読書感想:売上最小化、利益最大化の法則──利益率29%経営の秘密

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2021.07.20 経営者の方々へ

「売上最小化、利益最大化の法則──利益率29%経営の秘密」は,これからの経営におけるバイブルになるのではないでしょうか。少なくとも「マーケティング」という言葉を背負う人は,どういうポジションであろうが一読するべきものです。著者は,Eコマースの分野で有名な北の達人コーポレーションの代表者の方。セミナーを拝聴したことがありますが,その圧倒的な合理性に「すごい」という言葉しかでてこなかったことを覚えています。なんというか僕自身が「きっとこういうものではないか」とぼんやり感じていたものがクリアに数式化されていて「すきがない」という言葉があてはまります。

本書の方向性はある意味でシンプルです。「売上ではなく利益を追求しましょう」というものです。言葉にすれば特段目新しいテーマではないですし心がけている方も多いでしょう。でも「利益を追求する」といって具体的にいかなる一手を打っているかと問われればなかなか即答できないものです。結局は「売上どうしよう」ということになります。そして売上拡大ばかりを狙うと他者との単純な競争に陥るので利益率関係ない価格競争の泥沼に陥るわけです。そういうケースを嫌と言うほど目にしてきました。しかも売上ベースの経営をしているとコロナといった危機的な状況に極端に弱くなります。本書にもありますが売上10倍はリスク10倍ということです。Eコマースというと売上が倍々ゲームで伸びるような夢物語がとかく語られることが多いものです。ですが著者は,こういったイメージとは裏腹に「固い経営」というものにこだわっておられます。例えば売上ゼロでも2年間は経営を維持できる資金を確保しているわけです。これ上場企業で実現しているのって本当にすごいですよ。税金を支払ったうえでのキャッシュな訳ですから。

本書でとくに参考になるものが3つあります。まず感覚ベースではなく数字ベースで日々の動きを把握することです。私たちは,数字が大事とわかっていてもとかく感覚で判断をしてしまいがちです。とくに広告などが典型的でしょう。それぞれの広告が利益といかに紐付いているか検証することもなくいたずらに広告を実施してしまいます。広告費用を投じればなんとなく売上があがるので安心するかもしれません。でも数字ベースで考えないと事後的に利益との関係性を検証することができません。つまり投資とリターンの関係性を押さえないままむやみに投資をして利益を圧迫しているケースが少なからずあるでしょう。本書ではいかに「数字でコントロールすることが大事なのか」が徹底的に語られています。

次に無駄の排除。売上ベースではなく利益ベースで経営をとらえるためには,利益につながらない経費の削減こそ効果的です。それはたんに消耗品の量を減らすとかいう単純なものではないです。そもそも多くの企業では,「その作業・行程が本当に効果があるのか」について検証される機会があまりにも少ないわけです。これは僕の事務所でも同じです。なんとなく実行している作業というものがあまりにも多い。それをなくそうと努力するのですが漫然と維持してしまって利益率の改善につながっていません。著者の効率性重視の姿勢は見事です。広告にしても「広く周知される」ということに意味を見いだしていません。例えば化粧品の名前をまったく化粧に興味がない中年男性に知られても購買にはつながりません。必要なのは「購入する人に伝えること」であり広告にしても潜在的な顧客さえとどければいいというものです。

最後に個人的に特に勉強になったのが顧客との1対1との関係性をいかに大事するかと言うことです。ネットでの事業というと1対nという関係性がどうしても注目されてしまいます。つまり顧客の顔が見えなくなるわけです。それが経営にとってはあまりにもリスクです。本書ではひとりの顧客を大事にすれば人生において何度も繰り返し購入してくれるということにこだわっています。特定の人を大事にするということは翻って企業の繁栄につながるということです。これをサブスクといえば簡単ですが現実にはなんちゃってサブスクがあまりにも多いわけです。僕の事務所も特定の顧客だけとのつながりがベースなので学ぶことが多い部分でした。「まだまで自分はまったくだめ」と発憤しました。

ここまで突きつめた経営を実現するからこそ利益率29%,ひとりあたりの利益が約2300万円というとんでもない数字がうまれてくるのでしょう。何事も突きつめるって大事ですね。知り合いの経営者やマーケターにはしばらくお勧めする一冊になりそうです。