事業承継時の経営者保証の考え方
- 2017.03.23 (更新日:2019.10.07) 事業承継対策
中小企業は,銀行からの借入をベースにて事業を展開することが一般的です。銀行は,中小企業にとってパートーナといってもいいでしょう。こういった銀行からの借り入れについては代表者が連帯保証人になるのが一般的です。事業承継において代表者が変更する場合における連帯保証人の立場について考えてみましょう。
中小企業で連帯保証人が求められる理由
中小企業の社長にとっては,銀行からの借り入れにおいて連帯保証人になるのはある意味では当然のことだ考えているかもしれません。実際には代表者になることと連帯保証人になることはまったく関係のないことです。しっかりした経営をしている社長は,連帯保証人になることなく金融機関から借入をすることもあるようです。
連帯保証とは,本来の債務が支払えないリスクを見越して設定されるものです。連帯保証人の資産のすべてが金融機関の担保になっているととらえていいいでしょう。これほど大きな責任であるがゆえに貸す側としては,確実な債権の回収のために設定を求めます。あるいは金融機関としては,社長に経営に真剣になって欲しいがゆえに連帯保証人になってもらうという意図もあるのかもしれません。
中小企業において代表者に連帯保証人が求められるのは,会社とオーナーである社長が経済的に一体化しているからです。つまり社長の声ひとつで会社の資産とするか社長個人の資産にするかを決めることができます。すべて個人資産に切り替えて「会社の負債は支払えません」では困るわけです。そのため銀行としては,社長の個人資産も確保しておくためにあえて連帯保証人を設定するわけです。
このように金融機関にとっては社長の個人資産も立派な担保です。会社の資産から切り離して個人資産を形成しておくことは担保力の強化にもなります。「返済能力という観点からすれば個人資産にせずとも会社資産でいいだろう」という意見もあるでしょう。ですが会社資産で保持しておくとどうしても経費として安易に利用することになります。担保としての資産はあえて会社から分離して個人資産として形成しておくのもひとつです。
経営者保証ガイドラインの活用
事業承継で代替わりをすると新代表が連帯保証人になります。このときに先代の連帯保証を外してくれたらいいのですがなかなか外してくれないときもあります。どうしても個人資産を比較したときには先代の方が大きいために担保力からして先代も連帯保証人であり続けることを求められます。
しかしながら経営から離れたのにいつまでも連帯保証人にあり続けることは精神的にも負担です。しかも時代の潮流としてはできるだけ連帯保証人の負担を軽減しようという方向に向かっています。ですから金融機関には「連帯保証人を外して欲しい」ということを明確に伝えるようにしましょう。これはあくまで相談ですから必ずしもうまくいくとは限りません。ですがこちらから言いださない限りいつまでも状況は変わらないでしょう。
そこで参考になるのが経営者保証ガイドラインといわれるものです。
ここには金融機関が連帯保証を外すかどうかを判断するさいの要素がいくつか記載されています。
- 実質的な経営権の有無
- 連帯保証人に代わる担保の有無
- 返済能力
こういった要素を整理すれば銀行との交渉もやりやすくなると言えます。