緊急事態宣言で企業が取るべき行動について解説

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2020.04.06 (更新日:2020.04.08) 経営者の方々へ

東京,神奈川,埼玉,千葉,大阪,兵庫,福岡の7都府県を対象にいよいよ緊急事態宣言をだす方向で調整が進んでいるようだ。緊急事態宣言というのは,いまだ誰しも経験したことがないもので言葉のインパクトに引っ張られてしまうところがある。なかには戒厳令のようなものと誤解されている人もいる。緊急事態宣言のもとで僕らはどのように対応すればいいのだろう。ちょっと法律を冷静に読んでみよう。

緊急事態宣言とは?

法の支配のもとでは,内閣の権力行使には根拠となる法律が必要になる。内閣総理大臣の緊急事態宣言というと「危機的な状況における超法規的な処理」みたいな印象を受けるかもしれないが法律上の根拠はもちろんある。根拠となるのは,新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下「特措法」と表記する)だ。名前にあるようにもともと新型インフルエンザなどを対象にしていた法律だ。今回のコロナウィルスショックを受けて一時的ではあるが新型コロナウィルスも「新型インフルエンザ等」に含まれることになった。これによってコロナウィルスに対しても特措法が適用されることになる。

特措法の目的は,「新型インフルエンザ等の発生時において国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにすること」(第1条)とされる。私たちは,感染症から国民を守るために一定の負担を余儀なくされることになる。共同体のなかで暮らしていくであるから一定の負担をわかちあうのはあたりまえのことであろう。

そして内閣総理大臣は,新型コロナウィルス全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態が発生した場合に緊急事態宣言をだすことができるとされています。(措置法32条)この場合に①期間②区域③概要を国会に報告しなければなりません。

緊急事態宣言の際に企業に対して都道府県ができること

緊急事態宣言がだされると都道府県知事は,法律で定めた措置をとることができます。典型的なものが「要請」と「指示」です。

まず都道府県知事は,国民に対して外出を自粛することを要請することができます。(特措法45条1項)

また都道府県知事は,興行場などの施設に対して使用の制限または停止を要請することもできます。(特措法45条2項)これに応じない場合にはさらに踏み込んで指示をすることもできます。(特措法45条3項)こういった興行場の対する措置については公表をされます。(特措法45条4項)

これから要請や指示にはペナルティーがありません。その点を批判する意見も散見されます。ですが現在の法制度のもとでは強制的に国家が私的権利に介入することは基本的にできません。

もっともペナルティーがないからといって直ちに効果がないというわけではありません。やはり自粛が正式に求められると通常の判断として「自分も自粛しよう」という気持ちになるでしょう。企業としては,公表されているためにあえて要請や指示に反した行動をとればしかるべき社会批判を受けることも予想されます。

緊急事態宣言下において企業が抑えておくべきポイント

企業としては,新型コロナウィルスの感染拡大防止に努力し適切な措置をしなければなりません。(措置法4条)外出自粛のもとでいかに事業を存続させていくのかを事前に考えておく必要があります。「明日からいきなりテレワーク」というのも中小企業にとっては現実的ではありません。日頃からの準備こそすべてです。

企業は,さきにも記載したように施設の使用が制限されることも予想されます。要請というのはあくまで自発的な対応を促すものです。ですから要請に応じて企業に損失(テレワークの費用やイベントの延期による損害賠償)がでたとしても国家からの補償はないでしょう。さりとて企業としては,国民の生命を守るためにも要請には応じざるをえないと考えます。経営者にはしんどい負担を強いることになりますが「経営者」と旗を掲げた者の試練のときです。

企業は,必要な物資に対して売り渡しの要請を受けることがあります。(特措法55条1項)これに応じない場合には,さらに踏み込んで収容されることもあります。(特措法55条2項)実際のところどの範囲で収容されるのかは現時点で不明です。実際の物品の欠品状況を受けながら決まっていくのでしょう。

仮に収用となったときには,企業の希望する金額を求めることができるわけではありません。「処分により通常生ずべき損失を補償」(特措法62条1項)することになっています。なにをもって通常の損失とするかは最終的に裁判所の判断になります。

さらに都道府県知事は,業者に対して特定の物品の保管を命じることができます。(特措法55条3項)これに反して隠蔽などすれば六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処せられます。(特措法76条)

ざっと重要なところを整理しただけですが冷静になるために参考になさってください。先の見えない今です。見えないからこそまずは足下の一歩を大切にしましょう。