相続はもはや相続だけ考えておけばいいというわけではなくなっている

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2019.12.06 経営者の方々へ

昨日は,日本生命様にてセミナー。ありがたいことに前回好評だったらしく第2弾ということで。昼と夜の二部構成。参加者のメンバーが違うのだから同じ内容でもいいのだがさすがにまったく同じというわけにもいかない。ちょっとでもコンテンツを変えてこそのサービス精神というものだ。笑

身近なものほど僕らはよくわかっていない

相続のセミナーでよく言うのが「相続対策は相続だけ考えておけばいい」というものではない。リアルな問題になるのは,自分の老後の面倒を誰にみてもらうということだ。子どもはすでに東京で仕事を持って。。という人が地方では少なくない。となると地元で面倒をみてもらうというのもなかなか期待できないところだ。さりとて人口減少の著しい地方では介護してくれる人を手配するのも容易ではない。なにより費用がかかってくる。

僕らは,身近なものほどあたりまえのことだと安易に考えてよくわかっていない。家族にしても遺産分割でもめるとあっという間に断絶ということもある。そもそも「自分とは何か」ということについて明確な回答を見つけた人もいないだろう。

相続について考えるときには,まず自分の老後から考えてみるといい。「どこの施設で暮らすのか」「いくらくらいのコストがかかるのか」「実家は空き家にならないか」など考えはじめたらいろいろ浮かんでくるものだ。そういった疑問に目をつぶっていたらいつまでも「自分の人生」を実現することができない。

いろいろ考えてみると最大の相続対策は,自分が健康であることだと感じるようになるかもしれない。健康というのは,まさにすべての原点。変に節税対策に時間を費やすよりもいつまでも自分の足で歩くことができるように配慮しておくことが重要だったりする。

相続の争いは相続税の争いではない

なぜか相続対策というと税金ばかり注目する人がいる。相続の争いは,税金の争いではない。税金はルールで決まっているものであって自由にどうにかできるものではない。相続の争いとは,誰が何を相続するかの争いである。この点を間違うと相続税対策だけして問題の解決になっていないことがままある。相続で争いになれば相続税対策もあったものではない。

こういう事態になるのは,「我が家は大丈夫」という安易な自信があるのかもしれない。それはあなたが元気なときは大丈夫かもしれないがなくなった後はわからない。弁護士として相続をきっかけに家族が分裂した案件はいやというほど目にしてきた。だからこそ言える。「我が家は大丈夫」という安易な自身こそ家族を壊してしまう。

家族を守りたいなら公正証書遺言を作成するなど争いの火種をなくしておくことだ。例えば争いの原因として圧倒的に多いのが不動産。山口県の場合には,不動産の価値が下落して「誰も相続したくない」という争いがよくある。なまじ田畑をもらっても管理ができず固定資産税などの負担ばかりがかかってくることになる。

せめて不動産だけでも誰が何を相続するのかはっきりさせておくべきだ。

いくら勉強しても実行しないと意味がない

セミナーの最後には,実行することの大切さをいつもお伝えしている。いくらセミナーに熱心に参加して知識を増やしても実際に遺言を作成するなど行動しなければ何もしないことと同じである。とかく話を聞いて満足して終わるというケースが多い。それではいかんのだ。

誰だって自分の老後を考えるのは心躍るものではない。むしろ不安しかないというのが本当のところだ。遺言を目にすれば,必要だとわかっていても自分が死ぬということを突きつけられるようでいい気持ちではない。でもそれをしなかったからこそ次の世代にトラブルの火種を与えることもある。

今回のセミナーに参加した方が何かひとつでも動きだすことを願うばかりだ。