マーケティングにおける著作権の考え方1

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2019.06.19 (更新日:2021.08.27) マーケティング法務

今回のテーマは,「そもそも著作物ってなに」ということです。誰かがなにかを作ったら著作物と言えるほど単純ではありません。仮にあらゆるものが著作物になったら著作権ばかりの世界になって「これって同意なくていいの」と疑心暗鬼な世の中になってしまいます。著作物の範囲をきちんととらえておきましょう。

たんなる情報は著作物ではありません

あたりまえのことですが著作権が問題になるのは「著作物」についてです。そもそも対象が著作物に該当しなければ勝手に利用しても著作権侵害にはなりません。著作権法は,著作物を次のように定義しています。

「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(2条1項1号)

分解すれば①思想・感情②創作性③文芸などに属するものといえるでしょう。もっと細かく分解することもありますが初歩的なレベルではこのくらいざっくりなものでいいです。

まずコンテンツとしては,思想・感情に関するものでなければなりません。つまり単なる情報は著作物にはならないということです。「あの日に何があった」「この日は台風が来た」というのは事実としての情報であって思想・感情ではありません。ですからかってに情報を利用しても著作権侵害にはなりません。ただ気をつけないといけないのは,事実を編集したものは著作物なりえます。「編集」というのは個人の思想に基づいて成りたっています。ですから歴史をあるくくりで編集したものは著作物になる可能性があります。

マーケティングからすれば市場の情報などは,それ自体として著作物になりません。ですが情報が編集されたものは著作物に該当する可能性があります。

オリジナリティが必要です

次に創作性というのは,ざっくりいって個性です。問題はどのくらいの個性つまりオリジナリティが必要なのかということです。唯一無二のものでなければならないとなると著作物がものすごく少なくなります。さりとて「なんでもあり」となったら著作物が多すぎて意味を成しません。

これについて裁判例では独創性までは不要だけどなんらかの個性は必要としています。わかるようでわからないところですが言いたいのは別に唯一無二のものである必要はないということです。

でもこの個性というのはなかなか難しいものがあります。例えばある情報が棒グラフになっていたとしましょう。さきほどもいったように情報は著作物ではありません。そこで棒グラフという表現方法が著作物になるかということです棒グラフははっきりいって誰でも知っているようなものです。「棒グラフという表現方法は僕のオリジナル」とはなかなかいえないでしょう。ですから情報をたんに棒グラフで表現したものは著作物とはなかなかいえないでしょう。

ですがインフォグラフィックスのようにデータをオリジナルな方法で表現している場合には著作物になる可能性があります。つまり勝手に他人のインフォグラフィックを利用すれば問題になります。

他人の写真の利用はまずい

「この写真はいい」とマーケティングのために他人の撮影した写真を無断で利用することはやめたほうがいいです。風景写真にしても構図などオリジナリティがありますから一般的に著作物に該当するでしょう。原則として撮影者の同意を得てから利用するのが無難です。

写真の場合には,著作権と肖像権を混乱させている人がいます。著作権とは,写真を撮影した人が写真に対してもっている権利です。肖像権(無断で撮影などされない権利)とは写真の被写体になっている人が持っている権利です。ですからふたつは根本的に違います。著作権はクリアーしても肖像権の問題は残っています。

テレビなどで街頭の人の顔が隠されているのは肖像権に配慮してのものです。