新型コロナによる破産。それで企業と社員はどうなるの

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2020.05.17 その他

新型コロナウィルスの影響で企業にも多大な影響がでている。すでに関連する倒産は,ホテルなどを中心に140件を超えるということだ。これからさらに増えることも懸念される。倒産ということはあまり考えたくないことではあるが取引先が倒産ということもありうる。そこで企業の倒産について概略を整理しておこう。

最初に抑えておくのは倒産と破産は違うものということ

一般的には企業の倒産という言葉が広く利用されているが倒産=破産というものではない。倒産は,民事再生(負債をカットして立ち直る)と破産を含めた概念だ。民事再生と破産は,いずれも返済がにっちもさっちもいかなくなった場合の法的整理という意味では同じだが会社が存続するか否かによってまったくことなる。最近ではレナウンが民事再生の申立をした。

経営者としては,なんとか企業を存続させたいとして民事再生をベースに相談に来られることも多い。さりとて現実の世界では民事再生は容易なことではない。そもそも売上減少が原因の場合には,いくら負債をカットしても具体的な解決策にはならないからだ。むしろ倒産したという風評でさらに売上減少に陥るものだ。そのため僕が再生の依頼を受けた場合には,民事再生ではなく債権者と個別に交渉をしてまとめるようにしている。対外的には債務の整理をしたことがわからない。でもこういった交渉には時間を要する。コロナショックで時間的な猶予もないとなれば破産も選択肢に入ってくる。

破産というのは,ざっくりいえば資産を換価して債権者に配当して終了させる手続きだ。資産を換価するのは,裁判所から選任された破産管財人という立場の者になる。つまり代表者としては,裁判所に申立をするまでがメインの仕事になる。破産管財人が選任されたら手続きが円滑に進んでいくように協力をしていくことになる。

破産といっても費用がかかる。弁護士費用の他に裁判所に支払う費用のようなもの(予納金という)がかかる。予納金の額は,事業の規模などによって異なってくる。逆に言えばまったく資金がなければ破産の費用もだせずに破産すらできない。破産をしなくて困るのは社員。社員は,未払賃料などがあっても会社が破産すれば労働福祉機構の立替制度を利用することができる。これが破産されないとなかなか利用しにくい。きちんと破産をするというのは,ある意味では社員のためにもなる。一番良くないのは,何もせずに会社を放置してしまうことだ。関係者の誰しも困ってしまう。

社員はいつ会社が破産したことを知るのか

会社が破産の申立をすれば,社員は解雇ということになる。通常は即時解雇になるのだが1ヶ月分の解雇予告手当を支払うことになる。もっとも会社のなかには資金が底をついて解雇予告手当を支払えない場合にある。こういうときには,未払という状況のまま破産が進むことになる。労働者の保護のために労働者福祉機構の立替制度などを利用することになる。

では社員はいつ会社が破産することを知るのだろうか。これは会社の方針によっても異なる。あまりにも早い段階で社員に破産を告げると情報が錯綜して混乱するときもある。そのため破産申立のぎりぎりまで社員には通知しないケースもある。社員としてはいきなり朝礼で破産をすることを告知されることも現実はある。青天の霹靂ということにもなるが混乱を避けるためにはやむを得ない場合もあるだろう。

解雇となれば,それからの手続きがある。離職票を発行し,健康保険証などの返還を受けることになる。会社としては,社員の復職を支援するためにもなによりも最初に対応していかなければならない。なお未払賃金があるような場合には,社員として労働者福祉機構の立替制度の利用も検討してみるのもひとつである。

また社員は,条件を満たしておれば失業給付を受けることもできる。

勝手に財産を処分すると問題視されることがある

破産がはじまれば破産管財人が財産を調査のうえ管理することになる。破産申立をするために財産の一部を勝手に処分すると破産管財人から事後的に問題視されることもあるので安易に処分するようなことはしないほうがいい。やむを得ず処分するさいには事前に弁護士に相談したほうがいいだろう。

もちろん役員が社員が勝手に財産を持ちだしたり隠蔽したりすれば問題視される。無償譲渡ではなくてもあまりにも廉価で販売した場合でも問題視される。破産の根底にあるのは平等の概念だ。特定の人が破産手続において利益を確保するようなことがあってはならない。

たまに目にするのが代表者が財産の一部を隠しているようなケースだ。こういうのは隠していてもたいていどこかで見つかりかえって責任問題になる。やってはならない。しかも発覚すれば「あの社長は本当に自分のことしか考えていない」という批判も受けることになりかねない。脱線するが破産をしたときこそ社長と社員の日頃の関係性がよくわかる。ある会社を担当したときに社員だった方々が無償で残務処理を手伝ってくれた。「社長にはみんな感謝しかない。社長のためにも最後まできちんと役目を果たしたい。家族も同じ思いだ」と言われたときには胸が熱くなった。やむを得ず破産という選択肢をとられたわけだがきっと立派な経営者だったのだろうと感じた。

ちなみに中小企業の場合には,代表者も借入の連帯保証人が通常なので会社と同時に破産をすることが多い。個人の破産の場合には,だいたい99万円くらいまでの財産であれば維持することができる。よく個人破産をしたらすべてを失うと誤解している人がいる。すべてを失ったら明日からの生活ができないので,そういう制度ではない。