ドコモ口座事件について思うこと

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2020.09.10 その他

ドコモ口座の不正利用が問題になっています。

「ドコモ口座」不正預金引き出し事件、ドコモが謝罪 被害額1800万円の全額補償 「本人確認十分でなかった」

被害額についてはとりあえず企業サイドで全額補償するということでなによりです。むしろ今回の事件が衆目を浴びたのは,その手法にあります。本人になりすましてドコモ口座に新規に口座を開設するというところに今回の事件の特徴があります。これまで「ネット口座の不正」となればパスコードなどが抜き取られてしまって不正に引き下ろしがされるというものでした。ですが今回はまったく関係のないところで自分のドコモ口座ができてしまっているというものです。とくにドコモ口座はフリーメールなどでも開設可能だったようでターゲットにされたのでしょう。

これまでサービスは,「そのサービスだけ」で完結していました。ですがネットでは,他のサービスとひもづけることで大きな価値を生みだします。さまざまなサービスと連結することで相乗効果が生まれてくるというものです。サービスを受ける側にしても様々なサービスを連結して利用できれば効率的です。今回の不正は,そういった「ひもづけ」を悪用したものといえます。

こういった荒楯の不正の報道を見るたびにサービスの利便性と安全性のバランスについて考えさせられます。安全性を求めるほどに利便性はどうしても下がっていきます。逆に利便性を求めれば安全性がしだいに揺るいでいきます。そのバランスをいかに確保するかは本当に難しい課題です。しかも自分ひとりが考えて何か結論でるようなものでもないです。

現実的なスタンスとしては,サービスには危険を伴うというあたりまえのことをきちんと認識しておくことでしょう。ときに利便性は危険性に目を閉じさせます。それが最大のリスクかもしれません。

今回の事件は本人確認が十分ではなかったと指摘されています。それはそうなんでしょうが,どこまで本人確認をきっちりやるかはなかなか簡単な問題ではないです。新しい認証方式が生みだされてもまたどこかで悪用されるかもしれません。そうすると本人確認の方法もどんどん複雑なものになっていく。つまるところ利便性を追い求めるほどに不便になっていくのかもしれません。僕らは,そういった矛盾するなかで新たなサービスなり技術を手にしているのでしょうね。