役立つものは,ありふれたつまらないもの

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2020.02.02 その他

自分が悩んでいるときは,見たことも聞いたこともないようなアイデアに魅力を感じます。僕らは,どこかで自分の課題はなにか「新しいもの」でなければ解決できないと誤解していることがよくあります。

でも実際に問題を解決するのは,必ずしも新しいものではありません。むしろ新しいものは,実績もないために使い方に迷い失敗することが多いです。現実的に問題を解決するのは新しいものでなくありふれたものの場合が多いです。

ありふれたものは,たいていつまらなく感じます。日頃から目にしていると「いつでも手に入る」ととらえてしまってじっくり対象を見ることを忘れてしまいます。これは別に道具や手法に限ったことではありません。例えば近くにある観光場所も「いつでも行ける」と考えるばかりになかなか行く機会がないということがあるものです。

いつも言うのですが近すぎると物事の本質が見えなくなるのです。人間関係にしても然り。トラブルで悩むのは,たいていめったに会わない「誰か」でなくていつも日頃から会う「誰か」です。こちらとしては「どうして日頃から会っているのにわかってくれないの」という気持ちにもなりますが相手も同じです。日頃から会っているからこそ実は相手のことをよくわかっておらず自分の抱くイメージだけで対応しているのかもしれません。

話を戻しましょう。もしみなさんがなにかの問題を抱いているとしましょう。おそらくネットなどで「なにか抜本的な解決策はないか」と検索されているでしょう。あるいは本屋の新刊を読み漁っているかもしれません。そういうときになにかミラクルな方法にであったらたいていうまくいきません。あくまで個人的な経験に基づく意見ですが。

ミラクルな方法って魅力的なんですがまさに「ミラクル」なものでしかないのです。簡単に言えば偶然の解決によるところが多くてまったくもって再現性がない。そしていざやってみると「できない」「話と違う」という結末になってしまいます。

これは法律的な問題においても同じです。最先端の議論を学んで活用していくのは知的好奇心をくすぐります。ですがいざやってみると自己満足だけで終わってしまうことが珍しくありません。むしろ予想しないトラブルが発生してしまってぐだぐだな結果になることもあります。弁護士なりたての頃はなんでもかんでも「新しいものを」と躍起になっていたような気がします。でもいろいろ検討した結果,たいていは「いつもの型」を用いて問題を解決していました。経験を積むというのは,「いつもの型」の選択肢を増やしていくことです。普段からなじんだ道具だからこそいいところもきをつけるべきところも見えてくるわけです。新品の道具よりも手になじんだ道具の方が使いやすいということですね。

言いたいのは新しいものを探すのもいいですがいったん立ち止まって自分がこの瞬間にもっているものを見直することが問題解決のヒントになるということです。しかも地に足の着いた問題解決の。

ここでいう「もの」とは,カタチあるものとは限りません。信用かもしれないし人脈かもしれない。なんでもいいのです。つまり「今のあなた」につながるものすべてです。ここで注意しないといけないのは,問題の解決を考えるさいに他人と比較しても意味がないということです。とかく「今の自分」を考えるときに他人との比較のなかでしか自分を描き切れない人もいます。他人と比較すれば「自分がなにを持っていないのか」ばかり注目してしまいます。それは自分を悲しい気持ちにさせるばかりでしかないです。しかも他人と比較したらキリがありません。ないものをいくら積み上げても「ない」というままで問題の解決になりません。なかにはそういった「自分はかわいそうな立場なんだ」とことさらに強調して周囲の関心を手に入れるようとする人もいます。赤ちゃんが周囲から自分への興味を得るために泣くのと同じようなものです。簡単に言えば成熟していないのです。

問題を解決するためには必要なのは「何を持っているのか」を知ることでしょう。それには他人との比較する必要なんてありません。「自分にはこれしかない」と自認したときが問題解決のスタートです。自分を冷静に眺めるというのはときに残酷なものです。ですが冷徹な現実直視なくして現状の改善もないでしょう。「新しいもの」を求めるのはたんに夢物語を語るだけで終わりかねません。まずは足元を見つめて「自分にあるもの」を認めましょう。個人の幸福感も現実を認めるところから始まる気がします。