無断の複製は悪い。でも複製ってそもそもコピーと何が違うの

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2021.06.16 (更新日:2021.08.27) マーケティング法務

著作権の侵害として典型的なのが複製というものです。おそらく「無断複製がまずい」ということは誰しもわかっているでしょう。では「複製とはなんですか。コピーと何が違いますか」と質問されると回答に困ってしまうかもしれません。そこで今回は著作権侵害の基礎となると複製について整理しておきましょう。

法定利用行為とはどういうものか

一般の方にとっても無断の複製や演奏が「著作権との関係でまずい」ということはなんとなくわかるはずです。では具体的にどういう根拠で著作権侵害となるのか。そこまで踏み込んで整理している人はあまりいないでしょう。一般論として著作権侵害を主張するには,①依拠性②類似性③法定利用行為という3つの要件を具備する必要があります。あらゆる著作権侵害を3つの枠でくくって考えようとするのでどうしてもひとつひとつの言葉の意味がぼんやりしたものになります。ちょっと立ち止まって言葉のイメージだけもっておいてください。

まず依拠性とは,ざっくりいってある著作物が他の著作物に依拠して作成されたものということです。ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件の最高裁判決で指摘された概念です。いちおう一般論として依拠性は,類似性の程度,無意味な部分の共通性,創作性の高低,被侵害者の社会的立場や関連状況などを総合的に考慮して判断されるとされます。いろいろな要素を考慮して「これって他のものがベースになっているかどうか」を考えるということです。

次に類似性。著作物という創作的表現が同一または類似であることを意味します。あたりまえですが類似しているから問題になるわけです。問題は,その類似性をどうやって判断するかと言うことです。「似ている」というのはいわば主観的なものであって「これをもって似ている」という明確な基準というものはありません。ないがゆえに苦労するわけです。司法の分野では,こういった類似性は創作性にある表現における共通性が必要とされます。ここでは「そんなものか」という簡単にイメージしておいてください。

そして最後に来るのが法定利用行為。これは著作権法が著作者に対して明文の規定で禁止権を与えている著作物利用行為のことをいいます。複製・上演・公衆送信など一般的に「違反行為」とされているものは法定利用行為となります。例えば著作権法21条は複製について定めています。

(複製権)
第二十一条 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。

著作権法

「専有する」とあるように著作権者でなければ基本的に複製をすることができないということです。ただし著作者が許諾すれば複製を作成することもできます。複製に代表される法定利用行為は,著作権法によって限定的に列挙されています。広く模倣を防止するためにはこういった禁止行為についても限定列挙せずもっと広く規制するべきという発想もあるでしょう。ですが著作権法は,あえて禁止される行為を限定しています。こういった限定がなされている理由は,おもにふたつあるとされています。①禁止の対象となる行為類型を限定させることで「どのような行為が違法になるのか」をわかりやすく伝えること②著作権侵害の成否を客観的な行為から判断するようにすることです。①については,なにが著作権侵害になるのか曖昧だと誰しも「これは違反になるのではないか」と不安になって自由に行動することができません。そこで行為を制限しているというわけです。②については,行為を対象にすることで侵害行為の有無を客観的に判断することができるということです。

複製とはいったいなにか

では法定利用行為のひとつとしてあげられる「複製」の意味について確認していきましょう。定義については「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること」と著作権法において指摘されています。ここでのポイントは,「有形的に再製」という言葉の意味です。有形的再製とは,著作物が別の媒体に固定化されて将来において反復使用される可能性が生じることとされています。つまり絵画の原本をたんに飾っただけでは複製したということになりません。この場合には「展示」ということで問題になることはありますが複製には該当しないということです。

ハードディスクにデータを書き込んだりUSBにいれることも著作物を別の媒体に固定化させるので複製ということになります。クラシックのコンサートをスマホで撮影するのも複製に該当します。こういった固定化されたものは,実際に不特定多数のひとの目にさらされる必要はありません。反復して使用される可能性があれば足りるからです。複製でよくあるのが新聞のコピーです。セミナーや勉強会で新聞の切り抜き記事を配布している場面を目にすることがあります。新聞の記事も著作物に他なりません。それをコピー機でコピーすればまさに複製を作成したことで著作権侵害になる可能性があります。

最近ではビジネス書を音読したものをスマホで聞くことも増えてきました。これも勝手に本を音読してスマホにいれていたら複製を作成したことで著作権侵害と指摘される可能性もあります。