小さなチーム。どうやってレベルをあげていくか

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2021.08.14 (更新日:2021.08.19) 経営者の方々へ

僕は,事務所の規模の拡大ということに興味をもっていません。ですから人手不足だからといって安易にスタッフを採用するということもないです。できるだけ最小限の人員数で大きな仕事を処理していきたい。となると既存のチームのパフォーマンスをいかに上げていくかが勝負のポイントになってきます。人財育成に相当のコストを費やすのも当該哲学によるものです。企業における仕事を「チーム」として位置づけるのは,ある意味ではとても現代的な発想かもしれません。これまではどうしても「組織」「経営者と社員」という位置づけでとらえられてきたからです。でもこれほど流動性の高い時代においては,機敏かつ柔軟性に対応するためにもチームとしてプロジェクトを実行していくという視点が必要になるはずと個人的には考えています。実際のところ多くの後継者から「チームワークをあげていくには」という相談を受けます。それほどみなさん悩んでいるということでしょう。「チームワークが大事なのはわかる。されどどうやったら高まるのかわからない」というのが後継者の切実な感情かもしれません。チームワークというのはなかなかどうしてとらえどころがないものです。「こうやってゲームをしてみよう」と経営者が手を上げても「しらー」となるのもよくあることです。この温度差が経営者にとってはあまりにもつらい。

「どうすればもっとチームとしての一体感が高まるか」というのは,僕個人にとって研究課題です。誰しもが安心して勤務できかつ収益を上げることができる。そんな夢のような職場をなんとか小さいながらも実現できないかと日々文献などにあたっているわけです。でもいくら勉強しても「学ぶだけ」では結果につながりません。口だけ番長ということにもなります。そこでこのたびコンサルタントの方の力を借りて半年にわたる「チームビルディング」を実施してみることにしました。なにぶん初めてのことなので右も左もわからない状況ですが「まずはやってみよう」ということではじめてみました。その進捗を随時アップしていく予定です。チームワークに興味のある方には参考になるはずです。

適切なゴール設定に注意しよう

まずは事務所のスタッフとコンサルタントの方を含めて「この半年間でいかなることを実現するべきか」のゴールの設定から始めていきました。あたりまえですがゴールが決まらない限り何も決まりません。このあたりまえのことが見落とされてしまいがちです。ゴールというのは,現状がどのような状況にあるかによって異なってきます。ありがちなのはゴール≒理想と位置づけて到底実現できないようなものを設定してしまうことです。壮大なゴールはたしかに心地いいかもしれませんが実現できないゆえにむなしさも生じるものです。個人なりチームなりの能力を伸ばすには,「努力すればなんとか届く」というゴールが最適です。とくに中小企業の場合には,こういったチーム作りに専念することができるような人員を確保する余裕がありません。普段の総務の仕事をしながら片手間に対応せざるを得ないというのが実情です。ですから求められる努力の範囲には,普段の業務を並行して実施する時間的な余裕も含めて考える必要があります。ここは大事なので注意してくださいね。とかくやる気のある経営者に限ってハードル高すぎるゴールを設定してしまいますので。

では具体的にチームワークを鍛えるとして何をターゲットにするべきでしょう。よくあるのが「コミュニケーション能力を高める」というものです。チームワークというのは,複数名の人員による共同作業であるため他者との意思疎通としてのコミュニケーションにフォーカスしたいと考えるのはある意味では当然のことです。ですがここに大きなミスがあります。そもそもコミュニケーションというのは,自分ひとりで完結するものではなく不可避的に相手の存在を前提にしています。そして「相手」は,自分の努力だけではいかんともしがたい存在です。ですからコミュニケーションから話をはじめてしまうとどうしても抽象的なところから展開することになりつまらない。「いい話を聞いた」ということで終わってしまいます。コミュニケーションについて考えるのは,あるていど個人のマインドセットができてからがいいでしょう。つまりチームワークを検討するときもできるだけ「個人的な側面」からはじめるべきです。「自分が変われば少し変わる」という実感の集積こそが必要になります。

リーダーシップの定義をはっきりさせよう

事務所では,ざっくりしたゴールを「リーダーシップの自覚」ということにしています。僕は,チームとして機能するうえでもっとも大事なことは各自がリーダーシップを発揮することだ考えています。このようにいうと「チームにリーダーはひとりでいいでしょ。むしろ各自が自分の意見を言い始めたら統制がとれない」と疑問を呈する人がいますが根本的にリーダーシップの意味を誤解しています。そもそもリーダーシップというのは,目的を達成するためにコーディネートする力です。誰かにあればいいというものではなく誰にも必要なものです。これは学歴や性格の問題ではありません。おとなしいひとでもリーダーシップを発揮されている方はいくらでもいます。

たぶん経営者層が求める人材って簡単にいえば「気が利く」というタイプの人でしょう。なんというか見落としてしまいそうなところをうまく拾ってフォローしてくれる。「この人に任せておけば安心」というのは,まさに相手にリーダーシップがあるからです。もちろんすべての責任は企業ですから経営者がひとりで背負うべきものです。その覚悟もないような人が経営者になってはならない。でも経営者の身体はひとつ。任せるべきところは任せるようにしないといつまでたっても同じことを繰り返すだけということになります。チームワークの根幹は,相互支援ということになります。そのときには「これは自分の仕事ではない」というスタンスの人がいたら困るわけです。仮に「これ誰がするのかはっきりしないが落ち度があってはならない。僕にてやっておこう」という自覚を持ってもらえると本当に助かるわけです。ですからコミュニケーションを考える前にまずは各自のリーダーシップの育成から始めるのが効果的でしょう。

ただリーダーシップという言葉も使う人によって定義がずれてきます。あるいは企業によっても異なります。ぼんやりとしたイメージのままでリーダーシップを考えるのは,砂上の楼閣になってしまうので気をつけてください。リーダーシップについて教えるさいには,経営者がきちんとした定義なり方向性を確定しておくことが必要です。そもそもリーダーシップといってもさまざまなタイプがありますので「これが正しい」というものではありません。例えば僕の場合には,「こうするぞ。おー」というスタンスではなく「それいいね。やってみたら」という感じで部下を支えるスタイルでのリーダーシップが好きですし事務所の基本的価値観にしたいと考えています。コンサルティングのなかでもそういったリーダーシップを伝えていくことにしました。

こうやってまずはリーダーシップを中核にした半年間のカリキュラムの大枠を形成しました。これをもとにして肉付けをしていくことになります。