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労働事件における口外禁止条項。それにはどんな意味があるのか

島田 直行 弁護士:島田 直行 投稿日:2021.07.07

 労働事件においては、圧倒的に会社が不利な立場にあります。一般的には会社が一定の金額を支払って解決するというパターンが多いでしょう。解決のカタチとしては、判決ということもありますが、和解、調停あるいは任意交渉といったように労使双方の合意によって終了するパターンがむしろ多い印象を受けます。個人的には、圧倒的に和解など合意で終了させることが多いです。そのほうが迅速な解決になりかつ柔軟な取り決めをすることができるからです。

 紛争解決に向けて経営者と協議をするなかでは、会社として一定の経済的負担は免れないということを説明することになります。具体的な根拠を説明すれば聡明な経営者であれば納得していただけます。もちろん「納得して」というよりも「しぶしぶ納得して」というものです。このとき経営者からの依頼として多いのは、金銭を支払うことを他の社員に知られたくないということです。他の社員が知ることになると社員のモチベーションにも影響しかねないという危惧からの要求となります。この経営者の要求をいかにしてカタチに仕上げていくかがポイントになります。ここでは裁判になったケースを前提に考えてみましょう。

 残業代請求にしても不当解雇にしても合意により解決する場合には、何らかの書面が裁判所によって作成されます。訴訟による和解であれば和解調書が作成されます。調停であれば調停調書が作成されます。判決の場合と異なり労使双方の合意による解決の場合には、当事者が合意さえすれば柔軟な取り決めをすることができます。支払金額の他にも自由に取り決めをすることができるため企業としても自己に有利な取り決めを含めることができます。その意味でも合意による解決は判決よりもある意味で優れていると考えています。

 合意内容が第三者に漏れないようにするには、口外禁止条項と呼ばれるものを含めるのが一般的です。口外禁止条項とは、「今回の交渉の経緯あるいは合意内容を第三者に口外してはならない」という趣旨のものです。基本的に、裁判所からの和解案では、こういった口外禁止条項は入っていません。和解に応じる条件として経営者側から提示することが一般的です。これまでの個人的な経験から、当該文言を入れることについて、労働者サイドから明確に拒否されたことはありません。ただし「文言を入れるのであれば解決金を増額してもらう」という提示がなされることがあります。

 経営者は、こういった口外禁止が当然のものという認識があります。そのため、労働者から、解決金を増額しなければ口外禁止条項を入れないと提示がされると感情的になるときがあります。こういうときに、先生方から冷静なアドバイスで後押ししていただけると、弁護士として助かります。

 経営者からは、「口外禁止条項に違反した場合にはどうなるのか」という質問を受けることが多いです。これに回答するのは難しいものです。理論的には、口外禁止条項に違反して第三者に内容を告げれば、損害賠償責任などを検討することができるでしょう。ですが、実際には「その人が口外した」ということを立証するのが難しいです。さらに損害といってもなにが損害になるかもはっきりしません。経営者のなかには、「約束を齟齬にした。慰謝料を請求したい」と話される方もいます。ですが慰謝料は精神的苦痛に対応したものです。法人には精神というものがないため基本的に慰謝料を請求することはできないとされています。
 そのため、実際には何も手を打つことができないという結論になりがちです。口外禁止条項は、紳士協定的な意味合いが強いということです。例えば、他の社員も残業代請求をしたというだけでは、「口外禁止条項に違反した」として争うのは相当難しいでしょう。
 では口外禁止条項は無意味かと言われれば、そうではないです。労働者にも弁護士がついて合意した場合には、口外禁止条項を真摯に守ってくれることが多い印象があります。僕個人の経験としては、これまで口外禁止条項に違反したとして争ったことはありません。やはり書面で取り決めをしたという事実が個人の心理に与える影響は大きいものです。しかも明らかな違反を見いだせば、争う余地もあります。リスクを可能な限り低減させるためにも口外禁止条項をきちんと入れておくべきでしょう。

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