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後継者・幹部育成

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ファミリービジネスの事業承継における致命的な3つの罠

島田 直行 弁護士:島田 直行 投稿日:2021.04.18

「社長、その事業承継のプランでは、会社がつぶれます」(プレジデント社)の出版日が近づいてきました。予約していただいたみなさんありがとうございます!やはり自分の本がマーケットにでるときには緊張するものです。毎回出版するたびに「自分でやれることはやった」と自分を言い聞かせるのですが「読者のニーズに本当に合っているのか」と自問することばかりです。こればかりは実際に読んでいただいた方の声を聞くしかないですね。

今回のテーマである事業承継は、ファミリービジネスに関与する人であれば避けて通れないものです。それにもかかわらず十分な対策をとることなく時期を迎えて事業自体が衰退するケースがあまりにも多いです。おそらく経営に関与する人であれば、事業承継において失敗がありうることを理解されているでしょう。でも一歩踏み込んで「どういう点で失敗するのか」に踏みこんで考えることはあまりないでしょう。そこで今回は出版の直前ということもあり「なぜ失敗するのか」について実務ベースでお伝えします。

社長業が楽しくてやめられない。だから後継者とソリがあわない

経営をするというのは、社員の生活も背負うことになるので相当のストレスを強いられます。「社長なんて早く辞めたい」という経営者も散見されますがたいていは口だけです。実際のところは社長業をいつまでも営んでしまうため周囲が迷惑しているということが圧倒的に多いでしょう。「生涯現役」というのは響きとしてはいいかもしれません。ですが経営という観点からすれば同じ人がいつまでも経営者としてトップにいることが必ずしも事業存続という観点から適切とはいいきれません。

社長業の怖いところは、いったん楽しみを覚えると離れることができないことです。経営における興奮とでもいいましょうか。つまるところ「後継者が育っていない」というのはたんなる言い訳なんです。そもそも社長の椅子を渡さないと後継者が育つわけありません。「社長」と呼ばれ組織で丁重に扱われるのになれてしまうと「社長ではない自分」を受け入れることが怖くなってしまいます。自分のアイデンティティーが社長という立場と一体化してしまうからです。周囲がいくら「そろそろ退任を」といっても雑音にしか聞き取れなくなります。むしろ「まだまだやりたいことがある」と余計に経営に邁進してしまうこともあります。こういった経営者のスタンスは、後継者からすれば正直疎ましくなります。「親だから」「先代だから」と自分に言い聞かせてなんとか日々の業務をこなすものの「いつまでも自分はいいように使われるだけの立場か」と感じるようになれば自ずと先代との間に軋轢が生まれてきてしまいます。

「うちの家族は大丈夫」という夢を見ている

相続の場合など典型的ですが「うちの家族は大丈夫」という自信ほど見事に打ち砕かれるものはありません。そういった慢心が家族観のトラブルを引き起こし事業の存続にすら影響を与えてしまいます。はっきりいってどこの家族も一定のリスクを内包しています。そのリスクが顕在化するかどうかは先代がきちんと対策をとっているかにつきるといっても過言ではないです。家族の結集と破壊は紙一重ということです。実際のところ自社株を分散させてしまったがゆえに後継者が事業から排斥されたケースなどいくらでもあります。人間の感情なんてものは、ほんのわずかなことで変わってしまうものです。「家族のつながりはときにもろい」ということは、経験した人でなければなかなか理解できないものです。だからこそ「なぜ自分の家族が」と当事者になって戸惑い涙を流すことになります。

本書のなかでもページを割いて触れているのが後継者になれなかった家族への配慮です。たぶん一般的な事業承継の本では、先代と後継者の関係しか触れていないでしょう。教科書的にはそれでいいのかもしれません。ですがファミリービジネスは理論だけで成り立つものではありません。そこには人間の感情がともなってきます。感情への配慮なくて「本当の事業承継」が実現するとはとうてい考えられません。だからこそ後継者になれなかった者との関係についても触れています。後継者になれなかった者は、どういう感情で後継者(たいていは兄弟姉妹)を見るのでしょう。「がんばって欲しい。自分は自分の道を歩むから」と心底応援してくれたらいいですが、なかなかそうともいきません。「兄は会社をもらってうらやましい。家族の会社なのにおかしい」という気持ちも当然でてくるわけです。そういう感情があるにもかかわらず先代と後継者がひたすら経営について語るのは周囲からすれば面白いはずがありません。

経営者の介護についてのフォローがない

LIFESPAN(ライフスパン): 老いなき世界」を読むと若返りというのがもはや空想ではなく具体的な検討対象になっていることがわかります。ビジネス書として異例の売れ行きであることは、いかに人が若返りということに興味を持っているのかがよくわかります。もっとも若返りというのがすぐに実現するとも思えません。現実的にはやはり時間とともに体力的に衰えていくのはある意味では仕方のないことです。こういった体力や判断能力の低下は経営者にも等しく訪れてきます。それにもかかわらず自分が死んだときの相続対策は考えていても認知症になったときの対策を考えていない人があまりにも多いです。例えば自社株を保有したまま認知症で判断能力を喪失したらいったい誰が株主総会で決議するのでしょう。勝手に後継者が父親の名前で署名したら有印私文書偽造とかになりかねません。すくなくとも他の株主からは「そんな決議に効力があるか」と争われるでしょう。それほど怖いのです。

判断能力の低下といったものはある日突然やってくるものではありません。だからこそ把握するのが難しく対策が後手になります。死は人生におけるたった一度の経験ですが介護はそういうものではありません。場合によっては数年にわたることもあります。経済的な負担も発生しますし少子化の中で誰が面倒を見てくれるのかという問題もあります。「家族が」というのはもはや時代的に成り立ちません。それぞれの家庭が自分の家庭を守ることだけで必死だからです。自分の老後は自分で守る。それが経営者にとっても必要な姿勢です。つらいですが現実はそういうものになっているのです。

なんだか読み終えると落ち込むかもしれません。でも誰しもが抱える課題です。こういった課題には解決の指針も本書のなかで用意していますのでぜひ興味があればご覧ください。

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