マーケッターのための広告講座 第2回:果汁と「果実の断面図」の微妙な関係について

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2021.01.12 (更新日:2021.08.27) マーケティング法務

マーケッターのための広告口座第2回について。前回は規制の主体について考えてみた。

マーケッターのための広告講座:なぜ広告代理店は景表法の対象にならぬのか

今回は,景表法が規制する不当表示について概要を整理してみよう。

基本となるのが3つの規制

不当な表示については,5条が規定している。まずは条文を見てみよう。

第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
三 前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの

やってはいけないとされる表示が3種類指摘されているのがわるかだろう。①優良誤認表示(1号)②有利誤認表示(2号)③内閣総理大臣が指定する不当表示(3号)という仕組みになっている。不当表示の典型的なものとして優良誤認表示と有利誤認表示がある。だが広告の種類も方法もさまざま。新しい広告の手法もでてくるのですべて優良誤認表示と有利誤認表示で補足できるわけではない。そこで補足できない部分をフォローするために「内閣総理大臣が指定する不当表示」というものもいれている。

ちなみに現時点で「内閣総理大臣が指定する不当表示」とされているものは,次の6個。こういった業態の広告に関与するときには,事前にかく規制に目を通しておくべきだ。詳細は消費者庁のサイトで確認することができる。

①無果汁の清涼飲料水等についての表示(昭和48年公正取引委員会告示第4号)
②商品の原産国に関する不当な表示(昭和48年公正取引委員会告示第34号)
③消費者信用の融資費用に関する不当な表示(昭和55年公正取引委員会第13号)
④不動産のおとり広告に関する表示(昭和55年公正取引委員会告示第14号)
⑤おとり広告に関する表示(平成5年公正取引委員会告示第17号)
⑥有料老人ホームに関する不当な表示(平成16年公正取引委員会告示第3号)

ここからは優良誤認表示と有利誤認表示を前提に整理しておこう。

「商品・サービス」なのかあるいは「取引条件」なのか

広告規制は表現が抽象的で一般の人から見れば「違いがわからない」となりがちだ。優良誤認と有利誤認にしても然り。「優良と有利の違いってなんだ」ということになるだろう。そうやって似たような言葉がつながるとモヤモヤして嫌気がさしてくるものだ。そこで誤解を恐れずにバッサリとした解説をしてみる。条文をもう一度目にしてみよう。

優良誤認については,「商品又は役務の品質、規格その他の内容について」という表現がなされている。これに対して有利誤認については,「商品又は役務の価格その他の取引条件について」という表現がなされている。これまで似たような表現ではあるが最後が違っている。内容なのか取引条件なのか。つまり有利誤認というのは,商品・サービスの内容にフォーカスしたものである。これに対して有利誤認は,商品・サービスの内容ではなく価格などの取引条件にフォーカスしたものである。

つまりある商品を販売したときには,優良誤認表示と指摘される場合も,有利誤認表示と指摘される場合も,さらに両者双方とも指摘される場合がある。マーケッターとしては,内容と取引条件の双方の表示に注意しておかなければならない。

実務ではある表示が優良誤認にあたるか,有利誤認にあたるかを考えていくことになる。細かいところはまた別の機会にお伝えする。ただ弁護士となにかでミーティングにするときにはこういった規制の外枠くらいは把握しておかないとディスコミュニケーションになる。

果汁の断面図のイラストから広告規制が見えてくる

景表法についてはもうひとつ規制に関するものがある。景表法31条1項の定める公正競争規約と呼ばれるものだ。

第三十一条 事業者又は事業者団体は、内閣府令で定めるところにより、景品類又は表示に関する事項について、内閣総理大臣及び公正取引委員会の認定を受けて、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択及び事業者間の公正な競争を確保するための協定又は規約を締結し、又は設定することができる。これを変更しようとするときも、同様とする。

公正競争規約とは,公正取引委員会及び消費者庁長官の認定を受けて,事業者又は事業者団体が表示又は景品類に関する事項について自主的に設定する業界のルールだ。公正競争規約のある業種は,消費者庁のサイトで確認することができる。マーケッターであれば,目を通しておいてもらいたい。

たとえば「果実飲料等の表示に関する公正競争規約」によれば,果汁100%でなければ果物から果汁のしずくが落ちるイラストや果物の断面のイラストを利用できないことになっている。ですから果物ジュースのパッケージも断面図のイラストが果汁の割合で違っている。「そんなこと知らなかった」という人が多いだろう。意外と規制というのはあるのだよ。