マーケッターのための広告講座 第3回:それって話を盛りすぎてないかい

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2021.01.26 経営者の方々へ

勢いではじめたマッケッターのための広告講座も記念すべき第3回をむかえた。みなさんありがとう。今回からはもう少し規制を細かく見ていこう。これまでの話として規制の対象となるのは,ざっくりいって3つあると説明をしてきた。①優良誤認表示②有利誤認表示そして③内閣総理大臣の指定したものと。今回は優良誤認表示について説明をしていく。

まず広告だからある程度話を盛ることは当然あるわけだ。正確性だけを追求し表示するだけでは広告にはならない。それではあまりにも無味乾燥で説明書だ。広告ってある意味では売る側と買う側の心理戦のようなもの。どれだけ商品やサービスをうまくラッピングして消費者の購買意欲に火をつけることができるかこそマッケッターの腕の見せ所だろう。ただなにごとも限度がある。さすがに「それは話を盛りすぎ」ということになれば優良誤認表示としてアウトになるかもしれないから要注意だ。実際にはどこまでやったらアウトなのかは条文だけではよくわからないのが現状だ。「なんだよ,それ」と反発受けそうだが広告規制というのはそういうものと割り切るしかない。それでも規制のイメージを持っておくことは事後的な批判を避けるさいの参考にはなるはずだ。

不動産広告で徒歩1分は80メートルとのこと。知っていましたか

もういちど条文から見てみよう。景表法5条1号は優良誤認表示を説明している。

一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの

「品質,規格」というところから説明してみよう。条文は定義から押さえていかないな何が何だかわからなくなる。ここでいう品質とは,原材料,混用率や質のことをいう。これは品質の持っているイメージと近いから一般の人にしてもわかりやすいだろう。むしろ言葉として難しいのが規格。ここでいう規格というのは,品質やその他の内容について,行政または民間団体が定めた規格,等級,基準といったものだ。JAS規格などが典型的だ。この規格には業界団体の定めた公正競争規約も含まれる。例えば不動産業界の公正競争規約では不動産広告における徒歩1分は80メートルとされている。身近なところで意外と規制があるものだ。

「その他の内容」は,品質,規格に影響を及ぼすものであり使用方法,原産地,有効期限あるいは製造年月日などがある。

「著しく優良」であると示すだけでアウト

有利誤認の表示もパターンによってふたつにわけられる。

  • 実際に提供する商品・サービスより著しく優良であるような表示をするケース
  • 事実と違って他の同業者の消費・サービスより著しく優良であるような表示をするケース

いずれも規制の対象になっている。内容は,読んで字のごとくだ。実際に提供する商品・サービスより著しく優良であるような表示としては,価格設定がある。どうしても人は,提示された価格をベースに逆算的に商品の価値を検討してしまう。高い商品=高品質な商品という具合に。価格設定は商売の基本中の基本だ。安ければいいというものではない。むしろ中小企業にとっては,「高い商品・サービス」こそ必要だ。廉価商品で勝負をかけたら仮に売れても資本力のある大企業に後発参入されて敗れるが目に見えている。とくに消費財系で安い商品を提供するとたいてい中小企業はこけてしまう。投資回収と設備投資のバランスがとれずにキャッシュアウトになってしまう。実際のところヒット商品が出てしまったばかりに経営が崩れてしまうケースは少なくない。マーケッターとしては,高価格帯の商品を提供するときには「なぜ高価格なのか」をきちんと説明できるようなブランディングを設定しておくことに気をつけていただきたい。

ここで難しいのはなにをもって「著しく」と評価するかだ。これについてははっきりいって明確な基準なんてものはない。そんな基準があれば誰も苦労しない。広告という性質上ある程度話を美化するのはある意味では当然の部分である。消費者としても「話が盛ってある」というのはある程度織り込み済みであろう。「著しく」というのは,「そういった消費者の一般的な認識を超えて」ということになる。ここはマーケッターの常識的な判断に依存するほかない。なんとなくはっきりしない場合には,「なぜそういった表現でも大丈夫なのか」を説明できるような根拠は用意しておいた方がいい。例えば表現の根拠となったエビデンスなど。

なお優良誤認の場合には,「表示」をしただけでアウトだ。それで誰かが実際に「これは素晴らしい」と誤認する必要もない。

痩せると言われて痩せないというのも。。。

最後に優良誤認表示として指摘を受けた事例をいくつか掲載しておこう。あえて正確性を排除して概要だけにしている。イメージを作る参考にしてもらいたい。

  • 養殖のりを利用しているのに岩のりと表示
  • 成形牛利用しているのビーフステーキ焼肉と表示
  • 前沢牛ではないのに前沢牛として表示
  • 最寄り駅から徒歩26分なのに徒歩16分と表示(この手の話は多い)
  • 受験予備校の合格者数の水増表示
  • 食事制限や運動しなくても痩せるとされた健康食品について実際には食事制限や運動がなければ痩せないとされたケース

いろな事例がありますね。とくに痩せるとか健康食品関係は対象になりやすいので要注意です。