読書感想:佐藤肇 経営の決断101項

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2021.07.21 経営者の方々へ

「経営者を支援すること」を標榜している我が事務所にとっていかに中小企業の経営を学ぶかは死活問題です。こればかりはいかに六法を読み込んだところでわかるわけではありません。やはり経営者の生の声に勝るものはありません。だからこそ時間をつくってひたすら経営者のセミナーに通ったり,経営者の執筆したものを貪るように読んでいるわけです。こんな生活をかれこれ10年以上やっているわけですがいまだに「経営とは深遠なる学問だ」ということしかわかっていません。知れば知るほど人間のすべてが含まれているといっても過言ではないわけです。だからこそ飽きずにのめり込めるのでしょう。

経営者の言葉は経験に裏打ちされているからこそ価値がありますしリアリティがあります。もっとも経営者のなかには,せっかくの経営手法について「伝えること」が得意ではない方もいらっしゃいます。もったいない。「佐藤肇 経営の決断101項」は,上場企業の現役の経営者が中小企業の経営者向けに経営手法のノウハウを経験に基づき見事に体系化した一冊になっています。僕は,これまで著者の本を何冊を読ませていただいています。いっかんするのは「数字による論理的説明」です。後継者のなかには,将来のビジネスについて語るのは好きだが数字を追うのは苦手という方も少なくありません。自分の将来を数字で語ることができないのであれば,それは夢であって計画にはなりません。数字とは万国共通の言語であり再現性のあるものです。数字で表現できるからこそ再現性をともなって学ぶこともできるわけです。本書はエッセンスをまとめているのでこれから何度も読み返す気がします。

本書の大きな経営の方針は,事業規模の拡大をひたすら目指すのではなく効率性こそ重視するべきというものです。後継者はとかく事業を大きくすることばかりに意識を向けてしまいます。大きくなれば周囲からも尊重されるでしょうからやはりいいものです。ですが事業が拡大するということは,それほど抱えるものが増えてしまいます。機動性が失われ危機に弱い組織になってしまいます。だからこそひたすらに拡大するのではなく「固い経営」を目指すべきというものです。

本書のなかでとくに参考になったのは,決断を繰り返すような経営者の姿勢は良くないというものです。経営とは決断の繰り返しだと考えていたの著者の指摘は「?」という感じでした。ですが著者が指摘したかったことは,経営者はリスクに対する予防策を適切にとっておけば決断を強いられるようなことはないということです。つまりあらゆるリスクを想定して決断をしなくても危機を自ずと突破できることこそ経営の究極のスタイルということでしょう。優秀な経営者は決断しない(正確には決断する必要がない)というわけです。しびれます。

本書は後継者の方にぜひ読んでいただきたい。経営は情熱だけで語ることができるほどにシンプルではありません。ときには立ち止ま利冷静に周囲の環境を眺める必要もあります。そのことを本書はあなたに問いかけます。必読。