いよいよ新刊発売!10年後の自社のイメージづくりのために

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2021.04.25 (更新日:2021.04.27) 事業承継対策

社長、その事業承継のプランでは、会社がつぶれます」 (プレジデント社)の一般発売が明日26日からはじまります。こうやってマーケットにおいて販売が始まると正直なところほっとします。大事なことはこれから売れることなんでしょうがなにより自分の経験がひとつの形になるのはうれしいものです。前のブログにおいても書いたかもしれませんが事業承継という一見すればありふれたコンテンツをあえて選択したのは,自分の経験として事業承継の成否がダイレクトに企業の存続に影響しているからです。僕らは,成長や衰退といった変化がある日をもってドラスティックに展開するような錯覚を覚えています。ですが実際のところは,日々の微妙な変化の蓄積があってはじめて大きな変化というものにつながります。例えば「人類とイノベーション:世界は「自由」と「失敗」で進化する」のなかでもイノベーションにおいても何か突発的なことからうまれるのではなくいくつも事象が組み合わさって時間をかけてできあがっていくという指摘がされています。企業の衰退にしても「じわじわ」した変化しかないから本人には気がつかないものです。「なんか調子が悪い」という程度しかないがゆえに気がついたころにはもはや手の施しようがない状況に陥ることもあります。

中小企業の衰退は,雇用の喪失といったように地域経済に与える影響も小さくありません。連鎖的に影響する場合が多々あります。とくに大きいのがしだいに企業が減少するなかで「この町は衰退している。何か変わらなければならないが方策がみいだせない」という閉塞感のたぐいを市民一般に与えることです。僕自身は,地域の活性化というものに関与しているわけではないのでなにか意見を述べるような立場にありません。ですが地域経済の活性化を考えるうえでは,既存の企業の成長を切り離して考えることはできないでしょう。新しい「なにか」をいくら求めてもなかなかジャストミートするような施策を見いだすのは簡単なことではありません。だからこそ経営者の方には事業承継を成長の機会にしていただきたいと切に願っています。それが経営者という立場を選択したものの宿命でもあります。経営者はただ経営をすればいいというものではないということです。きちんと経営をすることで社会に還元していくべき存在です。

経営をしたことがない人は,「後継者ってうらやましい」と安易に口にすることがあります。これは大きな誤解です。創業よりも承継のほうが個人的には難しいのではないかとすら感じています。僕自身もゼロから事務所をたてることができてよかったと考えています。もちろん開業当時には「地盤があると楽なのに」と感じたこともありますが時間をかけてくると「これでよかったのかも」と感じるようになりました。創業の場合には,ゼロから何かをうみだすプロセスなので勢いでなんとか突破できます。ある意味では自分の思い通りに展開していくことができるというわけです。これが承継になると仕組みがあるので自分の思う通りに動かすということが簡単ではありません。社員も「もとのスタイル」に慣れているため新しいことに消極的です。たいてい人は変化を嫌います。できることなら「いつも」を繰り返しておきたいと願うものです。そのため後継者が「これをやってみよう」とかけごえあげてもひとり浮いてしまうということになりがちです。言いたいのは「後継者には後継者の悩みがある。それを周囲も理解してサポートしましょう」ということです。後継者だからと言ってやっかむのは誰も幸せにしません。

今回の本ではあえて先代と後継者ではない周辺の方(家族,社員,金融機関,士業)にも相当のページをさいて解説しています。ここ言いたいのは,事業承継は先代と後継者だけで完結するだけのストーリーではないということです。先代と後継者の判断のひとつひとつが波及的に周囲に影響をします。ときには辞表をだしてくる社員がいるかもしれない。あるいは兄弟を訴える家族がでてくるかもしれない。だからこそ一歩引いた視点でファミリービジネスを俯瞰する必要があると日頃から考えています。事業承継は,事業についてのあらゆることが含まれたもの。いわば総合芸術としての映画のようなものです。映画は,俳優の演技,カメラワーク,音楽演出といったたくさんの要素が重なりあいながら成立しています。ですが感動する映画はなによりシナリオがしっかりしています。事業承継の細かい技術を考える前になによりすべきことは次の世代に向けたシナリオをしっかり作り込むことです。そのための一冊になればと考えています。

現代は不連続の時代と言われることがあります。あまりにスピードが速すぎてもはや断絶的に進行していくという趣旨でしょう。それでも企業の将来は,あくまで現在の延長にしかありません。10年後の会社の在り方を決めるのは,現時点における事業承継対策の有無といっても過言ではありません。「うちは大丈夫」という発想こそが衰退の引き金をひくことにもなりかねません。10年後の繁栄を実現するためにも事業承継への早めの一手を打ちだしてください。