著作権法は,著作物の自由な利用を担保するために一定の事項について著作権を制限しています。これを法定制限事由といいます。私的使用も法定制限事由のひとつということになります。私的使用が認められるのは,①個人の私的な活動の自由を保障するべきこと②侵害の程度が軽微であることが理由とされています。もっともSNSなどによって個人においても発信力が高まっている昨今において個人だから侵害の程度が軽微と言えるのかは個人的に疑問もあるところではありますが。

私的なものであっても大々的にホームパーティーを企画してテレビを流せばもはや私的な使用とはいえずに問題になるでしょう。またこういった私的な使用はあくまで自分で使用したものでなければなりません。ここで問題になったのがいわゆる自炊業者の行為です。自炊(=自分で購入した本などをPDFにすること)は,それ自体は私的な使用ということになるでしょう。ですがこれを業者に依頼したとします。このとき複製を作成したのは業者になります。こういった業者は不特定多数人からの依頼を受けて活動するわけですから私的な使用とはいえなくなります。つまり著作権を侵害する行為になるというわけです。

では企業内において社員研修のために資料をコピーする行為等はどうなるのでしょう。これも通説では著作権侵害になるといわれています。裁判例においても同様の判断がされたこともあります。ただしこれもケースによって微妙です。たとえば目の不自由な人が社内にて拡大コピーしないと見れないとすれば話は別でしょう。実際には「誰も文句を言わない」ということでスルーされているケースも多いといえます。

違法配信ファイルのダウンロードはどうなるのか

では違法にアップロードされた映画のデータをスマホにダウンロードした場合にはどうなるのでしょう。私的な使用ということで合法なのでしょうか。でもそれはなんだか違和感がありますね。

まず私的な使用の場合には,複製の対象が適法なものか違法なものかについては区別されていません。ですから私的な使用の場合には,原則として対象物の違法性の有無に関係なく著作権侵害にはならないとされています。ただし法律が改正されて違法にアップロードされたものであることを認識しながらダウンロードした場合には,私的使用目的であっても違法ということになりました。

こういった指摘は映画館でもよく耳にしますよね。