
神は細部に宿る──ひと手間が生む仕事の美しさ
弁護士:島田 直行
投稿日:2025.04.26
物事の品質というのは、本質から少し離れた「ほんのひと手間」によって決まることが、意外と少なくありません。
たとえば、社員の取り扱いにおいても、ちょっとした気配りが結果を大きく左右することがあります。
以前、ある料理人の方から、鮮魚における「締め方」の重要性について教わったことがありました。
どれだけ鮮度が良くても、締め方が雑だと魚の味は落ちてしまう。そんなお話でした。
確かに、私自身の経験からしても、締め方の上手な漁師さんが手がけた魚は、どんな料理にしても本当に美味しいものです。
私の知っている漁師さんも、魚の締め方には細心の注意を払っておられました。大変な作業ではありますが、「この手間を惜しむかどうかで味がまったく違う」とおっしゃっていたのが、今でも強く印象に残っています。
この「ひと手間の大切さ」は、すべての仕事に通じるものがあるように思います。
ドイツの建築家ミース・ファン・デル・ローエが遺した言葉に、「神は細部に宿る(God is in the details)」というものがありますが、仕事の品質もまさにこの精神に通じるのではないでしょうか。
もちろん、細部にこだわるあまり本質を見失っては本末転倒です。
ただ、どれだけ本質を大切にしていても、周辺部分が雑だと、全体の印象はどうしても粗くなってしまいます。
このバランスを取るのは本当に難しいことです。
なんでもかんでも手をかけ続けていては、ビジネスとして成り立たないでしょう。
かといって、周辺をおろそかにすると、全体の完成度がぼやけてしまう。
このバランスをどう取るか──それはおそらく、どのビジネスにも共通する永遠の課題だと思っています。
私自身は、やはり「最後のひと手間」にはこだわり続けたいと考えています。
もちろん、どれだけ丁寧に仕上げても、相手に伝わらないこともあります。
大きな違いを生み出している実感がないこともあります。
それでも、せっかく自分が時間と労力をかけた仕事なら、最後まできちんと仕上げたい。
全体のバランスが取れた、美しい「作品」にしたいと思うのです。
「作品」という表現に少し違和感を持たれるかもしれませんが、私は自分が引き受けた事件を一つの作品のように捉えることがあります。
複雑な事実関係を見極め、バランスを取りながら、一つの完成された形にまとめていく。
この姿勢は、私が事件の解決に向かううえで、自然と身についてきたものです。
芸術関係の本を読むのが好きなのも、こうした感覚があるからかもしれません。
一つの作品に濃淡があるように、事件にもまた、強い事実・弱い事実といった濃淡が存在します。
それらを見極めながら、一つの形を作り上げる作業──それは、まるでアーティストのような感覚に近いのかもしれません。
手間がかかっても、最後のひと手間にはこだわる。
それが、私が大切にしたい仕事の姿勢です。
この思いは、スタッフの教育においても大切に伝えています。
皆さんの仕事における「こだわり」は、どこにありますか?
やっぱり、こだわりを持って取り組む人の仕事って、素晴らしいものですよね。
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