「なりたい自分」というのは本当にあるのだろうか

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2020.01.09 その他

あらかじめ言いますが普段の仕事のブログとはちょっと違います。ふと感じたことをひとつ。

このところ「なりたい自分」という言葉をよく目にするのです。例えば「なりたい自分になる方法」といった類の記事です。なんとも魅力的な話に聞こえます。ですが僕は,なんというか違和感があるのです。

人は,基本的に「自分」が好きです。過度に自虐的に自分を表現する人も実際には自分への愛着の裏返しというときもあります。自分が好きだからこそ「自分」と表現になにげに心惹かれてしまいます。しかも「なりたい」なんて言われたら「そうだ。なれるはずだ」という気持ちにすらなるかもしれません。

ですが冷静に考えてみて「なりたい自分」っていったいどんな自分なんでしょうか。そういう理想的な自分というのをいったいどれほどの人が具体的にイメージすることができるのでしょう。

たぶん大半の人にとっては,「なりたい自分」がわからないから悩んでいるわけです。そもそも自分で満足できるような自分を具体的にイメージできるような器用な人であれば,それに向かって邁進しているでしょう。残念ながら「なりたい自分」というのはおそらくないです。これは「本当の自分」という表現にも通じるところがあります。僕らは,「本当の自分」という言葉が大好きです。今の自分は違っていてどこかに「本当の自分」がいると信じてやまない。でもどこかでわかっているんですよ「本当の自分」なんて存在しないことを。

「なりたい自分」にしても「本当の自分」にしても根底にあるのは現在の自分の生活に対する不満なんです。「より高いレベルの自分へ」という前向きなスタンスというよりも「こんな暮らしでは満足できない」という後ろ向きのスタンスのように感じます。もちろんなかには本当に前向きに「なりたい自分」を描いてる人もいるかもしれません。ですがなかなかそういう人も多くないでしょう。理想の自分を質問すれば,現在に対する不満ばかり並べられるかもしれません。

「なりたい自分」が曖昧だからどんな方法論を聴いても「いい話」で終わってしまって具体的な変化にはなりません。

おそらく理想の自分なんて考えるだけ無駄です。どれだけ理想を考えても「理想」だけで終わるのが関の山です。僕らは,「この自分」として生きていくしかありません。現在の不満を列挙して理想の自分を思い描くのは夢物語の領域でしかないです。とりあえず現在の自分に満足して,そこから「もうちょっとがんばってみよう」というのがなんというか豊かな人生のように感じます。

だから目標を立てて地道にひとつひとつこなしている人ってかっこいいんですよね。