わかるようでわからない著作権。そもそも著作者人格権ってなに

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2021.06.11 (更新日:2021.06.18) 経営者の方々へ

日本の産業構造は,製造業からサービス産業へと大きく舵取りをしています。日本のGDPにおけるサービス産業の占める割合は,すでに7割を超えているといわれています。このような産業構造の変化は,ビジネスにおける権利関係についても変化を導きます。その典型がいわゆる知的財産権といわれるものでしょう。中小企業の経営者にとっても知的財産権は,避けて通れない問題です。「それは大企業のことでしょう」と高をくくっていたら足下すくわれます。中小企業の経営者であっても知的財産権の概要については,把握しておかれるべきでしょう。そこでまずは問題となることの多い著作権について何回かに分けて説明をしていきましょう。

著作権の仕組みはかなり複雑。まずは全体像から見ないと混乱する

「著作権とはなにか」と質問されて即答できる人はおそらく少ないでしょう。聞いたことがあるけど内容まではわからないというのが普通でしょう。まずは定義を押さえましょう。著作権は著作物を保護するための権利とされています。ここでいう著作物とは,思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいいます。思想又は感情を表現したものであることが必要であるためたんにデータを羅列したものでは著作物にはなりません。著作権の定義は,こうやって極めてシンプルなんです。それでもわかりにくいのは,そこから発生する権利の内容がかなり広範囲にはわたるからです。こういうときにはまずは全体像を確認することからはじめましょう。最初から細かいところまで目を向けていたら絶対に迷子になります。著作権に関わるものを大雑把に整理すると次のようになります。

この図は本当にざっくりしたものです。実際には著作隣接権などまだまだあります。とりあえず経営者としてわかってほしいのは「それなりに把握するのは大変」という事実です。安易に大丈夫だと考えてたらトラブルに巻き込まれます。本来であれば「著作物とは何か」といった定義から検討をはじめるべきでしょう。でもあまりにも抽象度が高いのでなかなか読むだけでつらいものがあります。そこでこのブログではさっさと著作権の内容に踏み込んでいきます。

著作権における著作者人格権とはなにか

著作権が難しいのは,似たような言葉が複数でてくるのもひとつの要因になっています。ですから言葉を整理しながら読まないと大抵「なんだこれは」ということになります。そこでまずは著作権の内容を大きくふたつにわけてみましょう。分け方としては,①著作者人格権と②著作権(狭義)ということになります。私たちは,著作権というと「無断でコピーされた。著作権侵害だ」というのをイメージしやすいでしょう。ここでいう著作権というのは,財産的価値をもったもので狭義の著作権ということになります。こういった著作権は,財産的価値を持つために譲渡することもできます。例えばホームページ製作会社が持っている著作権を発注者に譲渡するケースをイメージするといいでしょう。

ですが著作権は,こういった財産的価値を持つものだけではありません。著作者人格権というものも含まれます。これは,著作者の人格的利益を保護する権利であり一身専属的で譲渡できないものとされています。つまりある作品を制作したひとが対価をもらって著作権(狭義)を譲渡しても著作者にはいまだ著作者人格権というものが残って権利として行使することができるわけです。ですから「お金を支払ったから自由に利用できる」というものではないということです。

著作者人格権は,①公表権②氏名表示権③同一性保持権という3つの要素から構成されています。それぞれに細かい議論をしても意味がないのでイメージだけ持ってください。まず公表権とは,未発表の作品についていつ公表するかは著作者が決めることができるというものです。ある作品を発表するかどうかは作品の価値や意義にも影響するものです。ですからこれは著作者が独自に決めることができるというわけです。氏名表示権は,作品に対して氏名を表示するしないを決めることができる権利です。「これは自分の作品だ」と世に問いたい場合には,著作者として作品に自分の名前を表示したいところでしょう。ですから基本的に作品については作成者の表示が必要になるわけです。かつてTwitterのリツィートで自動的にトリミングされて画像における著作者の氏名が見えなくなった事案では氏名表示権の侵害として判断されたこともあります。同一性保持権とは,作品を勝手に改変するなということです。これはイメージしやすいものでしょう。

こんな感じで著作者には著作者人格権が保障されています。次回からは財産的価値のある著作権の内容について少しずつ考えていきましょう。